佐藤いつ子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最初のシーン(モラハラ気味の父、それに気を使う母、思っていることが言えない主人公)が上手くて、良いかも!と思った。
読んでみて、とても上手い印象は変わらなかった。
が、私の好きな小説ではなかった。
思春期の登場人物たちの心の揺れを、巧みに表現した文章は、中学入試に確かに向いている。
内気だが秘めた強さを持つ主人公、積極的でコミュ力高くても実はコンプレックスを持っている女子、バスケ部のエースのように目されながら、友人の能力の方が高いことに焦りを感じている男子、何事もそつなくこなすが、夢中になれるものがない男子と、身近にいそうなキャラクターばかりで共感しやすい。
(音楽にずば抜けた才能を持つ登場人物が中心から外されているのは、「普通の人」ではないからかも。)
冒頭のシーンで、主人公の自信のなさはこういう家庭に原因があるのかと思わせるが、主人公だけでなく、それ以外の少年少女の家庭の事情も描きすぎることなく、合唱コンクールを通した子どもたちの成長を過不足なく描いている。
恋愛要素もあるし、中学生くらいにおすすめ。読後感も爽やかで言うことなし。
大人もこういう中学生だった人は楽しめるかもしれない。あの頃の切ない気持ちを思い出して。
個人的には私はこの小説で描かれなかった「その他大勢」のクラスメイトだったし、ひねた中学生からクセのある大人になってしまったので、こういう正統派のキラキラ青春ものは若くても好きにはならなかっただろう。これを読んで中学時代を懐かしく思い出せる大人になってみたかった気がしないでもない。
大抵の人にはおすすめ。