斎藤貴男のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
気がつけば、あの日から今年で丸5年を迎える。忘れていたわけではなかったけど、当初よりはその記憶が薄れてきてしまっていることはたしかだ。だから、今年は意識的に震災や原発事故の関聯本を読むようにしたい。さて、その第1弾である本作は、タイトルからもわかるように、その原発事故の当事者である「東京電力」に焦点を当て、あの日までは日本を代表する優良企業であり、誰もが憧れる就職先であったはずの東電が、なぜ事故を起こし、国民全体から蛇蠍のように嫌われる企業になってしまったかに迫ったノンフィクションである。読んでみると、震災直後に東電について書きたてられた文章は洪水のように流れていたはずなのに、まだまだ知らないことだらけであったということがよくわかる。原発事故関係のノンフィクションも何冊か読んだが、東電という特殊な企業の体質を知らなければ、その全貌を完全に理解することは不可能であろう。ただ、本作がそこまで優れているかと問われると、微妙だ。たとえば作中には、「CIA」について触れている箇所などがある。それじたいは問題がないかもしれないが、同様の趣旨で陰謀だの圧力だのと書いている箇所はすくなくない。真偽については検証不可能とはいえ、こういう「よくある陰謀論」にちょっと著者は傾倒しすぎな気がする。もっと確実なエヴィデンスのみに基づいた記述であったほうがよかった。内容についても、幅広く書き立てているようで、肝腎なことについて触れていない。勲章云云については、人物を知るためには重要かもしれないけど、東電の体質を知るにはそこまで重要ではないように思う。社長の性格が、かならずしも忠実に社風に反映されるわけでもあるまい。原発は国策でもあったのだから、政治家の暗躍とか、社内の駈引とか、もうすこし書くべき部分はあったのではないか。たしかに、電産について書かれた部分など、原発と直接の関係性は薄くても、おもしろく読める部分もある。でも、全体を通してみると、けっきょく何について問題提起したいのかがよく見えてこない。原発関係で著名な賞を受賞したり、候補に入ったりしたノンフィクションはすくなくないが、本作はそのなかには選ばれなかった。じっさいに読んでみると、その理由がなんとなくわかるのである。原発事故についてあらためて考えてみるよい機会になり、読んでよい本、あるいは読んだほうがよい本であることはたしかだが、ノンフィクションとして右に出るものがない、至高の完成度であるというわけではない。
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Posted by ブクログ
タイトルは衝撃的だけど実際に事件が起きたわけではない。むしろ事件として扱われることのない問題だけに根が深いのかもしれない。
本作は子宮頸がんワクチン(正しくはヒトパピローナウイルスワクチン)を接種後の副作用と思われる具体的な症例、短期でワクチンが導入されたその背景、そこに絡む利権、医師たちの見解の相違、各国でのワクチン導入状況など、さまざまな情報を丁寧な取材で至極冷静に追ったルポルタージュ。
最後まで読んでもなおワクチンを打つべきなのか打たないべきなのか答えを出すのは非常に難しい。
開発されてまだ間もないワクチンだけに実際にワクチン摂取によってどの程度子宮頸がんになるリスクが減らせるのか正確な数字が分からない。
どうやら国によってもウイルスの型の分布も異なるようであるし。
本書はどちらかというと製薬会社や医師たちの利権問題や政治的な問題に偏っていて、子宮頸がんになる過程や最近の傾向、ワクチンを打った場合のリスクを他のインフルエンザワクチンなどと比較して明示してあったら分かりやすかったと思う。
パーセンテージで言ったらさほど重篤な副作用になる可能性は高くない。
テレビで繰り返し放映された少女たちの姿に衝撃を受けてしまうのは仕方ないが冷静に考える必要がある。
女の子を持つ親はこの本を含めいろんな情報を集めてワクチン摂取をどうするのか考えて欲しいと思う。
幸運にもうちは息子だし、なんて思っていたけれど男の子にもワクチン摂取してる国があるんですね。
そう、ヒトパピローナウイルスは誰でも持ってるどこにでもあるウイルス。
まずそこから知ってもらう必要がある。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「できん者はできんままでけっこう」、ゆとり教育の下敷きとなった答申を出した教育課程審議会元会長の三浦朱門氏のこの言葉通りに進められている教育改革。
そのなかで、戦後、守られてきた教育の機会均等が奪われ、子どもたちは家庭の経済状況によって「勉強ができるようになる」ための努力さえ、認められなくなろうとしている。経済を専門とするジャーナリストが、「学力」を切り口に日本の階層化、不平等の現実を鋭く追及し、子どもと教育の未来を守る方法を語る。
ルポ「『報国』の暴風が吹き荒れる」も収録。
[ 目次 ]
第1章 教育改革がめざすもの(ゆとり教育VS学力重視の裏側で 経済界の要求と教育改革の流れ ほか)
第2章 差別の目と管理の網(知らないうちに管理社会の時代に 自己規制に追いこまれる教師たち ほか)
第3章 機会均等を守る(階級化社会をめざす政財界 スタートラインを同じにすること ほか)
第4章 子どもの未来のために(公教育に企業の論理が入ってくる わが子を守るために親は… ほか)
ルポ 「報告」の暴風が吹き荒れる
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
斎藤貴男と林信吾が、いわゆる格差社会について対談するという内容。
私の不勉強を恥じるしかないのだが、論が政治的な話題に及ぶと、理解できない部分も多かった。
マルクス主義やら新自由主義やら保守主義やら、この本だけでなく他にも様々な本でよく見かける単語だが、それが何であるのかほとんど理解できていない状態。
社会について深く知ろうともせず、内外の動きはテレビニュースや新聞の見出しだけでざっと概観するのみ・・・という生活を続けてきてしまったのだから仕方のないことかもしれないが。
『下流社会』のように、具体的に「ある階層に属する者は○○を好む」などと単純な因果関係を示してもらわないと理解しにくいと感じてしまう、自分の手軽なマニュアル思想とも言うべきレベルの低さに愕然とした。
少なくとも、政治的あるいは経済的な思想の概略だけでも、それらの拠り所となっている書を読むなりして知識をつけてから再読したら、また違った発見があるかもしれない。
『格差の根絶など不可能だ。問題は格差そのものではなく、もともと存在する格差を、国家が積極的かつ強権的に拡大させていこうとする不公正な暴挙にある。生まれつきの環境による有利・不利の存在をないものであるかのように装い、誰もが同じ条件で競争できているかのように見せかけるイカサマの卑劣にある。』(後書きより抜粋)
今は、この言葉になるほど・・・と頷くのみ。 -
Posted by ブクログ
平成史を振り返る本。最近、平成の歴史本が多数出版されているが、これもそのうちの一つ。平成時代に起きた事件、社会、政治について、ジャーナリストの視点で考察する。著者によると、平成は社会の保守化、アメリカへの依存が進んだ時代という認識で、アメリカの属州化というサブタイトルが付けられている。また貧困や差別が進んでおり、危機的な状況にあるという。著者は、弱者の視点で平成を振返っていて、確かにそのように感じる場合もあるが、それでも実感としては昭和時代よりははるかに福祉も充実し、平和な時代だったと思う。事件も起きるし政治でも様々な問題もあるけれど、戦争のような国の存亡に関わるような問題は無かった。社会環境は、明らかに優しく住みやすい国になっていると思う。
ジャーナリストは、日々事件や事故、政治や社会の話題を追っているので、些細な事も拡大解釈しがちだ。著者もその傾向があるように見受けられる。。職業柄、問題提起することが使命なので仕方ない部分もあるけれど、個人的な感情に任せた記述も多く、また平成史を俯瞰する視点ではどうかと思う記述も多かった。読み物としては面白いけれど、著者の意見に全て賛同する気持ちにはなれなかった。
因みに、個人的には平成というのは、国民の政府への依存、経済重視の傾向が強まった時代のように思う。毎日、テレビ番組はカネの話ばかり。カネの多寡が全て。質素倹約が美徳とされた時代が懐かしい。今話題になっている年金が心配なら、もう一度そういう精神を見直すべきではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
ワクチン接種後に副作用と思われる症状に苦しむ少女たちのことを思うと胸が痛くなる。
原因や因果関係がはっきりしないとはいえ、副作用で苦しむ少女は決して少なくない人数であるし、副作用が出る可能性がこれだけあるのであれば、ワクチン接種は行うべきではないと思う。
P.247
そんな悠長なことをしていたら、何十年後かの日本は子宮頸がん大国だという反論が聞こえてきます。でも、子宮頸がんになる女性を減らすためだからといって、何もしなければ健康でいられた少女を生贄に捧げるような行為ーしかも公権力によるーは、絶対におかしい。私たちはもっと謙虚であるべきだと思います。
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Posted by ブクログ
多くの社会批判の著作のある斎藤貴男さんが書き下ろした平成史。折に触れて自分の著書が引用されていて、内容的には目新しいものはありませんが平成という時代のオーバービューとしては良くまとまっているのでは・・
それにしても平成という時代は左派にとっては押しまくられた時代だったのでは。最後の砦が天皇の「お言葉」? 結局対抗できる論理が出てこなかったというか、まあ、何を出しても議論にはならなかったんだろうけど。
著者の出す日本の未来像が「小日本」では説得力に欠けるように思います。令和の時代に発想を大きく転換するような新しい構想が出てくるといいですね。 -
Posted by ブクログ
日本で、年間の自殺者数が3万人を超えて久しい。どれくらいの
人数かと言うと、毎年の東京マラソンのランナーと同程度だ。
道路をびっしりと埋めたランナーと同じ数だけの人々が自死を
選んでいる。
弱いから死を選ぶのではない。限界までふんばり、最後の最後で
死を選ぶしかないよう追い込まれるのだ。
先般、いじめが原因となった中学生の自殺が大きなニュースと
なったが、これは子供の世界だけの問題ではない。大人の世界、
職場でも「なんでここまで」と感じる壮絶ないじめがある。
この職場でのいじめ、過重労働、多重債務等々。死しか選べなく
なった人々の実例が多く収録されている。
憲法25条 すべての国民は、健康で文化的な生活を営む権利を
有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び
公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
日本国憲法に明記されていることだが、本当に「すべての国民」は
その権利を守られているのだろうか。否、守られていないからこそ、
年間の自殺者数が減少しないのではないか。
著者のように、小泉構造改革にすべての原因を求める気はないけ
れど、あの時に行われた様々な規制緩和が原因のひとつにはなって
いるのだろう。
「世界有数の経済大国である日本、何でもそろい豊かそうにみえ
ますが、決して豊かとは思えません。物ばかりが増え、時間という
大切なものをなくしているような気がします(後略)」
外食チェーン店の「名ばかり管理職」として過労死した人の奥様の
手記の一部である。
負け組・勝ち組。日本はいつからこんな言葉で人間を区分するように
なってしまったのだろうか。そもそも、元の言葉も意味も分からずに
使われている言葉なのだが…。
読後、鬱々とした気分になった。社会保障の名目で始められる消費増税、
生活保護行政の見直し、非正規労働者の増加。この日本に、未来は
あるのか?