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北陸の田舎町の高校生・俊晴は、物理教師・日暮の策略で人力飛行機同好会に入れられてしまった。部員たった3名の弱小団体。いやいや活動を始めた俊晴だが、やがて自力で空を飛ぶ魅力に目覚めていく。一方、中央では熱狂的な支持を集める強硬派の総理の下、戦争が足元に迫っていた。頻発するテロ、そして――。熱い青春小説にしてリアルな予言性に満ちた圧倒的傑作!
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Posted by ブクログ
片田舎に暮らす「おれたちこれでいいのか」が口癖の二人の男子高校生。そんな二人は無理やり人力飛行機の同好会の設立を手伝わされることに。 折しも日本は外交に関し過激な政策を採る首相がカリスマ的支持を集め、日本は不穏な影に包まれていく。 現代の日本においてもっと話題になってもいい小説だと思いました...続きを読む。それだけこの本で描かれる日本の姿がリアルに、そして壊された日常への郷愁が切なく感じた作品です。 前半は青春小説の側面が強く、二人のやる気のない高校生が一念発起し人力飛行機制作にのめりこんでいく様子や、変わり者の顧問と徐々に信頼関係が結ばれていく様子、 また登場人物のキャラがそれぞれ立っており、彼らの日常描写が読んでいて楽しく感じられます。 しかし後半から物語の雰囲気が一転します。この本の舞台となるパラレルワールドの日本では、アジア外交で強硬派の首相がカリスマ的人気(全盛期の橋本大阪府知事くらい?)を誇ります。 拉致被害者の帰国を達成するなど、実際に成果は出しているものの、自衛隊の軍隊化など武装を進め衝突も辞さない姿勢です。 しかし、野党があまりにも弱体化していて代わりの首相や政党がなく、そのため余計にこの首相がカリスマ化されています。 話のところどころでそうした日本の不穏さが徐々に、主人公たちの日常を侵食していくのが見えるのですが、それが後半で一気に爆発します。 後半に、相次ぐ日本国内のテロで首相は非常事態宣言を出します。それは主人公をはじめ全国民に影響を及ぼし高校は解散、主人公たちは疎開を余儀なくされ色々な情報も遮断されるように。 そうした非常事態下の日本、そして国民の描写がとてもリアルで読むのが少し苦しくなるほど…。著者の雀野日名子さんの相当な取材、そして思考実験が繰り返されたのだと思います。 そしてそれがあっという間に今までの日常を壊してしまう様子に、寒気を覚えずにはいられませんでした。 救いがあるのか、なかったのか、なんとも言えないラストでしたが、それだけに読後感は心に残るものでした。 日本の国民性だとか、政治の外交部分だとか現代の日本とシンクロする部分も多く、余計にこの小説の世界観がリアルに感じられます。だからこそ、主人公たちの日常が壊され戦争に飲み込まれていく様子も身をもって感じさせられます。 もっと読まれてほしい小説だと強く思います。
なげぇ!そんでもってぶっちゃけ小説として面白くねぇ!! 文庫で550ページ、割かし厚い長編小説であるが、序盤の半分、ほんっと要らない。さらにいれば鳥人間要素も必要ない。 序盤は生意気こいてる田舎の高校生二人とマッドな理科教師、それと気弱なメガネ男子の日常生活が描かれる。 が、この部分は本...続きを読む当にどうでもいい。ただただ、長い。何度、途中で読むのを諦めようかと思うほどにテンポが悪い。無駄に説明臭い。登場人物たちにイライラする。 いやいや、それでも後半は面白くなる可能性が微レ存と思って読み進めると、序盤でこれでもかと散りばめまくった伏線になってない伏線を怒涛の勢いで回収する。 北朝鮮がミサイル撃つぞ、政府に土地が収容されたぞ、強制労働させられてるぞ、いったい俺たちの暮らしはどうなるのか! という後半。ぶっちゃけ、筆者が一番書きたい部分はここなのだろう。だったら、序盤のグダグダぶった切ってここを中心に書けばいいのに。 そしてラスト。ミサイルが飛んでくるぞ!人力飛行機を完成させてミサイルを落としに行くんだ!! 俺たちの戦いはこれからだ!! って、おい!!終わりのページ数が少なくなるに連れて、だんだん怪しくなってきたけど投げっぱなしの打ち切りラストかーい!!! 北朝鮮、中国、日本の右傾化、超能力、そして申し訳程度の鳥人間要素。詰め込みまくると面白くないんだね。よーく分かった。 とまぁ、レビュー的には散々。時間をかけて読んだ割には、時間の無駄だった!と思う作品は酷評する俺ではあるが、この作品を読みながら考えたこともないこともない。 それは、日本という国、国民性も含めて想像力に欠如している、ということ。 日本のシステムは予防保全の考え方に基づいている。事故が起きないように完璧なシステムを作り上げてからじゃないとスタートアップしない。そして事故が起こらないように普段のメンテナンスは欠かさない。 この考えは海外になく、海外では事故が起きてから、問題が起きてから対処すればいいでしょ、という事後保全の考えが根底にある。 予防保全と事後保全、予防保全は確かに平時には有効だ。問題が大きくなる前に小さなうちに事故の芽を摘み取れる。 しかし、予防保全をしているから日本のシステムは安心なんです、大丈夫なんです、という考え方に慢心して安心しきって思考を停止していないか? その想像力の欠如が生み出したのが福島の原発事故だった。原子力発電のシステムは安全なんです、と言っていたが想像を超えた天災でポポポポーン!したわけだ。 で、想像力の欠如に加えて、記憶力も欠如している。原発を再稼働させます。今度はもっと安全にします。だから大丈夫です。また同じことを繰り返すつもりマンマンです。 それに対して安心できない、まだまだ危険の応酬はただの水掛け論である。反論すべきは安全か危険かではないと思うのだが。 論点は、もし事故が起きた時の対応の仕方が重要なのだと思う。ここに想像力が必要とされている。最悪の事態を想定するということを日本人は忌避しているように思える。 もし事故が起きたらなんて不謹慎だ。そんなことは起きるわけがないから論ずる必要がない。そのように議論すら上がらない。そんな風潮どこにでも蔓延していませんか? 政治家も右翼も左翼も想像力に欠けている。ぶっちゃけ、将来のことなんてどうでもいいんでしょ、あなたたち。そう思っているからこそ何に対しても信用できない。今が良ければいいや。思考停止。 人、遠慮なければ必ず近憂あり。そんな金言を思い出した小説でした。ただし、小説として面白くなかったことは強調させていただく。
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