大島豊のレビュー一覧

  • 茶匠と探偵

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    ネタバレ

    目次
    ・蝶々、黎明に落ちて
    ・船を造る者たち
    ・包嚢(ほうのう)
    ・星々は待っている
    ・形見
    ・哀しみの杯三つ、星明りのもとで
    ・魂魄(こんぱく)回収
    ・竜が太陽から飛びだす時
    ・茶匠(ちゃしょう)と探偵

    今まで読んだことのないタイプの作品でした。
    シュヤ宇宙という、独自の世界を舞台にしているのですが、それぞれの作品に関連性はありません。

    アジアを彷彿させる大家族主義、先祖崇拝、長幼の序、親孝行、輪廻転生、観音信仰等、私たちにも身近なそれらが、シュヤ宇宙に住む彼らの日常に深く影響を与えている。
    しかし人々は死んでも、その記憶はデータ化されその多くは子どもに受け継がれる。
    多くの御先祖様と実

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    2022年07月02日
  • 仮想空間計画

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    ハードSFの巨匠ホーガンが90年代に書いたVRものSF。原題「REALTIME INTERRUPT」よりも邦題「仮想空間計画」のほうが内容をイメージしやすくてわかりやすい。
    閉じ込められた仮想現実(VR)から脱出するという、今やありふれた話ではあるが、、ホーガンらしく科学的な検証や企業政治のゴタゴタ、丁寧な人間心理の描写などが緻密に書かれているためか、今読んでも古さを感じない。
    舞台は2010~2022年となっており、記憶を思い出すように過去と現在の主人公が交互に描かれて進行し、失った記憶の謎でつながっていく流れが面白い。VR内と現実に時間の速度差があるあたり、マトリックスというよりはインセプ

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    2021年09月16日
  • 時の他に敵なし

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     時の他に敵なし。じゃ敵は時か。
     国家的プロジェクトとしてタイムマシンで200万年ほど過去に戻り、原生人類ホモ・ハビリスの調査の任にあたった「ぽく」、アメリカ空軍下士官ジョシュア・カンパは、そこでヘレンと名づけたハビリスの女性と恋に落ちるという話。タイムマシンはバスの中に設えられ、「むこう」では空間に穴が空くというドラえもんのタイムマシン方式で、そこから吊り台で過去の世界に降りる。ヘレンのいるハビリスの群れに受け入れられようと奮闘する姿が描かれる一方で、ジョシュア自身の生い立ちがカットバックされていく。
     彼はスペイン人の唖の娼婦の息子として生まれたが、恐らく父はアメリカ軍の黒人兵。スペイン

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    2021年07月17日
  • 仮想空間計画

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    ジョー・コリガンは仮想空間計画オズの立案者だった。しかしその計画は放棄され今はリハビリの日々だ。仮想空間と同調したときに何らかの不具合が発生して記憶が飛んでしまった期間を過ごした。いまは世界に復帰するための調整をしている。でも今の世界は本当の世界なのか?本当にオズ計画は放棄されたのか?Virtual Realityの世界を描く。こんな世界なら恐怖だな。

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    2018年10月20日
  • 仮想空間計画

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    ハードSFサイバーパンクもの。
    主人公が実に不利な立場からはじまり、そこから真実を見つけ出す緊迫感が堪りません。

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    2009年10月04日
  • オルガスマシン

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    ネタバレ

    二階堂奥歯さん「八本脚の蝶」に収められていた書評で本書を知り、読みました。
    製造された少女たちは注文者の望みどおりにカスタムメイドされ、愛玩の後に引き払われ、使えなくなるまでとことん使い尽されてポイ…それをするのはもちろんMAN。
    女性が男性に身体改造されて隷属している世界。フィクションだから極端で酷く悪趣味(そこはかとなく漂うマンガチック…)だけれど、「男性が女性の身体について定義する」というのは現実世界でも起きていることだな…と、読み進めていく裏で考えていました。

    女性も一枚岩ではない。でも、新しい世界への柔軟性は高い。
    隷属を是としない。考える。カスタムしてまで支配する世界は極端だけれ

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    2025年03月25日
  • 時の他に敵なし

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    原人の時代にタイムトラベル、というわけで、ある種の猿の惑星ではないか。
    と言っても実際には行っていないというか、夢の中で過去に戻るのが機械の力で実体として戻る、みたいなことだったけどこのあたりの仕組みがあやふやで。大体において最後の方で宇宙船で過去に戻ってるのとかそっちの方がすごいというか。いやなんかこのあたりの技術論が分かんなくてモヤモヤするものの、主人公の成長の記録としてはけっこう面白いのですよ。そういう本として楽しむのが吉なり。

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    2025年01月12日
  • 黄金の人工太陽 巨大宇宙SF傑作選

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    スペースオペラな短編集

    時空の一時的困惑 
    禅と宇宙船修理技術 
    甲板員、ノヴァ・ブレード、大いに歌われた経典
    晴眼の時計職人
    無限の愛
    見知らぬ神々
    悠久の世界の七不思議
    俺たちは宇宙地質学者、なのに
    黄金の人工太陽
    明日、太陽を見て
    子どもたちを連れて過去を再訪し、レトロな移動遊園地へ行ってみよう!
    竜が太陽から飛び出す時
    ダイヤモンドとワールドブレイカー
    カメレオンのグローブ
    ポケットのなかの宇宙儀
    目覚めるウロボロス
    迷宮航路
    霜の巨人

    大分じっくり読んだけど、忘れた頃にもう一度読みたい。

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    2023年12月09日
  • オルガスマシン

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    SF。ディストピア。
    著者の作品は『エンベディング』『スローバード』に続いて3作目だが、今作が1番好き。
    近未来を描いたディストピア小説だと思うが、自分には架空の物語とは思えなかった。
    今作における女性の立場を、労働者・子供・ペット・養殖されている生物などに置き換えたら、現実に同じようなことをしていませんか?
    第四部の結末が、微かな希望があるように思えて良い。
    うっすらとカバーの裏の文字が見える本のデザインは、素晴らしい。さすが竹書房さん。

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    2023年05月03日
  • 茶匠と探偵

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    作者はフランスとヴェトナムの血を持つフランス人。

    9編の中・短編集は、いずれもネビュラ賞・ローカス賞などを受賞した作品で、同一の世界観の舞台をもとに、本編以外にも数多くの作品が世に出ている。

    物語の世界では多分にアジア的な要素を盛り込んで、独特の舞台を作り上げているが、どこか、欧米人が抱く日本像の映像化された作品を見た時と同じ歯がゆさを感じるのも、奇妙な味わいの要素として、プラスに働いていると思うこともできる。

    どう解釈すればいいのかわからない単語が、何の解説もなくやってきては消えていくことも、なじんでくれば、この不思議な物語の本質の中に浸かることになる。

    ヴェトナムは、過去から中国王

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    2022年12月01日
  • 時の他に敵なし

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    近年の研究により、現生人類がネアンデルタール人と交雑(その後、駆逐?)していたことが明らかになっており、それ以前の古代人類間でも同様のことが行われていた。そういった史実を踏まえると、40年前の壮大な作品が今だからこそ輝きを放っていると感じる。

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    2022年04月16日
  • オルガスマシン

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    人類(human)=男(man)である価値観の下、女は男の所有物である「モノ」としてしか生きることを許されない未来。とあるコンクリートの島において、顧客たる男の欲望に基づき遺伝子改変と肉体改造を経て「製造」されるカスタムメイド・ガールたちの体験を描く物語。常人の二倍以上の大きな青い目を持つ素直なジェイド、六つの乳房に加えて顎にも乳房を持つ優しいハナ、獣の毛皮と獣性を併せ持つ勝気なマリ、金持ちの煙草入れとして乳房を引き出しに改造された高慢なキャシィ・・・彼女たちが「出荷」された後の過酷な顛末とは?

    一言でいえば、残酷な「大人の寓話」、ということになるのでしょう。
    SFとしての科学的な説得力より

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    2021年05月13日
  • 仮想空間計画

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    いやー楽しかった。
    エンタメとしてとにかくおもしろい。なんで映画化してないんだろう、と思ったけど、絵面は意外と地味か。
    しかし登場人物がとにかく多い。

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    2019年12月28日
  • 仮想空間計画

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    読む人によって評価が分かれるかもしれない。登場人物の置かれる立場(舞台)が、章ごとに飛んでしまうので、そこが読みにくいというか迷子になりそうなところだった。読み進めれば、これも演出の一つなのだと分かると、面白くなっていく。むしろ、舞台がコロコロ変わることによって、SF的リアルさが増す。読者が迷うというのは描写が見事だということに他ならないと感じた。物語の視点が仮想空間にあるのか、現実世界にあるのか気を付けながら読むと、迷わずに楽しめるだろう。でも作者には騙されるのだろうな。まあ騙された方が楽しいので、穿った見方をせずに素直に読めばいいと思う。

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    2016年02月07日
  • 仮想空間計画

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    どうしても海外物だと日常シーンが退屈に感じてしまうが、それでもシミュレーションの世界の説明など、SF的な解説になると急激に面白くなるあたりはさすが。
    「仮想空間計画」らしくなってくるのが後半に入ってからというのがちょっと長く感じる原因ではあった。

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    2013年06月06日
  • 仮想空間計画

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    本物のAIを作ろうとしたのにいつの間にかヴァーチャルリアリティ=ヴァーチャルワールドの開発に話がすりかわり、メイン科学者が敵対していた同僚の姦計によって、それまでの記憶を消されてヴァーチャルワールドに閉じ込められた! 装置のスイッチを握ってるのは相手のほう。果たしてメイン科学者・コリガンは無事にその狂ったヴァーチャルワールドから脱出できるのか? 最高にジリジリする……

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    2009年10月04日
  • 黄金の人工太陽 巨大宇宙SF傑作選

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    2023-06-17
    絢爛豪華。ポストヒューマンものからミリタリーもの、銀河帝国ものからジェンダーものまで幅広い。昔懐かしのテーマもちゃんとアプデされていて読み応え抜群。

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    2023年06月17日
  • オルガスマシン

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    2023-06-06 再読
    とてつもない物語ではある。しかしながらその想像力はあくまでプレイメイト的な健全?な性指向の延長線上にあるように思える。いや、そんなことはないんだけど。
    何より恐ろしいのは、そういった社会の仕組みよりも、その仕組みが自己保存を目的として歪んで行った様にあるように思える。奴隷制度は全てを奴隷と化す。その方が恐ろしい。

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    2023年06月06日
  • 黄金の人工太陽 巨大宇宙SF傑作選

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    巨大宇宙SFってなんだ? と思っていたら、スペオペでした。あとがきではスペース・オペラを連呼しているんで、禁句と言うことはないと思うが、背表紙や帯の惹句には、どこにもスペオペとは書いてない。なんとなく不思議。
    で、中身の方はニュー・スペース・オペラ以降の、アクションSFが主軸。一昔前のスペオペ・アンソロジーなら、もう少しB級感というか、やさぐれた感じを出してきたような気がするが、これはこれでいい。ただ、これはお約束なのか、どれほどとんがったSFガジェットをてんこ盛りにしていても、人情とか、家族関係なんかは今と変わっていない設定のお話がほとんど。多少の違和感はある。

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    2022年06月20日
  • 茶匠と探偵

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    大ベトナム帝国と紅毛(ギャラクティカ、いわゆるEU圏的勢力?)が覇を争う宇宙世紀の短編集。評価は星3つ。要約すると、

    ・民族的な文化描写が半端で浅い
    ・文章はそこそこ良い
    ・ドラマは70点

    なせいで、逆に胃がむかむかする。
    飯の話と一族祖先の話してりゃ民族描写だと思ってるんかい、と。

    民族的な文化や、歴史事件を織り込んだ描写の名手といえば、ケン・リュウが真っ先に思い浮かぶ。
    ついつい対比してしまうのだ。
    たとえば、格言や言い回しひとつひとつに、文化は現れる。
    選ぶモチーフや意匠の一つ一つに、登場人物の人格や人生が反映されているかどうか。

    対比して気づくが、アリエット・ド・ボダールの本作

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    2021年03月12日