【感想・ネタバレ】脱原発を決めたドイツの挑戦 再生可能エネルギー大国への道のレビュー

あらすじ

2011年6月30日、ドイツは原子力発電所の完全廃炉を決めた。いまドイツでは、2050年までに発電量の80%を再生可能エネルギーでまかなう、という大プロジェクトが進んでいる。まさに「エネルギー革命」である。目指すのは、脱原発だけでなく、脱化石燃料の社会。こうした取り組みが、なぜドイツにできて、日本にできないのだろうか。この本は、国を挙げて再生可能エネルギー大国へと突き進むドイツのエネルギー政策の現状をレポートしたものである。ドイツ人は、地球環境を守るためならば、どんなに費用がかかってもかまわないと考える国民だ。だから、脱原発・地球温暖化対策のためならば、電力料金が高くなることも許容できるという。こうした考え方は、日本人とは大きく異なる点だ。ヨーロッパ各国から電力を輸入できるドイツと日本を、単純に比べることはできないが、ドイツの挑戦は、これからの日本のエネルギー政策を考える上で、たいへん参考になるだろう。

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Posted by ブクログ

ドイツの電力事情を理解するには十分。
さらに3年経って状況はまた変化しているので、続報を欲す。
ただ、日本の電力への提言は、周波数統一、というだけなのはさみしい。

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2016年02月06日

Posted by ブクログ

驚いた。ドイツの電力自由化がこんなに進んでいるとは知らなかった。EUの圧力があったとはいえ、環境に関する意識の高さが後押ししていると思う。日本の電力自由化を阻害している要因を、今後注視していこうと思った。

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2012年11月25日

Posted by ブクログ

昨年(2011)3月の福島原発事故を受けて、日本を含めて多くの国で原発の推進を見直す動きがありましたが、日本の場合は原発を本格的にやめると困る人や部署があるようで、次第に復活していきそうな気がしています。この本の主題のドイツでは本当に脱原発を決めて、それに向かってエネルギー政策を策定しているようです

ドイツの場合は、長らく太陽エネルギーが主力だと思っていましたが、事実上諦めて現在では「風力発電」に軸を移しているようです。更には日本と異なって陸続きの欧州では、簡単に電力(原発で発電したものも含む)の購入ができる点が、ドイツがこのような政策をとれるポイントのようです。

また、風力発電の弊害がドイツでも出てきているように、人の住んでいる陸地では難しいようで、文句の出ない海上風力発電がメインのようですね。海の無いバイエルン地方では今まで原発に頼ってきたようなので、代替エネルギーをどうするのかは難しい判断を迫られそうです。

一番気になったのは、最近の地球レベルでの寒冷化を受けて、私の感覚では、CO2による地球温暖化のトーンが下がってきている中で、この本の著者である熊谷氏は、「地球温暖化の脅威は、地球全体の平均気温が一律に上昇することだけではなく、気温上昇が気候システムを大きく変化させて異常気象を引き起こすこと、異常な寒波も間接的に地球温暖化の影響である」(p115)と気象学者のコメントを引用しています。誰かがいずれ言い出すと思っていましたが、すでにそれを言っている人がいたとは驚きでした。

数年後には、地球温暖化というフレーズから「地球異常気象」を防止するためにCO2削減運動が展開されるのでしょうか、それも罰則規定までつけて。なんだか複雑な気持ちです。

以下は気になったポイントです。

・福島事故を受けて、ドイツは前年に決めていた原子炉の稼働年数の延長を取りやめ、今後11年間で全ての原発を廃止することを決めた(2011.6.30に原子力法改正案を可決、2022.12.31までに全廃を連邦議会で決定)(p15)

・ドイツはナチス時代に中央集権制をとって失敗した経験があるので、戦後は地方政府の権限強化に力を入れた(p31)

・ドイツでは日本のように原発がある地方自治体に多額の補助金は降り注がない、営業税収入や雇用が増える程度(p32)

・ドイツと日本の電力市場の大きな違いの一つは、EU指令により1998年に法律上で自由化を開始し、地域独占を廃止したこと(p42)

・ミュンヘン市役所が有する地域電力SWMは、2015年までに家庭向け電力を100%再生可能エネルギーに、2025年までには企業向けも同様にする、ドイツ国内の都市では初めて(p64)

・自由化(1998)により最初の2年間に19%下がった個人世帯の電力料金は、2001年以降は上昇した、2010年には合計70%増加した(p88)

・ドイツで送発電分離が進んだ理由として、1)EUの圧力、2)脱原子力政策による大手電力の業績悪化にともない送電網の売却(p93)

・1000を超える電力販売会社を持つドイツの手法は、日本にはそのまま当てはめるのは難しい、日本の状況にあった自由化の道が探る必要がある(p110)

・ドイツは、2011年の再生可能エネルギーが発電量に占める割合は20%だが、2050年には80%を目指している(p117)

・ドイツは世界で初めて、送電網の運営者に対して、再生可能エネルギーを固定価格で「全量」買い取って送電網に受け入れることを法律で義務付けた、1990年可決、1991年施行(p135,138)

・2011年に需要家がエコ電力促進のために払った金額は、1.3兆円程度、2000-2012年までの助成金合計は、およそ9兆円(p141)

・風力発電は、開始料金というボーナスが12年間適用される(p143)

・曇天の多いドイツでの太陽光発電は効率が悪い、それでも太陽光発電装置による買取価格は 57.4セント@2004、28.7セント@2011である(p147)

・ドイツの太陽光モジュールメーカは2005年から2008年まで空前の好景気を経験したが、現在では最大手のQセルズは破産した、製造コストが中国に比べて高いため(p151)

・ドイツでは、売り手がお金を払わなければ電力を買ってもらえないという、商いの常識に反する「ネガティブ価格」が発生した(p183)

・CO2を排気から分離して地下に貯蔵する実験(CCSプロジェクト)は、連邦議会を通過したが、州政府の代表が構成する連邦参議院では、建設候補地である両政府が拒否権を行使した(p197)

・2011年のドイツのCO2排出量が前年比で2.3%減少したのは、冬の寒さが厳しくなかったこという効果を含む名目排出量、気温の影響を差し引けば、1.2%増加したというのが電力会社によるコメント(p202)

・原子力と化石燃料からの脱却を目指すエネルギー革命は、エコロジーというイデオロギーに基づくもので、経済的な理由によるものではない(p213)

・ドイツに出入りした電力量は、全て消費されたのではなく、すぐに他国へ出ていく「トランジット電力」が多い(p223)

・50ヘルツと60ヘルツを併用している国は、インド・アフガニスタン・パキスタン・スリナム・アフリカの一部など(p229)

2012年10月14日作成

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2012年10月14日

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