榎本憲男のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
榎本憲男作品は全作読んでいる。
どの作品もその次代の社会性を孕んだ作品で、モデルとなる人物、事件を別視点や置き換えたりしている。
今作の『サイケデリック・マウンテン』も勿論、ここ数年の事件や社会問題をモチーフとしている(その一つは明かしてしまうとクライマックスのあるシーンのネタバレになってしまいかねない)特に統一教会問題を発端とする宗教問題。
オウムの事件や、その後の後継団体などを彷彿させる団体が登場し、ある殺人事件との関係が浮上する。そこから更にマインドコントロールによる殺人教唆までに発展する。
そしてその洗脳の真実が明らかになったときに実際こんなこと可能なのかな、と疑問に思ったのだが、意外 -
Posted by ブクログ
ここのところ真行寺弘道シリーズが刊行されないな~と思ってましたが、このようなかたちで出会えた喜びと期待を胸に手に取りました。
しかも本作はハッカー黒木が主役ということで、ますます期待大でした。真行寺弘道シリーズでは第一作こそ登場シーンが多かったものの、その後は真行寺が困ったときにだけ登場する出番少な目のキャラになっていましたが、この作品では思う存分、あの黒木”節”を堪能できます。彼独特の視点による社会の構造をわかりやすくとらえた語りは(ちょっと難解で理解が追い付かないところもありますが)毎回刺激に満ちあふれていますね。
後半では真行寺をはじめとしたワルキューレの面々も登場し、あとがきで著者 -
Posted by ブクログ
榎本憲男『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』中公文庫。
文庫書き下ろし。『巡査長 真行寺弘道』シリーズや『DASPA 吉良大介』シリーズにも登場する天才ハッカー、ボビーこと黒木を主人公にしたスピンオフ作品。
最初の謎は、この物語の語り手の『僕』というは誰なのかということだ。真行寺弘道なのか……
謎に包まれていた黒木の過去がついに明かされ、現代の新自由主義に対する黒木の見解と黒木らしい新自由主義への奇抜な挑戦が描かれており、非常に面白い。
新型コロナウイルス感染禍が始まる前の秋、天才ハッカーの黒木が和歌山の世界遺産である熊野古道の中辺路に現れた。そこで伝統工芸を研究する大学院生の柴田澪 -
Posted by ブクログ
榎本憲男『エアー2.0』小学館文庫。
近未来経済サスペンス小説。榎本憲男の作品で唯一未読であった。
スケールが大きくて、非常に面白く、読後に爽快な気分を味わった。資本主義をリセットするという着想が凄く、福井晴敏の『人類資金』にも匹敵する傑作だと思う。
今や資本主義社会に於いて、実体経済は完全に崩壊し、ネット上の金融取引や権力を背景に巨額の金を手にする者が勝者となっている。その結果、経済格差は拡大し、汗水たらして働く者への見返りはどんどん目減りするアンバランスな社会が形成された。さらには復興五輪など掛け声ばかりで、国の体面を保つために新型コロナウイルス感染禍であるにも関わらず、東京五輪を強 -
Posted by ブクログ
ネタバレ真行寺弘道シリーズは常に社会のトレンド的な話題を物語の中軸に据えつつ、それでいてそこで投げかけられる(表向きは真行寺に対してだが、実は読者に対して問題提起されている!)二者択一的な選択肢は作品の中ではフィクションではあるものの、その方向性は現実世界を一歩も二歩も先取りした内容といえます。100%そうなるかどうかは定かではないけれども、ひょっとするとこういう未来もあるかも、と思わせられる内容になっているところが読みどころかと思います。
さらにもう一つのおもしろポイントは作品を読みながら真行寺にアタマの中の思考を一緒にたどっていくところでしょうか。真行寺自身も迷いながらそれでも思考を進めようとし -
Posted by ブクログ
榎本憲男『インフォデミック 巡査長 真行寺弘道』中公文庫。
シリーズ第5弾。文庫書き下ろし。
新型コロナウイルス禍に翻弄される日本の状況をリアルに背景に物語は展開する。様々な情報が飛び交い、不確かな情報ばかりが伝播していく不条理。新型コロナなど単なる風邪と変わらない、インフルエンザの方が死亡率が高い、若者は重症化しない、BCGの接種が感染を抑制している、Go To事業が感染を拡散・拡大させたエビデンスは無い……
出張は無くなり、旅行にも行けず、自粛に我慢、マスクに手洗いというまるで囚人のような毎日。そんな俯く毎日に覚える閉塞感。それを全て吹き飛ばしてくれるかのような爽快感あふれる作品だっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ内容は現在の日本におけるパラレルワールドのようなもので、この作品内でも国が抱える問題や予定されている行事が行われていく。
ちょうど2020年のオリンピック前後を舞台としているので、まさに今読むべき作品だと思う。
エアー2.0の世界ではコロナは流行らないが、もっと大変なことが起こり始める。そして面白いことが。
とにかく登場人物の描き方が素晴らしく、中谷やおっさんの掛け合いをもっと見ていたかったし、市川という女性がどんな容姿をしているのか非常に気になる。
作者によると続編エアー3.0の執筆も考えているようで、出版されたら誰よりも先に買って読もうと思う。 -
Posted by ブクログ
榎本憲男『DASPA 吉良大介』小学館文庫。
文庫書き下ろし。日本のインテリジェンスの危機をテーマに描いた警察小説。プロローグに描かれたハッキングによるサイバー・テロの物語が続くのかと思ったのだが、本編ではさらに面白いストーリーが展開する。
通称DASPAと呼ばれる新たに発足した内閣府の国家防衛安全保障会議のメンバーに召集された警察庁警備局出身のキャリア官僚・吉良大介はインテリジェンス班サブチェアマンに抜擢される。DASPA発足の直前に中目黒のマンションでアメリカ人が殺害される。調査に乗り出した吉良はこのアメリカ人がロシアの二重スパイで神経毒により殺害されたことを掴む。事件の背後にあるもの