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あの人は資本主義をやり直そうとしている!
新国立競技場の工事現場で働く中谷は、不思議な老人と出会う。老人はいかにも肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、現場を去る直前、翌日の競馬の大穴馬券を中谷に託していた。老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券は見事的中する。
5000万円の現金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉窓口となるよう、中谷は依頼される。
「エアー」は世の中に渦巻く人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするシステムで、それは政府が握るビッグデータと結びつくことで、国家の予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものだった。
謎の老人の代理人として、政治家や官僚たちと交渉を重ねる中谷だったが、「エアー」供与する見返りとして、福島の帰還困難地域を経済自由区として、自分たちに運営を任せるという要求を突きつけるのだった。
現代日本が直面する難題をつまびらかにし、圧倒的なスケールで描く近未来経済サスペンス小説。
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Posted by ブクログ
榎本憲男『エアー2.0』小学館文庫。
近未来経済サスペンス小説。榎本憲男の作品で唯一未読であった。
スケールが大きくて、非常に面白く、読後に爽快な気分を味わった。資本主義をリセットするという着想が凄く、福井晴敏の『人類資金』にも匹敵する傑作だと思う。
今や資本主義社会に於いて、実体経済は完全に崩壊し、ネット上の金融取引や権力を背景に巨額の金を手にする者が勝者となっている。その結果、経済格差は拡大し、汗水たらして働く者への見返りはどんどん目減りするアンバランスな社会が形成された。さらには復興五輪など掛け声ばかりで、国の体面を保つために新型コロナウイルス感染禍であるにも関わらず、東京五輪を強行開催し、原発事故の後処理などお座なりになっている。本作は、そんな腐った日本を鋭く抉り、一石を投じる作品だった。
東日本大震災の福島第一原発事故後、東京オリンピック開催に向けた新国立競技場の工事現場で働く中谷は肉体労働には不向きな不思議な老人と出会う。やがて老人が工事現場をクビになると、最後に10万円で競馬の大穴を狙い、その馬券を中谷に託す。その馬券は見事的中し、中谷は5,000万円を手にする。
そんな中谷の前に再び姿を現した老人は、中谷に老人が開発した市場予測システム『エアー』の代理人として、政府と交渉することを持ち掛ける。『エアー』は世の中の人間の感情を数値化し、完璧な市場予測を行い、政府に国家予算を潤す巨額の利益をもたらすのだ。
政府に『エアー』を提供する見返りに利益の15%を手にする契約を結んだ中谷は、福島の帰還困難区域を経済自由区として様々な事業を立ち上げ、独自の通貨『カンロ』を流通させる。
本体価格770円(古本100円)
★★★★★
Posted by ブクログ
ハードカバー版も含めて、レビュー数はすごく少ないけれど、とても読ませる作品でビックリ!
東京オリンピックと、フクシマを重ね合わせながら、借金をエネルギーとして生き続ける日本からまずは福島を再生させようとする話。
その登場人物は、肉体労働者として日銭を稼ぐ中谷とオッサンの迷コンビ。
でも、この二人のキャラクターが良すぎて、チートコンピューターであり題名でもある「エアー2.0」が霞むほど。
さてさて、このエアーが面白い。
空気を読む、という意味で、人々の感情の流れまで数値化し、演算処理を可能にするという、まさにチートコンピューター。
もちろん、非現実的ではあるのだけど、人の心理を数値化する、なんてことは身近に山ほどあるわけだから、目の付け所としては楽しい。
サスペンスというより、SF要素だけど。
クライマックスで、エアーがどこに行き着くのか、オッサンが何者なのか、明かされてはいくのだけれど、どんな窮地に陥っても、不思議と絶望感がない。
オッサンが中谷を見出した意味は、恐らく読者にはちゃんと伝わっている。
そうして、本を閉じた時にもう一度、ああ、なるほどと味わって欲しい。
もっと読まれるべき作品!
Posted by ブクログ
おもしろい作品だった。福島県の帰還困難区域を特別自治区にする。そして、福島を復興させる物語。
新国立競技場の工事現場で働く高卒の中谷は、不思議な老人と出会う。この老人が謎の男であり、日本の仕組みを変えようとするのだ。
老人はいかにも肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、現場を去る直前、翌日の競馬の大穴馬券を中谷に託していた。
老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券の10万円は見事的中する。
新国立競技場の基礎に爆弾を仕掛けたという予告が入った。そして、起爆させたくなければ、競馬で2頭の連番を勝たせろと言う。
オリンピック手前で、日本の首相は原発事故があっても、日本は安全だと言って誘致した。
それが、国立競技場の建設現場で爆破事故が起これば、日本の面目に関わると判断し、爆破予告犯人の言うことを聞き、その2頭を勝たせるというインチキをするのだった。
結果として、中谷が老人からもらった馬券が万馬券になるのだった。
5000万円の現金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉窓口となるよう、中谷は依頼される。
「エアー」は世の中に渦巻く人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするシステムで、それは政府が握るビッグデータと結びつくことで、国家の予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものだった。その利益の15%が、老人の作った財団法人まほろばに振り込まれることになる。
5000万円だった原資が、どんどん増えて何兆円にも増える。その財団法人まほろばの代表が中谷なのだ。とにかく数十兆円をこの福島特別自治区に投入するのだった。
金がかかる。リスクが高い。前例がない。時期尚早だと言うような理由で拒絶された事業を応援しますと言う。
老人に、何をしたいのだ。と言われて戸惑う中谷。そしてそのお金を自分の郷里である福島の復興にお金を注ぐのだった。ただしそれはカンロと言う暗号通貨だった。福島の復興のアイデアを出せと言って、一大キャンペーンをはり、そしてそのアイデアにお金を投資するのだ。
まず帰還困難地区を若手官僚たちを動かして、政治家を動かす。土地を買い集め、廃校となった中学校を本部として、インキューベーションセンターを作り、風力発電、土を使わない農業、原発事故を起こした廃墟のツーリズムなどに投資する。そして、地域経済をカンロ経済圏を作る。
「へこたれないぜ 繁栄するぜ 豊かになるぜ 成長するぜ 生まれ変わるぜ 突き抜けるぜ 開くぜ」と掛け声はいい。
中谷は、アメリカ大統領に、2兆円の個人献金をして、大統領に友人と呼ばせ、福島のまほろばの本部で食事会までする。
税金の問題、社会保障の問題など独立王国のような様相を示すが、アメリカ大統領と仲良くなることで切り抜けていく。ちょっと、ずさんであるが、着想は面白い。
「原発そのものはいまから思えば非合理だったけれど、非合理なものを選択することが合理的だった時代もあった。でも、今は、新しい合理性を探さなければならない」
しかし、エアーは原発がないと動かないと言う矛盾を抱える。そして風力発電、太陽光、地熱では原発の電力を賄えないのだ。そこに中谷は焦るのだった。
そして、福島第2原発に、あろうことか隕石が落ちてしまう。それでも、
いやはや、なんという半未来小説。おもしろく、楽しめました。こう言う作品がもっと生まれていいと思った。復興とは、アイデアとシステム作りだ。
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小説・文芸
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