幡大介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
(再読)
歴史上実在した人物を主人公にした作品ではなく、全くのオリジナルキャラクターが「八巻卯之吉」である。「時は安永、十代将軍家治の御代」、西暦で言えば1772〜1781年、「解体新書」が刊行され、平賀源内が活躍している時代に八巻卯之吉が活躍していることになる。
江戸一番の札差で両替商、高利貸しとしても江戸一番の三国屋の末っ子の若旦那が卯之吉。蔵には千両箱が山積みになり、金が金を生むという家なので、放蕩三昧の日々を過ごしている。放蕩生活から抜け出そうと袋縫いの職人の下で針子修行をやったり、蘭学医の修行をしたりしても長続きしない。根っからの放蕩者なのである。
そんな卯之吉の行く末を案じた三国屋の当主であり祖父である徳右衛門は、賄賂を使って、卯之吉を同心八巻元太郎の養子に押し込んでしまい、南町奉行所見習い同心の八巻卯之吉が誕生してしまう。そして、宮地芝居の役者琴之丞殺害事件を先輩同心尾上伸平と一緒に担当することになる。
シリーズ第一作なので、続編でレギュラー、準レギュラーになっていく人物との出会いや卯之吉との関係などが矢継ぎ早にでてくるし、事件解決は卯之吉自信の働きと言うよりは、周りの人々のドタバタ的な動きの意図が絡み合っての結果である。時代小説としては荒唐無稽な感じがする。また、田沼意次が活躍した時期なので、賄賂が当然という価値観の社会設定になっているのが、ひっかかってしまう。登場人物一人ひとりの描きかたもちょっと雑な感じがするが、書き下ろしシリーズとして次作以降につなげていくためにはやむを得ないのかもしれない。
登場人物の中では主人公を除くと、この作品の中では祖父徳右衛門が好き。卯之吉を溺愛する様が、ここまでやるのかというほどで、感心してしうし、さすが天下の豪商だけあって、読みも鋭かったりする。