あらすじ
あの人は資本主義をやり直そうとしている!
新国立競技場の工事現場で働く中谷は、不思議な老人と出会う。老人はいかにも肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、現場を去る直前、翌日の競馬の大穴馬券を中谷に託していた。老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券は見事的中する。
5000万円の現金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉窓口となるよう、中谷は依頼される。
「エアー」は世の中に渦巻く人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするシステムで、それは政府が握るビッグデータと結びつくことで、国家の予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものだった。
謎の老人の代理人として、政治家や官僚たちと交渉を重ねる中谷だったが、「エアー」供与する見返りとして、福島の帰還困難地域を経済自由区として、自分たちに運営を任せるという要求を突きつけるのだった。
現代日本が直面する難題をつまびらかにし、圧倒的なスケールで描く近未来経済サスペンス小説。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
感情を数値化し、それを金融工学と組み合わせることで、ほぼ完璧な市場予測を可能にするシステム「エアー2.0」。その運用益をもとに、被災地・福島で独自通貨を発行し、投資を行う「一般財団法人まほろば」を立ち上げる。SF的なテーマが、震災復興と結びついていく展開がとても面白く、もう一つの現実を見ているような拡張現実的な世界観に引き込まれた。
Posted by ブクログ
素直に・・・面白かった。
脚本家、映画監督などの経歴を持つ作家さん。
面白くない訳が無い。
続編の『エアー3.0』も必ず読む。
ご馳走様でした・・・
Posted by ブクログ
工事現場を辞めるおっさんから貰った馬券は大金を産んだ。すると人々の感情を読むシステムを日本政府に売り込む代理人になれと言われる。
エアー3.0という新刊を見かけた。面白そうと思ったら前作があるそうなので読んだら、大傑作だった。近未来政治経済改革小説。9年前にこんな小説出てたのか!
Posted by ブクログ
過去1が出ました。
私がこの物語の主人公の立場になった時、思ったり願っている事の、ほぼ全てを作中でやっている。
そこで起こるであろうトラブルもその対処法も、全てが理想と言わざるを得ない。
激しさの中にある優しさにも、とても満たされました。
超最高でした。
Posted by ブクログ
榎本憲男『エアー2.0』小学館文庫。
近未来経済サスペンス小説。榎本憲男の作品で唯一未読であった。
スケールが大きくて、非常に面白く、読後に爽快な気分を味わった。資本主義をリセットするという着想が凄く、福井晴敏の『人類資金』にも匹敵する傑作だと思う。
今や資本主義社会に於いて、実体経済は完全に崩壊し、ネット上の金融取引や権力を背景に巨額の金を手にする者が勝者となっている。その結果、経済格差は拡大し、汗水たらして働く者への見返りはどんどん目減りするアンバランスな社会が形成された。さらには復興五輪など掛け声ばかりで、国の体面を保つために新型コロナウイルス感染禍であるにも関わらず、東京五輪を強行開催し、原発事故の後処理などお座なりになっている。本作は、そんな腐った日本を鋭く抉り、一石を投じる作品だった。
東日本大震災の福島第一原発事故後、東京オリンピック開催に向けた新国立競技場の工事現場で働く中谷は肉体労働には不向きな不思議な老人と出会う。やがて老人が工事現場をクビになると、最後に10万円で競馬の大穴を狙い、その馬券を中谷に託す。その馬券は見事的中し、中谷は5,000万円を手にする。
そんな中谷の前に再び姿を現した老人は、中谷に老人が開発した市場予測システム『エアー』の代理人として、政府と交渉することを持ち掛ける。『エアー』は世の中の人間の感情を数値化し、完璧な市場予測を行い、政府に国家予算を潤す巨額の利益をもたらすのだ。
政府に『エアー』を提供する見返りに利益の15%を手にする契約を結んだ中谷は、福島の帰還困難区域を経済自由区として様々な事業を立ち上げ、独自の通貨『カンロ』を流通させる。
本体価格770円(古本100円)
★★★★★
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内容は現在の日本におけるパラレルワールドのようなもので、この作品内でも国が抱える問題や予定されている行事が行われていく。
ちょうど2020年のオリンピック前後を舞台としているので、まさに今読むべき作品だと思う。
エアー2.0の世界ではコロナは流行らないが、もっと大変なことが起こり始める。そして面白いことが。
とにかく登場人物の描き方が素晴らしく、中谷やおっさんの掛け合いをもっと見ていたかったし、市川という女性がどんな容姿をしているのか非常に気になる。
作者によると続編エアー3.0の執筆も考えているようで、出版されたら誰よりも先に買って読もうと思う。
Posted by ブクログ
とても面白い!かなり挑戦的な帯だったからどうかと思ったけど、とても満足。社会の「空気」を読んで将来を予言するシステム「エアー2.0」の話。ただし、システムどうこうというよりはそれを用いる、あくまで用いる「人」やそこから先の可能性の話。ラスト30Pの展開はちょっと強引な気もしたけど、主人公の設定も物語もぶれずに進んで満足、面白かった。
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「巡査長 真行寺弘道」が面白かったので、こちらも読んでみた。すぐに物語に引き込まれて一気読み。
今の日本人が欲しているストーリーを紡ぎ出している。
この痛快さを堪能できて幸せを感じる。
Posted by ブクログ
新国立競技場の工事現場で出会ったおっさんと中谷は、おっさんが馬券であてた資金を元に福島で地域復興のビジネスを起こす。おっさんの開発したシステムを政府に提供して、そこから上がってくる資金を様々なスタートアップ等に投資して、帰宅困難地域に人の流れを呼び戻し、福島発のお金の流れを作り出す。既得権益を握る政府との認可をめぐるやり取りや地域マネーの経済圏をつくり、どんどん投資をして事業を前にすすめて行く中谷たちのスピード感が面白い。
次回作も期待
3.0が話題になっていたので調べてみたら、前編があったので先に読んでみました。
テンポの良い展開で一気に読み進められます。
3.0も読んでみたいと思います
Posted by ブクログ
榎本憲男さん初読みです。異色の経歴で、映画館支配人、プロデューサー、脚本家、監督経験を経て、自作映画のノベライズで作家デビュー。2016年、本作が大藪春彦賞候補となっています。
復興五輪を掲げ、建設が進む新国立競技場。謎の老人と中谷との出会い、老人が開発した市場予測システム「エアー」、巨額の利益、中谷の福島帰還困難地域を経済自由区とする政府への要求‥。近未来的経済サスペンス小説と呼ばれる所以も頷けます。
不思議な老人は一体何者なのか、何を企んでいるのか、破綻した経済や資本主義は変えられるのか、多くの謎とともに物語が進みます。そして、経済に疎い私のような者にも、中央銀行制度、税徴収や再配分などの国家機構など、勉強になる面が多々ありました。
既存経済だと、新規に事業を興こす際、銀行は貸す時は担保を取り、成功すれば金利を、失敗すれば担保を得るのですが、こんな借金のリスクがなく、熱意・創意と能力次第で、次々と新しい付加価値を生み出せるチャンスのある世界は、魅力的です。
終末に諸々の疑問が残るのも事実ですが、やはり被災地の復興や日本が抱える諸問題解決は、そう簡単ではないでしょう。
9月に続編が出るとのことですが、どんな展開になるのでしょう‥。難しいことは解りませんが、それでも、心から意欲と能力のある人が、もっと活躍できる社会になったらいいなあと願うばかりです。
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北上次郎氏(RIP)推奨。読みやすい文章と意表をつくストーリー展開。登場人物の姿がもっと具体的に見えると、さらに魅力的だったと思う。しかしそれを差し置いても国産小説としては高レベル。他の著作も読んでみたい。3.8
Posted by ブクログ
とにかく盛り沢山!
技術、経済、政治と多方面で考えさせられる。
最初はSF小説なのかな、という印象で読み進めていたが、次第に上記の面が浮き彫りになっていく。
自分はエアー2.0を手に入れたら、何に使うだろう?ろくでもないことになりそう。
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東日本大震災の後、東京五輪の前、そんな時代に書かれた一冊。テーマはタイトルどおり「空気を読む」。
世の中の空気を読むことで作り出したものを、世の中の空気を読まない破天荒な方法で還元していく。
非現実的な夢物語と言ってしまえばそれまでかもしれないが、単純明快なビジョンに魅かれたのは確か。
空気を読むって何なんだろう。
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詐欺かなんかの話か?と思ったら違いました。
主人公が淡々としてて、
とんでもないことをしているわりには、
スムーズに話が進んでいきました。
人間の感情を数値化するというのが面白かったです。
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題名であるエアー2.0、これが主題かと重いきやこれは物語のベースのベース部分でしかなく、主題は福島の復興、もしくは復興を題材にした資本主義経済の再構築だった。
ディープラーニングの研究が進んでいる今、エアー2.0の設定は決して絵空事ではないと思う。
これもしも映像化されるとしたら、主人公は山田孝之しか思いつかないなぁ。あと、こんな話がもしも現実で進行したら、TOKIOが黙ってないな。
Posted by ブクログ
こちらも出張のお供に。
この著者も初めて読みます。
読んだ感想は、「何か石田衣良っぽい感じの小説」。
文章が重すぎず、ライトな感じで、
でもストーリーはその後の展開が気になり、
どんどん読み進めていくことができる感じ。
テーマも自分の好みに合致していて、
楽しんで読むことができました。
簡単にストーリーを紹介すると、
工事現場で出会ったおじいさん(おっさん)に万馬券を渡され、
突然お金持ちになった主人公が「エアー」という空気を読むマシンを使いながら、
原発事故で廃れてしまった福島を何とかしようと奮闘するお話。
資本主義の次のシステムに関する記述や
主人公が色々な本を読んで少しずつ賢くなっていく成長シーンなどは、
個人的にはドンピシャのシーンでした。
特に、おっさんからの読書リストは著者にもっと公開してもらいたかった!
ライトな小説な割には、経済に関して深い議論がなされていて、
理解できないくても十分小説自体は楽しめますが、
理解出来ればもっと楽しめるつくりになっていると思います。
(自分の理解度は50%くらい!?)
続編も出てきそうな終わり方でしたので、次も楽しみです。
Posted by ブクログ
TOKYO2020 東京オリンピックの年に読んだ。
エアーがおとぎ話にでてくる魔法のようで、都合良すぎる。狂言回しのおっさんもしかり。結局は魔法で作った金で好き放題と評するのは意地悪かもしれない。
スピード感ありサラッと読め、痛快である。
福島第一原子力発電所のこと、東京オリンピックのこと、官僚のこと、政治のこと…。イマ抱えている問題を題材にうまくまとめている。
コンピューターやガジェット類が登場こそするが、最近の骨太のSci-Fiに比べると一昔前の古さが否めない。そこは気にせずに読むようにすると良い。
ただ、これをして暗号通貨を予言したとは言い難い。
Posted by ブクログ
エアーというシステムは、正直そこまで話の本筋で関わることはなく、あくまでも主人公の財源として動いていることが多かった。
とはいえ、新しい貨幣がどのように広がるのか、どのように社会に影響を与えていくのかというところは近年の電子通貨の広がりともリンクして、興味深かった。