斎藤貴男のレビュー一覧
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戦後日本の経済成長がいかに「非経済的要因」としての朝鮮戦争とベトナム戦争に依存したものであったかを、当時を知る証言者への聞き取りを含めてたどり直した一冊。田無の日特金属襲撃事件から、東アジア反日武装戦線の問題意識(実践ではなく)を発見していくところは、とくに読みごたえがあった。
「朝鮮特需」「ベトナム特需」という言い方は知っていたし、日本の高度経済成長の歴史=地政学的な条件のことももちろん理解していたつもりだった。しかし、本書で斎藤が浮かび上がらせた諸産業の具体的な歴史は、そうした抽象的な知識・理解だけでは圧倒的に不十分であることを痛感させる。ヒト・モノ・カネを他国の戦争・戦場に注ぎこ -
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この本に登場する為政者、評論家、経営者のなんと傲慢なことか。他人の痛みに対する想像力の欠如に唖然とし、怒りが沸々と沸き上がる。貧しい家庭に生まれるということがどういうことなのか全く理解もできず、自分の力だけで社会階層を登ったかのごとくに、下層と見なす人々を見下す無知と近視眼が蔓延っているのが平成という時代か。それと同時にメディアに携わるジャーナリスト達(その名に値しないが)の堕落と軟弱さは目を覆わんばかりだ。私利私欲にとらわれて「公」という発想を持たない人たちに、今一度「国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条の理念を思い出させたい。
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膨大な文献と当時の関係者へのインタビューを基にして東京電力の姿を浮き彫りにした一冊です。我々はなぜ原発を選んだのか。なぜ巨大企業の支配を望んできたのか? これは全ての日本人に対する問いであると思います。
本書は書店で目にして以来、ずっと気になっておりました。で、先日ようやく手に入り、読み終えることができましたが、膨大な文献や、当時の関係者によるインタビューを元に、東京電力という日本を代表する「エクセレント・カンパニー」の裏にあるものを抉り出そうとする筆者の試みには本当に敬意を表します。
正直、一企業がここまでのことをするのかと…、読み終えたときにはしばらくの間、虚脱状態になりました。 -
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少し古い本ですけれども、なかなかに読み応えがありましたね…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
自殺者三万人と言いますけれども、今はそこまで多くないような気がしますねぇ…二万ちょっと…コロナのせいで少し増えたらしいですが…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
しかしまあ、「強いられる死」というタイトル通り、自殺に追い込まれる人は決して個人的な問題だけで自殺を選んでいるわけではないと…この本を読むと思ってしまいますなぁ…
まさに追いつめられていくというか…そうした社会構造のせいで自殺に追いやられているような気がしてなりません…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
新自由主義とかいう -
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著者自身はあとがきで「達成感がない」とこぼしているが、机上の作文ではなく足を使った取材を駆使した労作。
朝鮮・ベトナムの両戦争と日本の経済成長は骨絡みとは、多くの国民の認識でありながら、表向きそうした話は封印され、令和から振り返る昭和・高度成長期は「三丁目の夕日」で描かれた如く、貧しくとも皆がモーレツに働いた人情の時代ということになっている。が、その象徴たる東京タワーの鉄骨には朝鮮戦争で使われた米軍戦車の鉄が再利用されていたとは、驚いた。戦争経済大国のまさに象徴的なエピソードではないか。
他にも枯葉剤製造工場を巡る公害や、ベトナムでばら撒かれた毒キャンディ、朝鮮戦争に駆り出された掃海部隊など、 -
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私の子供時代(平成元年だったかな?)に急遽導入され、現在まで世間に自然に溶け込んでいる税金である消費税。
個人が何かを買ったときに課される税金の側面が強いが、法人や事業を営む者にとってはとんでもなく悪質な性質をもった税金と化す。
大企業などの強い者には輸出還付金などの優遇制度があり、下請けのような弱い者には資本主義の競争原理が働き、消費税負担を弱い者が強いられる仕組みになっている。
また、払えない企業に対する税務署の執拗な追い込みにより自殺者まで出しているが、国は消費税滞納者に対し、税金を払わず溜め込んでいる悪人のようなプロパガンダ広告を打ち出していたり、昨今の消費税増税も大企業の法人税 -
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(01)
戦後のメディアの中で漫画がどのようなポジションにあったのかを知る上でも楽しく読むことができる.そこに梶原のようなエキセントリックな人物が関わっていたと知るだけでも心が熱くなる.作画と原作,月刊と週刊,少年誌と青年誌といった関係,昭和の出版業界(*02)の様相などもうかがい知ることができる.
梶原の主要な作品である「あしたのジョー」や「巨人の星」にも現れているが,戦後の家庭や家族のありようについて,梶原の生い立ちから晩年までの激動とともに読むのもよいだろう.「マイホーム」と「リング」(あるいは「スタジアム」)の対立と相互依存関係がどのように築かれていったかについて改めて考えさせられる. -
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原発事故によって赤裸々になった東京電力の企業体質がどのように培われてきたか、歴代社長の経歴、労働組合(電産)潰し、反原発活動への対応などを輻輳的に絡めながら炙り出していく。
非常に脱線が多く読みながら「何を伝えたくってこの章を書いているんだろう?」という部分も多々ありますが、全体的には良質なノンフィクションで力作です。
終章の「犠牲のシステム」の観点から福島を原発ゴミ処理地にしてはいけないという主張を読んだときに途中の大幅な脱線を作者が書かざるを得なかった心情は個人的には腑に落ちましたが、いかんせん途中の脱線の長さが作品全体の完成度に水を指しまくっているのも又事実。文庫本にするときに3割くらい -
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気がつけば、あの日から今年で丸5年を迎える。忘れていたわけではなかったけど、当初よりはその記憶が薄れてきてしまっていることはたしかだ。だから、今年は意識的に震災や原発事故の関聯本を読むようにしたい。さて、その第1弾である本作は、タイトルからもわかるように、その原発事故の当事者である「東京電力」に焦点を当て、あの日までは日本を代表する優良企業であり、誰もが憧れる就職先であったはずの東電が、なぜ事故を起こし、国民全体から蛇蠍のように嫌われる企業になってしまったかに迫ったノンフィクションである。読んでみると、震災直後に東電について書きたてられた文章は洪水のように流れていたはずなのに、まだまだ知らない