川崎草志のレビュー一覧
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埼玉のゲーム会社から退職することを決めた島汐路。退職の直前、手掛けたゲームのチェックを行っている最中に、同僚2人が会社のビルから身を投げた。幼少の頃に故郷愛媛の早瀬で、父と母が崖から転落死したことを思い出す。それらに共通する"ケイジロウ”とは一体…。
導入部分で、電車の中でナイフで乗客を刺し殺したり、空港で何十人もが死んだりと、サイコホラーなのか?と思っていたが、割と最初の方でそういうわけでなさそうになり、そこからはかなり回りくどい経路を経てミステリとなっていく作品。
話の内容としては、紆余曲折と言うか、寄り道獣道で割と本質を見失いながら、一応は関係なさそうだった話も拾っていくストーリー展開のため、なかなか面白く読める。一方で、最初の殺人だとかは結局なんだったの?という疑問が残ったままというのはいただけないところ。
また、味方だと思っていた人が何をやっているのかわからないし、いざというときに連絡してみたら行方不明など、読んでいて主人公と同じ不安が味わえるところはよく出来ている。
最後はフワッと終わり、爽快感をえられる作品ではないが、プロセスを楽しむ類の作品だろう。ストーカーなどがでてこなくなったのはそういうこと?みたいな。
ところで、主人公汐路をずっと男だと思って読んでいて、愛媛で姉と再会したところで文章があやふやになり、実は女性でしたというのが判明するまで、約半分かかった。まあ会社のシーンで男女が強調されていたら、別のことを考えてしまうので最終的には良かったが、何らかの意図があったのだろうか。
導入の事件がきちんと拾われなかったので不満を感じる人は少なくなさそうではある。CamelとEL&Pもくどかったがストーリーと関係はなかった。
まあ、犯人はとか考えずに、昔の宮大工の話がこうつながってくるかと、スナオに楽しむのが良い作品。出来が良いかと言うと良くはないけど、個人的には好きな話だ。
あと、帯にオチを書くな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「長い腕」から11年後、続編は忘れたころにやってきた。江戸末期に生まれた大工の、時代を超えた悪意(呪い)がまた早瀬を襲う。いくつものエピソードが巧妙に織りなす一気読みのミステリ。
愛媛、早瀬町での事件が解決した後、時は流れてもまだ呪いは収まっていなかった。
前作ではゲーム会社に勤めていた主人公の汐路が今は帰郷している。ゲームのデザインは、独立しても契約さえ結べばオンラインでできる仕事なので、汐路は二三年で契約更新をして気ままに住居を移している。
江戸時代末期、早瀬の宮大工喜助一家に不幸が訪れる。喜助が守り育てていた地元の神社用の貴重な檜が讃岐の金毘羅歌舞伎の改修に密かに売り払われた。村を牛耳る権力者(六つある本家筋の有力者)が高値で売り払ったのだ、喜助に無断でやれるはずもなく、その後の喜助一家は仕事を奪われ食料の途は絶たれ、技を伝えようとした息子たちも可愛い娘も飢えて死についに妻まで槍ガンナで殺した。
「子、孫その子の代まで、末の末まで呪いたたってやる。」
早瀬村で起きた悲劇の発端である。
ときは大政奉還の翌年(1868年)薩摩屋敷で勝と西郷の会談シーン。
江戸は無事大火から免れ、江戸城と江戸の町は新しい時代に入った。
ここから気っぷのいい父勝小吉と麟太郎親子のエピソードが並行して進み快い風を吹き込む。
そのうらに一家心中から密かに生き残った息子の一人が江戸の大工の棟梁に引き取られて成長し唯一名工と呼ばれるようになる。後の近江啓次郎である。
彼は早瀬に入り、乞われて見事な腕を披露して屋敷を建てる。それが第一話の悲劇を起した。
前の事件がいつかヒロイン汐路の記憶の底に沈みかけていた頃、旧友のエリカが汐路を訪ねてくる、フリーライターの彼女はまず旧家の藤屋敷を訪ねる。藤家は鶴喜神社の神主で近江啓次郎の奉納額があり朱色の手形が押してあった。
石鎚山の瀬戸内海側に聳える亀釣山は、戦時中は陸軍の高射砲陣地だった。その時の生き残りで下士官の長谷川正男という老人が汐路に村の案内を頼んできた。
陣地から行方不明になった三人は行方がしれないままだった。
海岸で見つかったたくさんの骨。汐路の子供の頃父親に連れられて訪れたことがある海の記憶。
関東大震災に早瀬出身の三井玲子が巻き込まれ死亡、娘と息子と玲子を病院に運んだのは汐路のかつての上司石丸だった。気配りの出来た上司は不思議に謎めいた影があった。
令子の部屋から出てきた曰くありげな小さい円盤には鶴と亀が彫られていた。
エピソードがそれぞれ進んでいくがその底にいつも「かごめ唄」があった。
歌は静かに時代を超え形を変えて伝わっている。
それが又流行り始めていた。
徳川幕府の埋蔵金が亀釣山にあるらしい。
人びとの想いの全ては亀釣山の地下坑道に収斂して、事件が起き呪いの謎が解ける。
それぞれ別な時代に別な場所で生まれて生きた人たちが悪意を避けるために生死を賭ける。現代に起きた悲劇は呪いであったかもしれないし、自己が生み出した醜い欲かもしれない。
時代をまたいで流行りだす「かごめ唄」はヴァン・ダインやクリスティーの作品のような見立てでもなく、横溝さんの名作「獄門島」拠りでもないが気味悪く面白い、ホラーからミステリに近い二作目は、シリーズにする難しさもところどころに読み取れた。
母の実家は石鎚山の高知側で、(架空の村だが)瀬戸内側の早瀬とは反対側になる。四国に居た子供時代の友人は海側に何人かいて松山から山を越えると住んでいる町が見える。私はわりに頻繁に村に行くので、そんなこともあって愛媛県出身の作者だし読んでみたら、受賞作がシリーズになっていてとても面白かった。
もう一冊あるので呪いはどんなふうに解けるのか、汐路の未来や、石丸は何者か、楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ呪い花 長い腕Ⅲ 恨みを呑んで死んだ喜助一家の生き残り、近江敬次郎(鶴太)の怨念か。早瀬村の事件は続く。
喜助一家の悲劇の源、御用林を切ったのは宇賀屋敷の者だった。苗字帯刀を許された村の有力者たち(東家・西家・古倉・宇賀・藤・島)が墓を暴き確かめたところ鶴太の遺骸がなかった。村人が探索の許しを訴えた時、代官は任期も残すところ後6日、喜助の不幸を想い匿っていた鶴太を逃がしてやった。
明治の東京で鶴太は名工に育っていた。
長い腕Ⅲに入る
Ⅰ話で意味深に登場し、Ⅱ話の最後をきっちり決めた石丸×源田のコンビ。石丸はいい感じの汐路の理想の上司で二人はなんとかなるのかと思ったがそうでもない。
石丸は何者か。
彼も大工筋の血を引いていた。
石丸佐吉は、明治の東京で敬次郎と因縁の対決をしていた。だが対戦場所に敬次郎は現れず見事な彼岸花の彫り物を届けてきた。
繊細なしべが伸びているヒガンバナをどう彫ったのか、それが名手の技なのか。驚いて負けを認めた。
5年前、石丸は採用した島汐路を指導することになった。
石丸の友人源田は内装業者で依頼があった汐路の姉の家の盗聴器を外した。同行した石丸は早瀬の村に入り既視感を持った(ここには来たことがあるような)
島汐路は庄屋の生まれであった。近江敬次郎が現れて建てた屋敷の二階を仕事部屋にしている。だが島家の不幸はすでに起きていた(Ⅱ話)埋蔵金に集まった人たちを葬った深い陥穽、地中のトンネルに落ちて多くの人が死んでいた。早瀬村は呪われた地だと噂が広がった。
時代の長い腕は登場人物の歴史を抱えて伸びてくる。
敬次郎の足跡をたどると、早瀬村は名工が建てた家が多く残るところだった。
敬次郎の彼岸花に敗れたのは石丸幸太郎の祖父だった。
幸太郎は祖父から話に聞いていた敬次郎が建てた早瀬の家が見たかった。今まで父と祖父から大工の技をたたき込まれていた。
祖父の佐吉は「早瀬は恐ろしいところだ」と言っていたがその訳は。
幸太郎は確かめようと早瀬村に向かった。
山で二人の美女に出逢った、あれは幻だったのか。二人は不幸な結婚を控えた早瀬の庄屋の娘だった。
入った村は不穏な気配がした。島家の当主は敬治郎の名を出して、建てた屋敷を見たいという幸太郎に、早く村から出るようにといった。
日本は戦争に負けた。海軍を除隊したばかり幸太郎は早瀬で陸軍軍人だった長谷川(Ⅱ話)にであった。
敗戦で荒れた暴徒の群れが村を荒らしていた。
物騒な愚連隊が徘徊していた。長谷川と協力して村を守る作戦を立てる。
ここからはアクション劇。作戦は成功して愚連隊は壊滅した。
幸太郎は敬次郎の建てた屋敷を見てその見事な腕を確かめ祖父の言葉の謎が解けた思いがした。
幸太郎は萩代の不幸な婚約を知って共に村を出た。
今、汐路は愛車カプチーノで宇賀と石丸がいる村の製材所に向かっている。(Ⅱの事件で)亡くなった友人のエリカの婚約者の香川が早瀬を舞台にした「呪われた地」を書いて出版した。
それが広まり「早瀬刈り」の騒ぎを生んだ。暴走族がバイクで走り汐路たち村人を苦しめる。
上京して香川を訪ねた汐路はニュースソースが宇賀家の落ちこぼれ英世だということを知る。
宇賀とそれに繋がるような石丸の不審な行動の訳を知るために、カプチーノが近づいていく。
汐路はここで真実と向き合う。
敬次郎はどうして人々を呪いにつないだのか。彼は屋敷を建てることで純粋に腕を見せるために庄屋屋敷を建てたのだろうか。呪いは。汐路は、石丸は。
なぞは最後に解ける。
早瀬村の出来事はここで終わった。
作者は多くのエピソードを巧みに絡ませて時の流れを作った。
明治の東京。敗戦後の早瀬。早瀬の今昔。関わった人びとの歴史。いまだに残る狭い村の悪習。絡まった人の欲や悪意。などで起きた無惨な出来事は上手く収束した。
複雑な関係は家系図が助けてくれた。
三部に分かれた複雑な話の進行、入り乱れたストーリーを読んで頭の緩んだねじが締まり、日ごろの霧が少しは晴れたような、、、。
ほかの作品も読んでみたい。
書影が合本版になっていますが単本で読みました。 -
Posted by ブクログ
これまた会社の方に貸して頂いた一冊。
全然知らない作家さん。本屋さんでも見かけた記憶が無い。
でもジャンルがミステリということで期待大!
電車で起きた殺傷事件、空港で起きた落下事故、会社で起きた転落事故、そして自身の両親が起こした心中?
時間も場所もバラバラな事件を、あるキャラクター「ケイジロウ」というキーワードで結ばれているのでは?と気づいた主人公 汐路 は、真相解明に乗り出す。
伏線の貼り方も、ミスリードの持っていき方もなかなか好み。主人公はゲーム制作会社で働いていたという設定だったが、ちょうど最近息子とマリオカートで遊んでいた為、一文一文説得力があり、面白かった。
最後はハラハラドキドキ場面もあり、なかなかに盛り上がった。
ミステリはやっぱり面白い! -
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった。ようやく読めた。
テーマが「歪み」だそうで、家の歪みの話は勉強になった。ゲーム制作の部分も。錯覚の部分が家の歪みと繋がった。
とてもおどろおどろしい、暗い、負の感情や狂気がいっぱい詰まったミステリー。主人公は気が強すぎて、小説の登場人物としてあんまりみりょくてきではない。いい人ポジションの石丸もどこかおかしい。救いは中学生の祥一郎?と、お父さんが作ってくれた山桜の板の机。
読んでいて暗い気持ちになるのは間違いないけど、次がどんどん読みたくなる、スリリングで先の読めない展開や問題解決におけるテンポ?腑に落ちる感、文章の淡々とした感じはかなり好み。西英子はとても怖かった。
続編もぜひ読みたい。物語としてとても面白いけど、読んでいる間暗い気持ちになるのは爽やかな本を同時に読めばなんとかなるかな…