榎本憲男のレビュー一覧
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ネタバレ自由って、何でしょうね。真行寺さん。
お金を払って、得た自由は本当の「自由」なのか。
国の考える自由とは、本当の自由なのか。
とある議員殺害事件から紐解かれる、国家による全国民家畜化計画。
本当はそんな名前ではないが、そう言わざるを得ない計画だと感じる。もしかしたら現実でもすでに計画は進行しているかもしれない。
国にDNAを把握され、個人の嗜好、能力、将来の全てにレールを敷き、無駄な労力を費やして実らない努力を削減すると言う。
病気もDNAをつぎはぎして発症させないようにする、素晴らしい計画だと国は言う。
それを国は「全国民が安全に豊かに過ごせる素敵な未来」と謳う。
とても素晴らしい。同性愛者、潜在的な犯罪者、先天的障碍者は全員処分される素敵な選民国家になるだろう。
こんな未来がないことを祈る。 -
Posted by ブクログ
久しぶりの日本警察小説
53歳で巡査部長(ほぼ平社員らしい)という階級で、バツイチ、オーディオ狂、署でも浮いてる自由人な主人公の警察小説
一章でスーパーハッカーの黒木と出会ったあたりで「また、ハッカー出てきた」とやや構えてしまった。
「ミレニアム」や「パードレはそこにいる」「フェイスレス(から続く警察物のシリーズ)」に見られる「スーパーハッカー万能大解決」な展開になったら嫌だなぁと…不安になったが、結果的に主人公の魅力に目を向けて読むことができた。
ハッカーの得た情報はヒントでしかなく、手段としては違法なので正式な証拠としては使えない分、裏を取ることに苦心したり根回しをしたり言い訳を考えたりと頭を巡らせて捜査を進める姿は良かった。別の意味で何でもできるスーパーハッカー黒木も良さげ
二人が音楽好きの要素もまた、アナログ派の真行寺とデジタル派の黒木の対比で面白い。味わう様に音楽を聴く、楽しむ感じが日々消耗品の様に聴く私にとっては羨ましい。
ちなみにジョージ・オーウェルの「1984年」のネタバレがありますのでお気をつけください。 -
Posted by ブクログ
ハードカバー版も含めて、レビュー数はすごく少ないけれど、とても読ませる作品でビックリ!
東京オリンピックと、フクシマを重ね合わせながら、借金をエネルギーとして生き続ける日本からまずは福島を再生させようとする話。
その登場人物は、肉体労働者として日銭を稼ぐ中谷とオッサンの迷コンビ。
でも、この二人のキャラクターが良すぎて、チートコンピューターであり題名でもある「エアー2.0」が霞むほど。
さてさて、このエアーが面白い。
空気を読む、という意味で、人々の感情の流れまで数値化し、演算処理を可能にするという、まさにチートコンピューター。
もちろん、非現実的ではあるのだけど、人の心理を数値化する、なんてことは身近に山ほどあるわけだから、目の付け所としては楽しい。
サスペンスというより、SF要素だけど。
クライマックスで、エアーがどこに行き着くのか、オッサンが何者なのか、明かされてはいくのだけれど、どんな窮地に陥っても、不思議と絶望感がない。
オッサンが中谷を見出した意味は、恐らく読者にはちゃんと伝わっている。
そうして、本を閉じた時にもう一度、ああ、なるほどと味わって欲しい。
もっと読まれるべき作品! -
Posted by ブクログ
ネタバレとてもおもしろく、読みやすかった。
エアー2.0と同じ作者と知り納得。こちらの作品も天才が活躍するので、その技量にはスカッとさせられた。
53歳の真行寺と若者のハッカー黒木。この歳の差もまたおもしろい。
以下ネタバレ【覚え書き】
真行寺は天才ハッカーの黒木と知り合い、介護ロボ『お孫さん』の奇行の原因を探る。黒木は簡単にPCを乗っ取り、パスワード問題も簡単に解決させてしまう。
そして尾関議員殺害事件にたくさんの疑問があり、真相究明に取り掛かる真行寺。突き詰めていくと背景には公安と政治家が絡んでいた。
あまりにビッグな正体に、直属の上司には揉み消されてしまう。
ただこのままでは終われない。最後に2人はサイトに証拠を投稿する。
そして真行寺は監察に呼び出しをされ、物語は終了。
なんともスッキリしない終わり方で、結末が分からないため⭐︎マイナス1で。
それ以外はおもしろかった!
特に黒木がいとも容易くPCを乗っ取り、データを集めていくところは爽快だった。
黒木のキャラクターもさっぱりしていて好感。
自由とは何かを2人で議論している場面が度々出てくるが、繰り返される度に黒木はただのハッカーではない気がしてならない。
黒木(これも偽名)は何者なのか、真行寺はどうなったのか、この後の展開を教えてほしい!
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おもしろい作品だった。福島県の帰還困難区域を特別自治区にする。そして、福島を復興させる物語。
新国立競技場の工事現場で働く高卒の中谷は、不思議な老人と出会う。この老人が謎の男であり、日本の仕組みを変えようとするのだ。
老人はいかにも肉体労働には向いておらず、仕事をクビになるが、現場を去る直前、翌日の競馬の大穴馬券を中谷に託していた。
老人が姿を消した直後、工事現場では爆破事件が起こり、翌日馬券の10万円は見事的中する。
新国立競技場の基礎に爆弾を仕掛けたという予告が入った。そして、起爆させたくなければ、競馬で2頭の連番を勝たせろと言う。
オリンピック手前で、日本の首相は原発事故があっても、日本は安全だと言って誘致した。
それが、国立競技場の建設現場で爆破事故が起これば、日本の面目に関わると判断し、爆破予告犯人の言うことを聞き、その2頭を勝たせるというインチキをするのだった。
結果として、中谷が老人からもらった馬券が万馬券になるのだった。
5000万円の現金を手にした中谷の前に、再び老人が現れ、彼が開発した市場予測システム「エアー」の代理人として、日本政府との交渉窓口となるよう、中谷は依頼される。
「エアー」は世の中に渦巻く人間の感情を数値化して、完璧な市場予測を可能にするシステムで、それは政府が握るビッグデータと結びつくことで、国家の予算を潤すほどの巨額な利益をもたらすものだった。その利益の15%が、老人の作った財団法人まほろばに振り込まれることになる。
5000万円だった原資が、どんどん増えて何兆円にも増える。その財団法人まほろばの代表が中谷なのだ。とにかく数十兆円をこの福島特別自治区に投入するのだった。
金がかかる。リスクが高い。前例がない。時期尚早だと言うような理由で拒絶された事業を応援しますと言う。
老人に、何をしたいのだ。と言われて戸惑う中谷。そしてそのお金を自分の郷里である福島の復興にお金を注ぐのだった。ただしそれはカンロと言う暗号通貨だった。福島の復興のアイデアを出せと言って、一大キャンペーンをはり、そしてそのアイデアにお金を投資するのだ。
まず帰還困難地区を若手官僚たちを動かして、政治家を動かす。土地を買い集め、廃校となった中学校を本部として、インキューベーションセンターを作り、風力発電、土を使わない農業、原発事故を起こした廃墟のツーリズムなどに投資する。そして、地域経済をカンロ経済圏を作る。
「へこたれないぜ 繁栄するぜ 豊かになるぜ 成長するぜ 生まれ変わるぜ 突き抜けるぜ 開くぜ」と掛け声はいい。
中谷は、アメリカ大統領に、2兆円の個人献金をして、大統領に友人と呼ばせ、福島のまほろばの本部で食事会までする。
税金の問題、社会保障の問題など独立王国のような様相を示すが、アメリカ大統領と仲良くなることで切り抜けていく。ちょっと、ずさんであるが、着想は面白い。
「原発そのものはいまから思えば非合理だったけれど、非合理なものを選択することが合理的だった時代もあった。でも、今は、新しい合理性を探さなければならない」
しかし、エアーは原発がないと動かないと言う矛盾を抱える。そして風力発電、太陽光、地熱では原発の電力を賄えないのだ。そこに中谷は焦るのだった。
そして、福島第2原発に、あろうことか隕石が落ちてしまう。それでも、
いやはや、なんという半未来小説。おもしろく、楽しめました。こう言う作品がもっと生まれていいと思った。復興とは、アイデアとシステム作りだ。 -
Posted by ブクログ
エアー3.0の表紙に惹かれ手に取り、その前作の2.0から読み、世界観と物語の上手さ、イデオロギーの強さに楽しみ、
同じ作家で評価の高さから手にとってみる。
タイトルが凡庸オブ凡庸で、正直期待してなかったのだが、
警察小説としての、ミステリーの強さや、警察組織のうんぬんなんてレベルではない、
・出世を捨てることは自由なのか
・情報社会で、情報を捧げ管理されることは楽だが、不自由なんて言うが、それだって楽に生きられれば良いのではないか
・安全と健康と自由と管理と不自由と欺瞞と正義
ミステリーとしての公平さで言えば0点。
主人公の出世は捨てたが操作能力は高いという設定も、店員と客を間違えて傲慢な態度でものを聞いているという導入から既に瓦解。
捜査のキモはほとんど他人任せのハッキング。
だがまったく本を放り投げる気にならず、むしろどんどん惹かれていく。
エンタメとしての強さと、考えさせられるイデオロギーへの一石に、最後まで一気にいける。
ラストがまた凡庸なのだが、これも極めてエンタメ映画的。ラストで読者のド肝を抜きたいわけではなく、むしろ、そのイデオロギーについての議論を待っているのかと。
現在4作シリーズ出て、パタリと止まっているが、これは4作読んでみないと。
サクサク読める決して軽くない良エンタメ。