中井拓志のレビュー一覧
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古書購入。
ホラーというよりSF。現代。サヴァン能力と異次元。
読んでいて、つい「夢の樹が接げたなら」を思い出してしまった。
眠り続けさせられた比室アリス。十四歳の少女。7年前、六十人以上を精神障害に叩き落し、二人しかまともな生活に戻ってこれなかったという、惨事を引き起こした化け物。
彼女が笑い、歌うとき、世界は滅び去る。
通常世界が1次元と表される時、アリスが表現する世界は9.7次元。
理解しきれない高次元の言語を押し付けられた者は、「わたし」や「世界」を見失ってしまう。
ある日、アリスは起きだして、笑い、そしてSと呼ばれる現象を引き起こす。
それは歌うこと。ただそれだけ。 -
Posted by ブクログ
製薬会社テルン・ジャパンの埼玉県研究所は、広大な敷地を持っていた。
木々に囲まれえた中に四つ建物を持ち三号棟では、スキンケヤーの研究が進められてたはずだった。
八月の今は、シートに覆われて建物の形が見えない。
周囲は黄色い柵に覆われて自衛隊が監視をしている。
ここ三号棟で六月にウィルス漏洩事件が発生したのだ。
漏洩事件の直後、主任を務めていた研究者影山智博が三号棟を乗っ取った。
彼は研究活動の続行を要請、受け入れなければウィルスを外へ垂れ流すと脅かす。
そして、テルン・ジャパンは一月で120万のアルバイトを募集した。
このアルバイトは影山の研究のためにテルン・ジャパンが用意した -
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後味の悪さがとても素敵な
中井拓志の最新作。
もちろん後味は決してスッキリしないが
けれど何か希望…
否、この作品から借りれば「予兆」を
感じさせるラスト。
「みやたま」と「うつみ」の
不思議な関係がとても羨ましく思える。
言葉を操る作家と言う職業の人間が
その中で言葉で遊ぶように
言葉を操る少女を描いていく。
なにやら意味のわからない言葉が
冒頭から頻繁に登場し
それを理解していただかなくて結構とばかりに
作中の「工藤」をはねつける「小室」のように
読者をも愉快にはねつけようとする。
前作「アリス」の「9.7次元」も
魅力的であったけれども
今 -
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ネタバレ怪奇現象に科学的にアプローチするというスタイルは結構いい。解析の元になる憑依が起こるメカニズムとか投げっぱなしのところもあるけど、登場人物も全てを科学で解明できるわけではないというスタンスで動いているので、それはそれでよしとしましょう。
表題作の「イナイイナイの左腕」で、生き残った女の人を最後フォローしてないのが、細かいことですが気になりました。あと、科学的解明がコンセプトなので、文章として読む分にはあまり恐くないです。ただビジュアル的には結構恐いので、映像化されるとかなり恐いかも。
なんとなくシリーズ化されそうな感じなので、次期待というところでしょうか。 -
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ネタバレ個人的には、彼の【アリス―Alice in the right hemisphere 】よりも、好みでした。
アリスの方が評価とか高いみたいなんですが。
話としましては、バイオハザード系ホラーです。
感染した人たちの、「レフトハンド」への描写がなかなかグロくて素敵です。
中井氏の小説はアリスでもそうでしたが(アリスの時は脳の仕組み?まわりの話でしたが。ヒトの意識が世界を作っている、といった概念的なお話)今回も「カンブリア紀」の話の詳細があり、雑学まで増えるようなカンジです。
複雑で難しい文章も多く、ナナメ読みしてると理解はできませんがきちんと読めばすんなりと入ってきます。
最初に、ジャパ -
Posted by ブクログ
ネタバレ「レフトハンド」、最初にその題を見た時、自分の左手が自分の思うように動かせず、勝手に動きだすエイリアンハンドシンドロームのせいで事件になるという内容だと思いました。
ですが、実際は「LHV」というウイルスに空気感染、又は、接触感染した人間が発症後に左手が「繭」に包まれ、腕ごと肉体から「脱皮」するという当時に流行った「バイオ・ハザード」モノという印象でした。かといって、左手対人間という全面闘争になるわけではなく、恐ろしいウイルスの対処を背景にした人間ドラマのような内容だと感じました。
外部との交流があり、「LHV」が蔓延している閉鎖空間が舞台になっていて、今回の「バイオ・ハザード」の責任問題で焦 -
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95年8月、東晃大学医学部の研究棟、通称「瞭命館」で60名を超す人間が同時に意識障害を起こす惨事か起こった。しかし、懸命の調査にもかかわらず、事故の原因は掴めないままそれから7年。国立脳科学研究センターに核シェルター級の施設が建造されていた。そこはアリスという少女を監視・隔離するためのものだった。世界を簡単に崩壊させる彼女のサヴァン能力とは…。
青色サヴァンの誰かもビックリな能力を、脳科学の見地から紐解く壮大なスケールで描く。
アリスの持つ『世界をフラクタル次元で一括処理する能力』の意味とは一体。
後は読んでください。
これはかなり面白い。