埼玉の製薬会社『テルンジャパン』3号棟でバイオハザードが発生した。
しかし会社も政府も、その事実をひた隠しにしていた。
3号棟の主任・影山が漏れ出した殺人ウイルス・通称『LHV』を盾に立てこもっていたからだ。
『LHV』の調査のため学術調査員として3号棟に入り込んだ津川はその恐るべき正体を知る。
えーと、いわゆるバイオハザードものなので、ホラーとはちょっと違います。
違うと思います。
何を怖いと思うかは人それぞれではありますが、私は怖くありませんでした。
というかですね、『LHV』―――通称『レフトハンド・ウイルス』に感染しますと、左腕が抜けるんですよ。
なんてわかりやすいネーミングでしょう。
手がもげて血まみれになって死ぬってのは怖い気がします。
でもそれ以上に、抜けた左腕がルンタタでそのへん走り回ってるてのがどうしてもギャグにしか見えないんですが。
や、ルンタタはちょっと違うとしても!
なんと吃驚、このウイルスに感染すると左腕が繭を作って巨大化し、最後には宿主の心臓を自分の物にして『脱皮』しちまうのです。
そりゃ人間の方は心臓を取られたら生きていけません。
しかし微に入り細に入り、その独立した『左腕』の形態やらを具体的に描写してもらって、どんなに想像してもやっぱり怖くありません。
だって『左腕』なんだもんよ(涙)!?
『エイリアン』みたく甲羅があって分泌液でネバネバしてて腋のあたりに『口』があって『触手』が生えてて死体を貪り食おうが跳ねながら歩き回ろうが、それが『左腕』だというだけで全然怖くないんだっ(涙)!!
まー『怖さ』を求める小説じゃないんだろうが……。
ちなみに登場人物はみんなどっか嫌な奴です。
責任逃れをするお役人、いざとなったら会社にフィリピンに逃がしてもらう予定の3号棟の上司、感染モデルに選ばれた嘘つきの家出娘に、30過ぎても無意識に男に媚を売る女性社員、主人公(だと思う)の津川も『LHV』に夢中で周りが見えない学者バカで独善的な男です。(……とかいうと本当にヤな奴だよおい)(でも実際私はこいつが嫌い)
ともかくそういった連中が『LHV』に関わり、その謎を解き明かそうと、あるいは闇に葬ろうとする物語です。
そして最後の最後に、『嫌な奴』だった何人かは海を目指すのです。
LHVが生まれたカンブリアの海ではないけれど。
登録商標を背負った女神が、炎に焼き尽くされる前に。
人間を殺してしまう恐ろしいウイルスなのに、そこから生まれた『左腕』は実際はひどく弱い生き物でしかないのが少し悲しかったかも。
しかしこのウイルス、スキンケア開発から生まれたってのは……なんか……(そりゃ大抵の女はスキンケア自体が娯楽だが((C)OL進化論))。