あらすじ
ジョシュアには子供の頃から不思議な力があった。太古の時代を繰り返し夢に見るのだ。
それは夢と呼ぶには、あまりにリアルだった。
彼は夢のことを“魂遊旅行”と呼んでいた。
成長したジョシュアは、夢に出てくるのが石器時代だと知り、古人類学者のブレアに夢について話す。
ブレアは“魂遊旅行”が本物だと認め、ジョシュアを国家的なタイムトラベルプロジェクトへ誘う。
それは黒人であるだけで、あらゆる場面で差別されてきたジョシュアにとって、自分を自由に解き放つ唯一のチャンスでもあった。
ジョシュアを過去へと送る実験はアフリカで行われた。
奇妙な装置に固定された彼がまどろみ目を開けると――石器時代だった。
そこでジョシュアは、ホモ・ハビリスと呼ばれる現生人類の集団と出逢う。
彼らと行動を共にするうち、やがてジョシュアは、ヘレンと名づけたひとりのホモ・ハビリスと恋に落ちる――。
異色のタイムトラベルロマンスであり、ひとりの黒人青年の魂の戦いを描いたネビュラ賞受賞作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
時の他に敵なし。じゃ敵は時か。
国家的プロジェクトとしてタイムマシンで200万年ほど過去に戻り、原生人類ホモ・ハビリスの調査の任にあたった「ぽく」、アメリカ空軍下士官ジョシュア・カンパは、そこでヘレンと名づけたハビリスの女性と恋に落ちるという話。タイムマシンはバスの中に設えられ、「むこう」では空間に穴が空くというドラえもんのタイムマシン方式で、そこから吊り台で過去の世界に降りる。ヘレンのいるハビリスの群れに受け入れられようと奮闘する姿が描かれる一方で、ジョシュア自身の生い立ちがカットバックされていく。
彼はスペイン人の唖の娼婦の息子として生まれたが、恐らく父はアメリカ軍の黒人兵。スペイン駐留軍にいた下士官の家庭の養子となって育つ。
更新世に降り立つや、20世紀との連絡手段も断たれてしまったジョシュアは、ハビリスの群れに接近し、そこの家族となっていく過程が一人称で描かれる。他方、ジョシュアがアメリカ人家族に受けいられ、しかし家族の崩壊に遭遇し、過去に旅立つことになる経緯が三人称で平行して語られていく。結末で物語のふたつの線が結ばれるわけだが……
マイクル・ビショップは1970年代にデビューした「大型新人」の一人、名前はよく知っていたので本書も手にしたが、実はひとつも読んだことがなかった。マイクル・ムアコックとごっちゃになっていたみたい。
Posted by ブクログ
原人の時代にタイムトラベル、というわけで、ある種の猿の惑星ではないか。
と言っても実際には行っていないというか、夢の中で過去に戻るのが機械の力で実体として戻る、みたいなことだったけどこのあたりの仕組みがあやふやで。大体において最後の方で宇宙船で過去に戻ってるのとかそっちの方がすごいというか。いやなんかこのあたりの技術論が分かんなくてモヤモヤするものの、主人公の成長の記録としてはけっこう面白いのですよ。そういう本として楽しむのが吉なり。