雀野日名子のレビュー一覧
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DEC
26
[P]「太陽おばば」(雀野日名子) [ポレポレ図書室]
ポレポレとうさん@09:27:31 | コメント(0) | リンク(0)
何気なく立ち寄った書店の平台に置かれた一冊が、何となく気になって買って読んでみる。そういうことが時々あります。そして、そういう時に限って良い本に出合える確立も高いような気がします。今回もそんな素敵な一冊に出会いました。
■読み進めるごとにグイグイと引き込まれる一冊
今日ご紹介するのは雀野日名子さんの「太陽おばば」という一冊。不思議な能力を持つおばあちゃんが、疲れた人の心を癒していくというちょっと変わった設定、意外な結末を迎える物語です。
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
不妊による離婚や、ままならぬ仕事のことで鬱々と過ごしていたフリーライターの舞は、耶知子さんというおばばと出会う。耶知子さんは、わだかまりを抱いたまま「死」を迎える人々の心に、不思議な力で分け入ってゆくことができた。そんなおばばと過ごすうちに舞は、ライターとしてこの世に書き残すべき本当に大切なことを見つけていたー。人間の弱さや身勝手さをも優しく包み込んでくれる、余韻切ない連作ミステリー。
この物語は5つのエピソードに分かれていますが、それぞれが関連しあって結末へと進んでいきます。
読み始めた時には、疲れた女性フリーライターが老女と出会うことで癒されていくほのぼのとした物語なのかと思いました。しかし、第一話を読み終わったときにその感想は吹き飛び、奇想天外な物語だったんだと気がつきました。
しかし、奇想天外な内容に一度に転換するわけではなく、ジワジワと徐々に徐々に独特の世界観に引き込まれてしまうような感覚なんです。
そして迎える最終話。そこにはあっけらかんとした登場人物の雰囲気とは裏腹に、哀しくて切なくて、それでも心温まる結末が待っていました。
人は哀しみを抱えながら生きているものの、生き方によってはそれもまた良いもんだなと思えるような一冊です。年の瀬の忙しい時期ですが、心をホッとさせるにはうってつけの一冊。 -
Posted by ブクログ
短編集。
怖くないホラー小説。
ホラー風味のファンタジーというか。
表題のトンコは、ぶたが主人公の逃走劇。
話の筋は違うけど雰囲気的には「かわいそうな象」的なお話。
私は割と単純な性格なので、最後のほう通勤電車で危うく泣きかけました。
他、「ぞんび団地」なんかが好みでした。ぞんびいいよねぞんび。
救いのない話がどうしても嫌!許せない!ってことはないのだけど
害意のない動物や子供なんかが出てくると
悲惨な最期にはなりませんようにって
どうしても思ってしまうので、このくらいでちょうど良かった。
まぁ、ホラーとしてはそういうのちょっとずるいよなーとも思うけど。 -
Posted by ブクログ
豚が主役なのにホラー?しかも賞を受賞している…。
普段あまりホラー小説は読まないのだけど、気にならずにはいられなくて読んでみました。
お、おもしろい‥(笑)
話の内容がおもしろいというのもあるけれど、こういうアプローチの仕方もあるんだ‥という見方でのおもしろさも感じた。
ホラーは、折原一さんや鈴木光司さんの小説くらいしか読んだことがないのだけど、そういう正統派?のホラーとは違う気がする。
短編集で三作収録されてて、三作目の『黙契』は正統派だけど、表題作の『トンコ』と二作目の『ぞんび団地』は、雰囲気的にはファンタジーに近いような感覚も。
特に『ぞんび団地』は語り部が小学生の女の子であるためか、読んでいる感覚は絵本みたいなのに内容は怖いから、その不思議なギャップがおもしろいと思った。
三作とも全く作風が違うから、どれが一番好きかはとても決めがたい。
ただ、全てに共通して、“切なさ”の要素があったように思います。
ホラーなのだけど情緒のようなものも感じられるところが、日本のホラーってこうだよね、と思わせる。
ホラーやミステリ、サスペンスってやっぱり、続きが気になる!のエネルギーで読書が遅い私でもぐんぐん読める。
たまにはホラーもいいな、と。
表題作の『トンコ』はホラー要素は薄いので、苦手な人でも読めるはず。 -
Posted by ブクログ
第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作です。
表題の作品のほかに、「ぞんび団地」、「黙契」が収録されています。
食用にされるために搬送される途中で逃げてしまった豚のお話です。
本当にそれだけなんです。
でも、信じられないほど面白いです。
ホラーの概念が覆ります。
逃げ出した主人公の豚の、なんと純粋な心の持ち主であることよ、と思わされることで、人間どもの身勝手さ、醜悪さが際立ってくるという仕掛けのようです。
著者は、同じテーマ・同じ登場人物・同じ設定で書いたとしてもここまで読ませる作品に仕上げられる人はそうそういないのではないだろうか、と思わせるだけの確かな筆力の持ち主であり、その証拠に、同書収録の「ぞんび団地」では、コミカルな設定の中にそこはかとない切なさが、そして、「黙契」に至っては号泣せずには読み進めることが難しい溢れる哀しさと兄弟愛が、まぐれではない著者の力量を如実に示していす。
短編というジャンルの難しさ、奥深さをまた実感した思いです。 -
Posted by ブクログ
他の方の感想を読んで、気になった作品です。
『トンコ』『ぞんび団地』『黙契』の3作品が収録されています。
表題作の『トンコ』は日本ホラー小説大賞短編賞受賞作です。
養豚場から出荷されたトラックが横転し、そこから脱走した一匹の豚・トンコがきょうだいとの再会を求めて、さまざまな場所を歩きまわる姿が書かれています。
特に繁華街でのきょうだいとの再会のシーンや、トンコを見た人たちの対応が印象深かったです。
てっきりトンコと同じように、トラックから脱走したきょうだいと出会えるのかと信じておりましたが……全く見当違いの再会でした(´•̥ ω •̥` )
『ぞんび団地』はぞんびになりたい女の子のお話なのですが、わたしは今までぞんびになりたいと思ったことがなかったため、あまり共感はできませんでした。
ただ、「ぞんびになりたいと思ったことがない」というのは、幸せなことなんだなと思いました。
『黙契』が3作品の中で一番面白かったです。
上京して充実した日々を過ごしているはずの妹さんが突然自殺し、親代わりで育ててきたお兄さんが妹さんの死の真相を探るお話ですね。
ただ、いつも温厚な方が突然激昂してまるで別人になった時、この本を読んでいて一番のホラーを感じました。
正直、ぞんびの上を行くとは思わなかったです(((=ω=)))ブルブル
なかなか個性的な作品揃いでしたが、個人的にあまり好きな作品ではなかったため、☆3になりました。
もしかしたら、わたしがホラーが苦手なだけかもしれませんので、あまり評価は気にせず、擬豚化(解説では読者を「擬豚化」し、トンコが抱く生々しい恐怖を共有する、と書かれています)
してみたいと思った方はぜひ一度手に取ってみてほしいです。 -
Posted by ブクログ
【サンマイ崩れ】
主人公が鬱病やパニック障害を患っているのだが自身の病症を冷静に捉え分析しているため心理描写がそこまで重苦しくのしかかる感じではない。
キーマンとなるワタナベさん、田舎のヤンチャな若者っぽさもありつつ消防団の仕事はそつなくこなすアキやんとまっちゃんなど脇役にもリアリティを感じられて面白かった。
【鼻】
エピソードが入り組んでいる割には収束感が物足りなく、オチも少し弱いかな?と感じた。悲惨なディストピアは幻なのかもしれないが、後味の悪さはきちんと残るホラーだった。
【トンコ】
ホラー要素はほぼないけれど、ブタ視点の世界の見え方に哀切を覚える。
【生き屏風】
心温まる伝奇ファンタジー。あまり興味のないジャンルだったが、主人公の妖鬼と屏風に住まう死霊の奥方が対話を通じて絆を育む過程が丁寧に描かれ引き込まれた。最後はこうなれば良いな…と思った通りになって満足。
【寅淡語怪録】
派手な展開はないが、ちょっとした違和感の積み重ねからいつの間にか怪異に絡め取られている独特の読後感が面白い。
【穴らしきものに入る】
シュール・フェティシズム・ホラー…ギャグ?
発想力に脱帽。 -
Posted by ブクログ
2008年第15回日本ホラー小説大賞短編賞
奏悟パイセンの本棚から
解説にたどり着いて、エアガッツポーズ。
(ง •̀_•́)ง
(ガッツ石松さん、ご冥福をお祈りいたします。)
そこには、林真理子さんの講評の一文が取り上げられていたのだ。
“「トンコ」は、このまま純文学雑誌にでても高い評価を得たはずだ。”
私も全く同じことを考えていたんです。
なんなら文章もままです。
これは、純文だわ!豚ちゃんは何のメタファーなの?って笑
このトンコという小説は 装丁からしても隠していません。
豚ちゃんのお話なのです。
そして、その豚ちゃんの鳴き声描写の豊穣たるや。
これは かなり養豚場で取材を重ねたのではないかと思われるほどです。
ホラーとしての評価はどこか。
一つは とにかく何の話かも掴めないまま読ませてしまう筆力と どこに行き着くかわからない恐怖。
次に これは解説者の言語化で納得したのですが、読み手が擬豚化されること。
しかも そこにたいした意味はない事。
純文ホラーという扉が開かれます。
トンコは 何かのメタファーか?否、豚ちゃんであるのみ。
短編集となっており、
ゾンビとなり 仲良かった家族を取り戻したい 「ゾンビ団地」
兄と妹の 悲しきすれ違い 「黙契」
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Posted by ブクログ
和風ファンタジー小説と思って読んでいたら、和風は和風だけど、日本の女性の権利や扱いを古今の有名作品のパロディから紐解くみたいな話になっていた。
正直なところ、こういう「女性の解放」みたいな話はあまり興味はない。
声を上げたってどうにもならない気がするからだ。
子供の頃から男子が掃除をサボっても大して咎められないのに対し、女子がそうすればクラス全員がサボったと説教を受け、男女同じように気が付かないことでもそれが女であれば親族や職場から馬鹿にされる。
ごく当たり前のこと、例えば公共の場やいろんな人を対象とするポスターなどで、女性を消費するような性的な含みのあるイラストを使わないで欲しいといった声でさえ、「表現の自由の侵害」「フェミ」などと叫ばれ潰される。
ただTPOを守って欲しいだけなのに。
もちろん、男性には男性の苦しみがたくさんあるのだろう。
それでも日本の政治家も経営者もほとんどは男性で、世の中の実権は男性が握っている。
更に争いになれば肉体的な強さでは女は男に敵わない。
男を殺す女より、女を殺す男の方が圧倒的に多い。
そういう怖さ悲しさは男性にはわからないんだろうなと思うことがしばしばある。
そういうことを、普段考えないようにしていることを思い出してしまうから、「女性の解放」のような話は苦しいのだ。
この本でも心の蓋がぱかっと開いて、とめどなく嫌だったことが溢れ出てとてもしんどかった。