西村寿行のレビュー一覧
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西村寿行『曠野の狼』光文社文庫。
『狼のユーコン河』に登場する戒能兵馬の若き日と、何故、戒能兵馬がアラスカに渡った理由が描かれる。『狼のユーコン河』に比べるとスケールは小さいが、サバイバル・ロマンとしての面白さは堪能出来る。
明治の中頃、警視庁警部の戒能兵馬は同期の高垣の陰謀により上司斬殺の無実の罪で投獄される。北海道釧路集治監に移された戒能は高垣に復讐を誓い、脱獄する。過酷な北海道の自然の中で、復讐のために生き延びようとする戒能の運命や如何に。
勿論、西村寿行による本作の方が遥かに前に執筆されているのだが、映画化されたマイケル・パンクの『レヴェナント 蘇えりし者』に非常に良く似たストー -
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西村寿行『狼のユーコン河』光文社文庫。
久し振りに読む西村寿行。大概の作品は読んでいるのだが、たまに未読作に出会うことがある。最近では古本屋でも余り見掛けなくなった西村寿行作品であるが、本作は百円本コーナーで見付けた。
アラスカを舞台にしたサバイバル大脱走冒険小説。西村寿行だけにエロスとバイオレンスの描写はあるが、なかなか読み応えのある骨太の冒険小説であった。
戦時下の昭和17年のアラスカで、米軍による日系人の強制収容が始まる。米軍のアンガス・ギャビン少尉の策略により検束された氏家沖之介は妻のマリーを奪われ、収容所で悲惨な拷問を受ける。マリーはユーコンの狼と呼ばれる戒能兵馬に氏家の救出を -
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西村寿行の名前を聞かなくなって随分たつ。1980年代には.森村誠一、半村良と並び「三村」と呼ばれる人気作家だった。ハードロマン小説や動物小説で有名だが、同時にスケールの大きい災害小説にも腕を振るった。大量発生したねずみの群れが人間社会をパニックに陥れるという本作は、その系列の代表作だろう。イメージとは裏腹に緻密なデータを駆使してカタストロフを描き出す技量は寒気がするほど見事だ。「鼠群」と書いて「そぐん」と読ませるなど独特の言葉遣いが雰囲気を創り上げていく。古書店で見かけたら手にとって損は無い、バイオレンスだけの作家だと思って敬遠するにはあまりにもったいない一冊だ。
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元・海上保安庁特別警備官・関守充介の活躍を描いた「渚シリーズ」の3作目。1984年作品。
北朝鮮から日本に密航した白人女性をめぐって、KGB、CIA、日本国家の秘密機関が暗躍する物語。
白人女性をアメリカ大使館に護送するためだけに特別警備官に復帰させられた関守充介は、序盤早々物語の中心から退場。逃走する白人女性マリアを救った医師・河北正和が物語の中心になります。マリアの行方を知っていると国家機関から疑われた河北が妻子を殺され、自身は逃亡生活、という西村寿行作品ではいくつかある逃亡医師の物語になります。
このまま河北正和の物語になるかと思いきや、終盤で関守充介が物語の中心に復帰する、というのは、 -
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1981年の西村寿行作品。
1979年の『遠い渚』から始まる渚シリーズの第2作。
前作の主人公海上保安庁警備官・関守充介は引退警備官として再登場。前作ヒロイン根岸由紀もメイン・ヒロインとして再登場。ですが、サブヒロインとしてインドネシア人カスワティ、イギリス人サンドラを配置。
沖縄本島南西約77海里で事件が始まり、舞台はインドネシア、イギリスへと移り現地ヒロインが登場するのは、ボンド映画のよう。
前作が、重厚な海洋サスペンスだったのに比べ、痛快なアクション作品へと路線変更したかのようです。
ラスボスは現職官房長官・平木なのですが、クライマックスでの関守とラスボスの戦いまでの経緯は、海と全く関 -
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1977年から、「週刊アサヒ芸能」に連載された西村寿行作品。
『君よ噴怒の河を渉れ』『犬笛』『化石の荒野』と共に、西村寿行作品の中でも代表作とされる作品。
生き別れとなった犬と飼い主が、再会を果たそうとする途中で、巨大な陰謀に巻き込まれる、というパターンは、後の作品『旅券のない犬』でも使われます。
自分が先に『旅券のない犬』を読んでたのが悪いのかもしれませんが、犬と飼い主との感動の再会シーンが、あまりにもあっさりしていて驚きました。もっと泣ける再会シーンだと思ってずっと最後まで読んでいたのに。
映画化・テレビドラマ化された作品は、観たことが無いのですが、もっと盛り上げてくれたのでしょうかね。 -
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1977年から1978年にかけて小学館の若い男性向けの雑誌『GORO』に連載された西村寿行作品。
『GORO』に連載された作品ではありますが、特に若者向けの内容ということもない、いつもの西村寿行作品になっています。
毒ガスを使ったテロを発生させ、日本政府から五十億円を強請る犯人グループと、それに対する警察庁公安課の戦いを描く物語。
全8章の内、第1~3章が、毒ガステロと、それによってパニックに陥る人々の様子を描いていますが、これが西村寿行作品の中でもトップクラスの凄絶さ。
第4章からは、犯人グループの一人と公安課の追っかけっこ。特捜部のエースが、犯人を追ってSMクラブに潜入したり、と、過激な描 -
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1985年に『週刊大衆』に連載された西村寿行作品。作家・西村寿行を主人公にした『黒猫の眸のほめき』の続編ですが、西村寿行は作品に登場せず、前作で西村寿行を誘拐した瀬田一家が主役となった作品。まあ、一番活躍するのは、前作では瀬田一家の敵、今作では瀬田一家の味方となった、超能力を使う荼吉尼婆ですけど。
他の西村寿行作品の続編によくあるパターンで、強い美女が登場します。『蘭菊の狐』の続編『襤褸の詩』、『風紋の街』の続編『陽炎の街』と一緒ですね。それらの作品と比べると、エロス度とバイオレンス度が低めな気がしますね。そのせいか、西村寿行作品の中でもパワー低めな感じです。ユーモア度を高めにしたのかもしれま
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