Posted by ブクログ
2015年05月25日
子宮頸がんワクチン(正確にはHPVワクチン)騒動のルポルタージュ。
被害者の声をきけたのはよかったけれど、書き方が前のめりだったり整理が不十分だったりするから素直には読めない。
知っておきたいことではあるけれど。
私はこの件についてよく知らない。
あっという間に承認されたと思ったら急に一斉にたたか...続きを読むれて「積極的に推奨しません」というよくわからない言葉で否定された、
という「なんかよくわかんないけど妙な感じにゴタゴタしてる」という印象だけがあった。
その「よくわかんない」部分を知りたくて読んだけどますますよくわからない。
ワクチン自体の問題(効果と副反応)と、運用の問題(不正や方向性)は分けて考えたほうがいい。
理科と社会をごっちゃにすると、ただでさえややこしい話がよけいにややこしくなる。
著者は被害者の救われなさに憤ったり、算術にかたむきすぎの医療と社会をあやぶんだりする。
その怒りは正当だと思うけど、私は前提を共有してないからいきなり憤られてもついていけない。
犯人探しの前に状況説明がほしい。
私はこのワクチン騒動をよくしらず、どちらかといえば推奨側に同情的だった。
たまたまみかけた反対派がアンチ性教育とかヒステリックなワクチン嫌悪の層と重なっていたから、そういう連中がキーキーいってるんだろうくらいに思ってた。調べもせずに。
だから被害者視点の部分があるのはありがたかった。
でも、内容のほとんどは主に政治とカネ的などろどろ部分に焦点をあてている。
そういう告発はジャーナリズムとして大事なんだけど、そこに重きを置きすぎているように思う。
こういう点ばかり見ちゃうと人間不信と絶望感にむしばまれそう。
子宮頸がんにしろ副反応にしろ、患者と接しているまともな医師は、患者の苦しみを軽減したいと思ってる。
子宮頸がんをなくしたいからワクチンを推進する人だって副反応を許容するわけじゃないし、副反応に苦しんでる人だってがんを軽視しているわけじゃない。
ワクチンはそもそも、安全に病をふせぎたいって気持ちがつくったものなんだから。
この本を読んでいると、子宮頸がんと副作用のどっちがましかみたいな対立構造におとしこんじゃうようであやうい。
装丁の趣味が悪い。
「敵」を悪く思わせようとする書き方にも警戒したくなる。
あいつは嫌なやつだと正面から批判するのではなく、引用の切り取り方や誤字の強調で「こいつは信用できない」とほのめかすのが嫌。
インタビューもほしいこたえを引きだそうとしているように感じる。