幸薄系女子の宇潮が冷徹な軍人である要に見初められ、軍隊で働くことになる激動の数日間を描いた物語。
設定自体はよくある流行ものの幸薄系少女のシンデレラストーリーだが、物語の起承転結と伏線がしっかりしており読者を飽きさせない。
※※※以下、ネタバレありの感想※※※
主人公の宇潮の異能がフィジカル寄りなのが目新しく思えて、序盤の導入から面白かった。
「異能持ち幸薄系女子」という流行の属性持ち主人公だが、軟禁同然の暮らしを強いられてきたにも関わらずなんと身体能力がそのへんの軍人並みであるという「脳筋」寄りのスペックが面白い。
(かつ、表紙イラストにもあるように作中では軍服を着せられるので「軍服女子」の要素もある)
要から向けられる優しさを意識しつつも虐げられてきた辛い過去のせいで素直に厚意を受け取れない宇潮がその卑屈さ故に水緒子と仲違いしてしまい、自分の中にある嫉妬心や劣等感といった醜い感情と向き合うまでの流れが生々しくて良かった。
見所はなんといっても怒濤の伏線回収が行われ二人が過去を乗り越える決意を固める最終章。宇潮と要が互いに相手の存在をきっかけに心の傷と正面から向き合い乗り越えるという双方に救いがある結末になっている。
宇潮は精神的に追い詰められて絶望的な状況からその身に秘めた力を暴走させてしまうが、要の言葉で自分を散々虐げてきた世界の中に希望を見出し、力を制御する。
一方の要も宇潮と過ごす時間の中で自身が抱えていた心の傷が癒えつつあることを自覚し、宇潮に告白することで宇潮を元の姿に戻すことに成功する。
物語では(立場上)要に守られている宇潮だが、要や使用人など自分以外の人を侮辱された際は物怖じせず啖呵を切ったり、敵しかいない空間で水緒子を背中に庇ったり、ラストでは虐げられてきた過去と決別し人を恨むのではなく自分に与えられた役割を全うしようとする精神的な強さを見せてくれる芯の通ったヒロインへと成長を遂げる。※個人的にお気に入りポイントでもある。