斎藤貴男のレビュー一覧

  • 戦争経済大国

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     戦後日本の経済成長がいかに「非経済的要因」としての朝鮮戦争とベトナム戦争に依存したものであったかを、当時を知る証言者への聞き取りを含めてたどり直した一冊。田無の日特金属襲撃事件から、東アジア反日武装戦線の問題意識(実践ではなく)を発見していくところは、とくに読みごたえがあった。
     
     「朝鮮特需」「ベトナム特需」という言い方は知っていたし、日本の高度経済成長の歴史=地政学的な条件のことももちろん理解していたつもりだった。しかし、本書で斎藤が浮かび上がらせた諸産業の具体的な歴史は、そうした抽象的な知識・理解だけでは圧倒的に不十分であることを痛感させる。ヒト・モノ・カネを他国の戦争・戦場に注ぎこ

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    2025年03月25日
  • 平成とは何だったのか 「アメリカの属州」化の完遂

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     この本に登場する為政者、評論家、経営者のなんと傲慢なことか。他人の痛みに対する想像力の欠如に唖然とし、怒りが沸々と沸き上がる。貧しい家庭に生まれるということがどういうことなのか全く理解もできず、自分の力だけで社会階層を登ったかのごとくに、下層と見なす人々を見下す無知と近視眼が蔓延っているのが平成という時代か。それと同時にメディアに携わるジャーナリスト達(その名に値しないが)の堕落と軟弱さは目を覆わんばかりだ。私利私欲にとらわれて「公」という発想を持たない人たちに、今一度「国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条の理念を思い出させたい。

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    2024年11月16日
  • 子宮頸がんワクチン事件

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    娘が子宮頸がんワクチン接種を検討するにあたり知識を入れたいと思い読み始めました。結果、接種はさせません。他のワクチンと全く別の方法で作られ副作用発現率も高く、今もなお後遺症で苦しんでいる子たちを思うと心が痛みます。副作用が出ても適切な治療に行き着くまでにかなり時間がかかり、精神的にも肉体的にも辛すぎます。そのうち男子も定期接種始まるでしょうから全ての保護者の方に読んでいただきたい本です。

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    2024年10月12日
  • 「東京電力」研究 排除の系譜

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    膨大な文献と当時の関係者へのインタビューを基にして東京電力の姿を浮き彫りにした一冊です。我々はなぜ原発を選んだのか。なぜ巨大企業の支配を望んできたのか? これは全ての日本人に対する問いであると思います。




    本書は書店で目にして以来、ずっと気になっておりました。で、先日ようやく手に入り、読み終えることができましたが、膨大な文献や、当時の関係者によるインタビューを元に、東京電力という日本を代表する「エクセレント・カンパニー」の裏にあるものを抉り出そうとする筆者の試みには本当に敬意を表します。

    正直、一企業がここまでのことをするのかと…、読み終えたときにはしばらくの間、虚脱状態になりました。

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    2024年08月11日
  • 強いられる死

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    少し古い本ですけれども、なかなかに読み応えがありましたね…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    自殺者三万人と言いますけれども、今はそこまで多くないような気がしますねぇ…二万ちょっと…コロナのせいで少し増えたらしいですが…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    しかしまあ、「強いられる死」というタイトル通り、自殺に追い込まれる人は決して個人的な問題だけで自殺を選んでいるわけではないと…この本を読むと思ってしまいますなぁ…

    まさに追いつめられていくというか…そうした社会構造のせいで自殺に追いやられているような気がしてなりません…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    新自由主義とかいう

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    2021年11月04日
  • 戦争経済大国

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    著者自身はあとがきで「達成感がない」とこぼしているが、机上の作文ではなく足を使った取材を駆使した労作。
    朝鮮・ベトナムの両戦争と日本の経済成長は骨絡みとは、多くの国民の認識でありながら、表向きそうした話は封印され、令和から振り返る昭和・高度成長期は「三丁目の夕日」で描かれた如く、貧しくとも皆がモーレツに働いた人情の時代ということになっている。が、その象徴たる東京タワーの鉄骨には朝鮮戦争で使われた米軍戦車の鉄が再利用されていたとは、驚いた。戦争経済大国のまさに象徴的なエピソードではないか。
    他にも枯葉剤製造工場を巡る公害や、ベトナムでばら撒かれた毒キャンディ、朝鮮戦争に駆り出された掃海部隊など、

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    2021年07月03日
  • ちゃんとわかる消費税

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    同著者の「消費税のカラクリ」も読んだが、消費税の仕組みをもう少し詳しく知っておきたいと思い購入。

    「消費税のカラクリ」で書かれいることをより分かりやすくコンパクトに纏めたような内容。

    やはりこの税は弱者を虐げる悪魔的な性質しかない最悪の仕組みを持った税金だということを再認識した。いっそのこと恐喝税とでも改名してみてはどうだろうか。

    普段税金など興味がない人にも読んでほしい本であり、難しいかも知れないが多くの人がこの税金を消滅させるべく動いてくれることを願う。

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    2020年11月22日
  • 決定版 消費税のカラクリ

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    私の子供時代(平成元年だったかな?)に急遽導入され、現在まで世間に自然に溶け込んでいる税金である消費税。

    個人が何かを買ったときに課される税金の側面が強いが、法人や事業を営む者にとってはとんでもなく悪質な性質をもった税金と化す。

    大企業などの強い者には輸出還付金などの優遇制度があり、下請けのような弱い者には資本主義の競争原理が働き、消費税負担を弱い者が強いられる仕組みになっている。

    また、払えない企業に対する税務署の執拗な追い込みにより自殺者まで出しているが、国は消費税滞納者に対し、税金を払わず溜め込んでいる悪人のようなプロパガンダ広告を打ち出していたり、昨今の消費税増税も大企業の法人税

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    2020年12月18日
  • ちゃんとわかる消費税

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     税というとどうしても難しく自分よりも遠いところにあるよな気がするが、よく考えてみれば一番身近なものなんだという事、この点が認識できれば考え方も変わってくると思うのだが、この国では難しいかもしれない。

     消費税だけではなく、税の在り方は知っておかなければいけないことだろう。

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    2019年11月29日
  • 子宮頸がんワクチン事件

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    330万人以上が摂取し約2000人が重い副作用を発症したワクチン。学校や自治体が無料摂取期間を設定して多くの女児が被害者となった。毎年3000人が亡くなる子宮頸がんとはいえ、あまりにひどいこのワクチン施策。怒りの感情をさらに上回る科学的、多角的な筆力。日野市の池田利恵議員が共産党含む全ての党に反対されながら戦ったの素晴らしい。

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    2015年08月04日
  • 「東京電力」研究 排除の系譜

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    原発絡みの話だけではなく、東電のルーツから振り返り、その根本的な企業の理念思想から現在の歪みを照らしだそうしている。この筆者としては抑制された筆致なので、立場を問わずおすすめしたい。

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    2013年04月07日
  • 強いられる死

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    斎藤貴男さんの本は好きで、いろいろ読んできました。

    本書は内容が、他の本と比較しても格段に重い内容なので、決してさらっと流して読める本ではありません。

    バブル崩壊後、日本経済がデフレで景気回復できない・・・のは、消費増税とそれに続いた小泉ー竹中ラインによる構造改革によるもので、一番の要因は、労働強化が進む一方で、賃金デフレが蔓延し、かつ雇用そのものが不安定化したことが一番の要因であることが、本書の端々から伺えます。

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    2012年11月21日
  • 『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡

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    昭和の漫画原作者、梶原一騎の一代期。
    私にとっては「空手バカ一代」が代表作。

    コンプレックスをバネにした成功と破滅。繊細な一面を強調しすぎた感もあるが、一種の迫力をもって、長編に集中させられた。

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    2024年09月03日
  • 『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡

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    小学生の頃から読んでた作品で頻繁に見かけた名前。「原作者」って?と、当時は「漫画を描く人ではない??自分が今読んでいる漫画に実際にはどう携わっているのか?」等、疑問に感じながらも名前だけはしっかり認識してました。
    本来ならレジェンドと崇められてもおかしくない程の功績を残したはずなのに「レジェンド」足り得ない負の伝説の数々。良くも悪くも「昭和」という時代の一角を担っている事には間違いない。
    一言付け加えると本書は「あしたのジョー」の話ではないから「あしたのジョー」の逸話を期待をすると肩透かしにあいます。

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    2023年02月04日
  • 東京を弄んだ男 「空疎な小皇帝」石原慎太郎

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    2022年、石原氏逝去の後に読む。私は石原氏を作家としても、政治家としても評価していない。誰か功績を教えてください。

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    2022年10月15日
  • 日本が壊れていく ──幼稚な政治、ウソまみれの国

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    日本の良くない傾向を様々な視点から炙り出した面白い本だ.ベテラン政治家の古賀、小沢、亀井らの経験に基づく意見は重要なものが多いと感じた.安倍政治のくだらない所を的確に指摘している第2章も楽しめる.金子兜太の生き方には感銘するものが多い.政治がどこを向いているのかを、多くの事例で詳しく教えてくれる好著だ.

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    2019年03月10日
  • 戦争経済大国

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    朝鮮戦争の直接特需で驚異的な復興を果たした後、ベトナム戦争の間接特需で高度経済成長の真っ只中に育った身だ。学生になる頃には、全共闘も内ゲバで自滅し、無縁になっていた。爾後世代であり、行動抜きに振り返るしかないわけで(ありがたいんだけど)、様々な立場で語られ、記される過去を学ぶ。そこで生じた、例えば改憲に対する自分の稚拙な思いなど、ネットで晒すほどのものでもないが、本著を通して現行憲法の存在意義を再認識する。

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    2019年02月25日
  • 『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡

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    (01)
    戦後のメディアの中で漫画がどのようなポジションにあったのかを知る上でも楽しく読むことができる.そこに梶原のようなエキセントリックな人物が関わっていたと知るだけでも心が熱くなる.作画と原作,月刊と週刊,少年誌と青年誌といった関係,昭和の出版業界(*02)の様相などもうかがい知ることができる.
    梶原の主要な作品である「あしたのジョー」や「巨人の星」にも現れているが,戦後の家庭や家族のありようについて,梶原の生い立ちから晩年までの激動とともに読むのもよいだろう.「マイホーム」と「リング」(あるいは「スタジアム」)の対立と相互依存関係がどのように築かれていったかについて改めて考えさせられる.

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    2018年02月04日
  • 「東京電力」研究 排除の系譜

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    原発事故によって赤裸々になった東京電力の企業体質がどのように培われてきたか、歴代社長の経歴、労働組合(電産)潰し、反原発活動への対応などを輻輳的に絡めながら炙り出していく。
    非常に脱線が多く読みながら「何を伝えたくってこの章を書いているんだろう?」という部分も多々ありますが、全体的には良質なノンフィクションで力作です。
    終章の「犠牲のシステム」の観点から福島を原発ゴミ処理地にしてはいけないという主張を読んだときに途中の大幅な脱線を作者が書かざるを得なかった心情は個人的には腑に落ちましたが、いかんせん途中の脱線の長さが作品全体の完成度に水を指しまくっているのも又事実。文庫本にするときに3割くらい

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    2016年09月15日
  • 「東京電力」研究 排除の系譜

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    気がつけば、あの日から今年で丸5年を迎える。忘れていたわけではなかったけど、当初よりはその記憶が薄れてきてしまっていることはたしかだ。だから、今年は意識的に震災や原発事故の関聯本を読むようにしたい。さて、その第1弾である本作は、タイトルからもわかるように、その原発事故の当事者である「東京電力」に焦点を当て、あの日までは日本を代表する優良企業であり、誰もが憧れる就職先であったはずの東電が、なぜ事故を起こし、国民全体から蛇蠍のように嫌われる企業になってしまったかに迫ったノンフィクションである。読んでみると、震災直後に東電について書きたてられた文章は洪水のように流れていたはずなのに、まだまだ知らない

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    2016年01月26日