榎本憲男のレビュー一覧
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榎本憲男さん初読みです。異色の経歴で、映画館支配人、プロデューサー、脚本家、監督経験を経て、自作映画のノベライズで作家デビュー。2016年、本作が大藪春彦賞候補となっています。
復興五輪を掲げ、建設が進む新国立競技場。謎の老人と中谷との出会い、老人が開発した市場予測システム「エアー」、巨額の利益、中谷の福島帰還困難地域を経済自由区とする政府への要求‥。近未来的経済サスペンス小説と呼ばれる所以も頷けます。
不思議な老人は一体何者なのか、何を企んでいるのか、破綻した経済や資本主義は変えられるのか、多くの謎とともに物語が進みます。そして、経済に疎い私のような者にも、中央銀行制度、税徴収や再 -
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新興宗教の元信者でマインドコントロールが疑われる容疑者がアジア開発投資銀行の鷹栖祐二を視察した事件を国家総合安全保障委員会(NCSC)の井澗紗理奈と弓削啓史が調査する中で日本の今後を左右する国家的背景が明らかになっていくという長編サスペンス。
マインド・コントロールやその解除法、脳科学、仏教など様々な知識が織り込まれ、勉強にもなり、考えさせられる、読み応えのある小説だった。
ミステリーとしてのオチも思いもよらないものだったが、その具体的方法については本当にそんなことができ得るものなのかとちょっと疑問に思った。
ストーリーのカギを握る国家的プロジェクトについて、本書の主要登場人物たちはおしなべて -
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東アジア一帯の安全保障が日増しに厳しさをましている中、自衛隊が自衛軍と改められ、防衛のみならず経済、エネルギー、食糧、テロ対策など幅広い分野での安全保障強化のため内閣府に設置された国家総合安全保障委員会(NCSC)。
NCSCの兵器開発セクションで脳科学専門の井澗とテロ対策セクションの弓削は、新興宗教のマインドコントロールが疑われるある殺人事件を調査し始める。調査が進むにつれて明らかになる事件の背後に隠されたある恐ろしい謀略とは‥‥。
面白い!
500ページ超えの結構なボリュームですが、一気に読み終わりました。
マインドコントロールと洗脳、宗教の功罪、科学への盲信とその政治利用、経済発展か -
Posted by ブクログ
『真行寺弘道』や『相棒はJK』のシリーズで知られる榎本憲男の新たなシリーズ(?)作品。
これまでの他のシリーズでも特徴的なキャラクターが多かったが今回も面白い。
捜査一課に所属しながら、それなりに知られる映画監督兼女優として活躍している主人公で、刑事としての推理力、監督としての想像力、そして女優としての演技力を駆使して、ある事件を探っていく。
その時その時の時事問題を扱った作品が榎本憲男作品には多いが、今回はLGBTQ問題と中国、アメリカの世界の覇権を巡る争いの中で日本がどちらに従うのかというセンシティブな問題についても触れられている。
相変わらずの面白さ。そして知的好奇心も満たしてくれる作品