新津きよみのレビュー一覧
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【2004.08.04.Wed】
狂気とはどこからどこまでをいうのか。そんなことを考えさせられる作品だ。由紀子が思う妄想に近い賢一との強い結びつき。それは13歳が故の無邪気な思いで済まされるのか。由貴が最後、由紀子に乗り移り見せた執着。しかしそれも愛が強すぎた故に表れたものか。いずれにせよ、恋愛をすることによって人間は自分の中に狂気を住まわせるのかもしれない。あの人を手に入れたいという気持ちが強ければ強いほど自分の行動が見えなくなる。大抵それは理性で抑えられるのだが、この2人の「ユキ」は抑えることが出来ない。むしろこれは何ものにも揺るがせられない純粋過ぎる愛なのかもしれない。
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【2006.04.17.Mon】
幼い頃川でおぼれかけ、通りすがりの男子高校生に助けられたことのある美由紀は、その命の恩人を結婚披露パーティーに招待することにする。20年の歳月を経て、その命の恩人と周りに漂う狂気に出会うこととなる。「ひきこもり」という現代社会が産み出した闇を交えながら、人の心の脆さを描き出している。美由紀のレシピエント・コーディネーターである佳代子の「20年の歳月は人を変える―変わると言えば、ほんの三日でも人間は変わるものだわ」という言葉にこの物語は要約されている。環境が人の変化に及ぼす影響は計り知れない。それを自分なりに消化できるか、翻弄され自分を見失ってしまうかは常に紙一 -
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【2006.06.22.Thu】
日常の中で狂気に取り付かれてしまう8人の女の物語。『戻ってくる女』…人を好きになった女の執念程怖いものはない。そして強固なものはない。 『時を止めた女』…タイムカプセルをめぐって過去に取り付かれる女性。 『ぶつかった女』…心と体が入れ替わった2人の女。叙述トリック。 『口が堅い女』…人は怯え、追い詰められ、転落してゆく。自らを滅ぼす。 『彼が殺した女』…最初から最後まで緊張感のある恐怖を味あわせてくれる。 『卵を愛した女』…「愛」という文字そのものに「狂」を感じる。 『結ぶ女』…結ぶという行為を軸に男女のもつれやすさを描く。 『猫を嫌う女』…過去のトラウマの根 -
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【2006.07.26.Wed】
学生時代に「ミス・リップスティック」に選ばれた美貌の持ち主高倉葉子。彼女の男友達が続いて殺される。そこにもう1人の高倉葉子の存在が浮かび上がってくる。代理出産、セクシュアルハラスメント、夫婦別姓など今も変わらずある社会問題を据えつつ、ミステリーは進んでゆく。いくつもの展開を期待させながら、最後には納得のいく結末を残している。女性だからこそ描ける作品。人を犯罪へと走らせるものは容易に言葉で表せるものばかりではない。嫉妬、恨み、復習。いくつもの思いが交錯し、練られ、発酵され、自分の中で犯罪という形につくられてゆく。そのときの女性の心理が細やかに描かれ、自らも手に汗 -
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【2006.07.28.Fri】
夫の暴力に耐え切れず、由布子は家を出る。手にあるのは偶然手に入れた拳銃。逃避行にはジムのインストラクター逸美が同行することになる。2人はそれぞれ心の奥底にうごめく衝動を抱え、拳銃の力に魅せられる。また学生時代由布子と付き合っていた良介。かれは警察音楽隊に属していた。人の心にはどうしてもぬぐえない矛盾が少なからず存在しているのであろう。恨みや後悔、そして今の自分。口で説明することは出来ても、果たしてそれが真実なのか。そんな人の暗い深層心理を描き出しつつも、時に流れてくるクラリネットの音色。この小説は音楽で人々を優しく包んでくれる。音楽に触れたとき感じるものは、た -
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駆け出しのミステリー作家である主人公に、ファンレターが2通届いた。1通は中学時代の先輩。もう1通は「愛読者」を名乗る謎の人物。「愛読者」とは一体誰なのか。主人公は、差出人不明の手紙に振り回される。
う〜ん。今回も、ストーリーの展開はよかった。嫉妬とか虚栄心とかで、人はこんなにもひどい仕打ちをしたりするんだと、怖くなった。怖いのは、幽霊とかおばけじゃなくて、人なんだなと思う。
途中までは、「どうなるんだろう?」とドキ×2したし、「人って怖い」ってすごくゾォっとしたんだけど、最後らへん、特にオチがいまいち。パンチにかけるっていうか、無理やり勢いで書き上げた感じがする。推敲しきってないのでは?と -
購入済み
期待外れでした
新津きよみさんの作品はじわりとした怖さや独特の雰囲気があって大好きです。ですがこの作品はあまりに終わりを急いだ感が伝わってきてがっかりしました。作者が後半疲れてしまったのかなと…。平凡な作品です。