榎本憲男のレビュー一覧
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榎本憲男『アクション 捜査一課 刈谷杏奈の事件簿』幻冬舎文庫。
とうとう警察小説にもジェンダーの波が来たようだ。
榎本憲男が得意とするITをベースに変わり種の女性刑事・刈谷杏奈とうだつの上がらない内藤刑事が自殺と思われた事件の真相に迫る。
主人公の捜査一課の刑事・刈谷杏奈は趣味で映画製作と女優業に励む変わり種。そんな刈谷に命ぜられた捜査は山奥で女装した状態で発見された男性の首吊り事件。上層部は自殺を主張するが、コンビを組んだ刈谷と所轄刑事の内藤は他殺の疑いを捨て切れずに捜査を進める。
ジェンダーに関する問題発言で炎上中の女性議員と亡くなった男性との繋がりを掴んだ刈谷と内藤は女性議員を罠 -
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もともと金融資本主義へのアンチテーゼを期待して読んだので、巡査長 真行寺弘道シリーズのスピンオフとは知らず、最初のころは語り手に面食らった。一応 途中で関係者の紹介はあるのでストーリー理解はできたが、シリーズ読んでいないのでキャラクターへの思い入れができず残念。小説としては終盤の盛り上がりに欠けたので星3つ。
金融資本主義へのアンチテーゼとして、普段使う良い物の価値に目を付けているのだが、絵画等の芸術嗜好品に比べてビジネス面でのうれしさがあるのか?という作中での疑問への回答がないまま。何となく売れたみたいだけど、良いものには金を出すという金持ち相手の商売に留まるアイデアで残念。有松搾りを欧州で -
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DASPAシリーズ第2弾は、巡査長真行寺弘道シリーズの「インフォデミック」と完全にリンクする、吉良サイドの物語。
コロナ禍の日本。自粛を呼びかける政府と、自由を盾に逆らうものたち。インフォデミックが自由陣営を描いていたのに対して、こちらはそういう者たちを国としてどういなしていくのかという目線が主体。
そして、真行寺と吉良の自由を巡っての口論が見もの。この闘いは真行寺の方に分があるような終わり方をするが、私には彼の理屈どうにも子供染みたものにしか思えない。自由を振りかざす人間に圧倒的に欠けているのは社会に属しているという自覚。ホント、どっか勝手にコミュニティを作って出て行って欲しいわ。
吉良 -
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巡査長真行寺弘道シリーズ第五弾。
新型ウイルスが世界を席捲する2020年、自粛ムードが蔓延し、自粛警察という言葉があちこちで語られ出した頃、警察は大きなロックフェス開催の計画を察知する。課長の水野から首謀者のミュージシャン浅倉マリの説得を任されるが、そこには白石サラン関わっていた。自粛なんてクソ喰らえ、自由を守れと聞く耳を持たないサランに心の底で同調し、説得しきれない真行寺。そして、フェス当日、真行寺はその裏に隠された大きな陰謀に気づく。。
コロナパンデミックの中での自粛ムードへの疑問を投げかける本作。サランのイキった態度や公僕である真行寺の弁えない態度にうんざりする。
マリやサランの自 -
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巡査長真行寺弘道シリーズ第三弾。
17歳聾唖少女の誘拐事件。少女の母親と接触した真行寺はこの事件にどことなく違和感を覚える。
それを裏付けるかのような誘拐犯からの要求は前代未聞のものだった。そして少女は無事保護され事件は解決したかに見えたが。。
今回のテーマはフェミニズムと生殖医療。
過激なフェミニスト評論家と真行寺との直接対決は真行寺の完敗となったものの、今回は彼の考えに共感。生殖医療に人間が、科学がどこまで手を加えていいのかという問題。法ではなく倫理の問題となると途端に曖昧になる。難しい。
何より自由を愛する真行寺が、色々な経験をする中で、考えが少しずつ変容していくところや、自分の矛盾 -
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巡査長真行寺弘道シリーズ第二弾。
インド人料理人によるインド人旅行者殺人事件。その遺体発見現場に偶然居合わせた真行寺が事件の真相に迫る。そこにはインド社会の宗教の問題や厳しいカースト制度が深く関わっていた。そして北海道のインド人コミュニティである研究所で密かに行われている完全自動運転システムの実証実験。
功利主義に則ったプログラムと、その先に隠されたある計画とは。
今回も真行寺の思想が全開。何より個人の自由を重んじる姿勢は相変わらず青臭いほど。だけど、「善か正義か」では正義を選んだはずなのに、今回のラストシーンで彼が撮った行動は正義と言えるのか疑問。あまりに独善的かつ情緒的で、刑事としてあ -
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榎本憲男『相棒はJK』ハルキ文庫。
ちょっと変わった面白い設定の警察小説。榎本憲男の『巡査長 真行寺弘道シリーズ』に比べると、余りにもライト過ぎるし、プロットにひねりも無く、面白くない。
警察大学校を首席で卒業したキャリアのエリート刑事である鴨下俊輔警部補が警視庁刑事部長直轄の刑事部捜査第一課特命捜査係に異動する。この部署は警視庁の使えない刑事の吹きだまりだったが、何故か数多くの事件を解決していた。そして、鴨下がこの部署でコンビを組むことになったのは、数々の難事件を解決してきた17歳の現役女子高生で特別捜査官の花比良真理だった。
母親がアイヌのシャーマンという花比良真理は2歳の時から刑事 -
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ネタバレカースト制度という、知っているようでよく知らないテーマが描かれていてとても興味深かった。全体的に理屈っぽくて説明的な作風という印象だったけど、主人公が個性的で型破りで見ていて飽きない。
カースト制度以外の部分(自動運転自動車の開発、才能、ロック、日本での身分や差別、など)もかなり盛りだくさんだけど、中途半端な感じはしなくて読みごたえがある。
しかし結末は肩透かしというか、正直あまり納得は出来なかった。4人も殺した犯人がお咎めなしで、代わりに所長があんな目に合わされるなんて...感情的な部分は理解できるんだけど、他に方法は無かったんだろうか...
でも、シリーズの他の作品も読んでみたいと思った。 -
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真行寺巡査長の「インフォデミック」を吉良大介側から書いたストーリーと言うことで、国家的陰謀が解き明かされるのかと思って読んだんだけど、実は吉良もあんまり絡んでなくて、これはボビー(黒木)の協力の下、有名なあの人が使命感に駆られてアレンジを進め、そこに後からちゃっかり吉良が相乗りしているものであったらしい。
前作では異端児で型破りな印象で真行寺の好敵手に思えた吉良さんですが、本作では何だか結構俗物っぽくて、マウントを取るぞ的な言動に少し幻滅してしまいます。
組織の中に納まる型破りなエリートの吉良さんと、組織に巣くう一匹狼の問題児真行寺さんといった対比が当たっている感じです。
真行寺さんの方が -
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真行寺さんシリーズ、大好物なんですが、本作はテーマが時事ネタ過ぎて読み手が冷静になれないせいか、はたまた自由と監視・干渉の二律背反に迷う真行寺の葛藤のせいか、スキっと爽快!にはなりませんでした。
お釈迦様の掌の上で踊るを是とするか非とするか。鳥籠は嫌だけど鳥小屋なら許せるのか・・・。
サランにはこれが自由だったけれど、真行寺には網をかぶせられたような束縛を感じるんだろうね。
でもこんなシステム、それこそ中国ならてきぱきと作り上げて自画自賛しそうかも。
結局、百人集まれば正義は百通りあるということでしょうか。
このテーマ、吉良サイドからのストーリーも別にDASPAシリーズで出ているそう -
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こちらも出張のお供に。
この著者も初めて読みます。
読んだ感想は、「何か石田衣良っぽい感じの小説」。
文章が重すぎず、ライトな感じで、
でもストーリーはその後の展開が気になり、
どんどん読み進めていくことができる感じ。
テーマも自分の好みに合致していて、
楽しんで読むことができました。
簡単にストーリーを紹介すると、
工事現場で出会ったおじいさん(おっさん)に万馬券を渡され、
突然お金持ちになった主人公が「エアー」という空気を読むマシンを使いながら、
原発事故で廃れてしまった福島を何とかしようと奮闘するお話。
資本主義の次のシステムに関する記述や
主人公が色々な本を読んで少しずつ賢くなって -
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ネタバレ新シリーズにして、真行寺弘道シリーズともリンクしている作品です。尾関議員が登場していますので、時間軸としては真行寺シリーズの第一弾の頃の話しということになりますね。あとがきによれば、真行寺~のほうにも吉良が登場していたようですが、さすがに忘れてしまっていて…。
さて、作品はというと新たに発足するDASPAのインテリジェンス班のサブチェアマンに抜擢された主人公吉良が活躍する物語で、エンタテインメント小説というべき部類のものなのですが、スパイ防止法など国際政治的な色合いの強い内容を扱っているせいか、(自分の不勉強もあり)イマイチにはピンとこない部分ありました。そのため、星の数もちょっと控えめ…。 -
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TOKYO2020 東京オリンピックの年に読んだ。
エアーがおとぎ話にでてくる魔法のようで、都合良すぎる。狂言回しのおっさんもしかり。結局は魔法で作った金で好き放題と評するのは意地悪かもしれない。
スピード感ありサラッと読め、痛快である。
福島第一原子力発電所のこと、東京オリンピックのこと、官僚のこと、政治のこと…。イマ抱えている問題を題材にうまくまとめている。
コンピューターやガジェット類が登場こそするが、最近の骨太のSci-Fiに比べると一昔前の古さが否めない。そこは気にせずに読むようにすると良い。
ただ、これをして暗号通貨を予言したとは言い難い。