三木卓のレビュー一覧

  • 徒然草・方丈記

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    徒然草は読者にそっと語りかけるような口調が親しみやすくいいですね。人の道を説いているのに説教くさくないのもお勧めのポイントです。兼好法師の人を見る鋭い観察眼はさすがです。変わって方丈記は火事や地震など重いテーマを扱っているので堅苦しく小難しい印象でした。

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    2025年11月28日
  • 震える舌

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    映画は割と怖いらしいけど見たことがない。得体の知れないものに侵され娘が得体の知れないものになっていく恐怖、診断と治療、破傷風との戦いと家族をめぐる環境、冷静であろうとして感情のこもった雰囲気がうまく書かれている。万が一、何かの実体験を書くことになったらこういう文章を書きたいと思う。子供ができてから、破傷風そのものの症状より看病する親の心情と疲労の方がリアルで感情移入しそうだった。

    p82 うすぐらい室内のなかで昌子の顔は闇の黴に蝕まれているように見え、それは僅かずつではあるが昌子がわたしたち夫婦の支配する圏から脱しつつある兆のように思われた。(そして、これからどういうことが起るのだろう?)

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    2023年08月01日
  • 震える舌

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    ネタバレ

    一人娘にある日突然現れた異変。悪魔に憑かれたかの如く激しい発作に暴れ苦しむ娘の病はやがて破傷風と判明し、入院し本格的な治療が開始されるも、付ききりで必死の看護に当たる両親の精神は次第に蝕まれていきます。
    作家の実体験を元にしたというこの小説は、娘の病状がリアルで本当にしんどそうで心が痛んだのはもちろんですが、それ以上に両親がそれぞれにじわじわ追い詰められていく描写に胸を締め付けられると同時に、あまりの凄まじさに恐怖を覚えました。
    物語の語り手でもある父親も、冒頭で「お父さんがあまり娘を叱るからストレスで体調が悪化するのだ」と言いがかりをつけられるほどには神経質で繊細で、自分自身の幼児体験や感染

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    2021年01月02日
  • K

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    人間関係の距離感は、人それぞれ違う。
    特に異性との距離感は、様々。
    悲喜交々相まって、複雑だ。
    夫婦関係も同じだ。
    ラブラブ親密をいつまでも維持している
    カップルがいる反面、
    なんで、まだ婚姻関係が続いているのか
    理解不能なカップルもいる。
    面白いものである。
    本書は、ある意味特殊であり、どこにでもある
    夫婦。
    すれ違いあり、心の通い合いがあり。
    個人的にはとても楽しめたのだが、読者を選ぶかもしれない。

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    2012年11月08日
  • K

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    決して楽しい話ではないのに、ユーモラスで軽い文章で楽に読めた。
    風変わりな妻を当事者ながらすごく客観的に見ている「ぼく」。
    彼女をわからないといいながらも、風変わりなのは育った環境など彼女にも事情があるということを受け入れている。
    他人同士が結婚するのだから、何もかもぴったりの夫婦は稀で、価値観や性格が違うのは至極当然である。
    わからないながらも47年という月日はいつの間にか二人を立派な夫婦にしていたのだろう。
    いろいろな夫婦のかたちがあるのだと思う。

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    2012年09月28日
  • K

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    ネタバレ

    男性が妻を亡くして書く追悼記には鼻白むことが多いのだが、これは違った。
    著者が妻になる女性と知り合ってから、彼女が亡くなるまでを書いているが、まあこの女性の強烈なこと。
    家事はしたことがなく、仕事もしたくない。お金はあるだけ使ってしまう。子どもは溺愛し、自立させない。夫は追いだす。(生活費は夫持ち)
    普通の男なら離婚して当然のような人。
    でも、いやな気持にならないのは、夫である三木さんが、彼女の生い立ち、性格を十分わかっていて、彼女の個性を認めているから。
    確かに乳児の頃に乳母の家に預けられ学齢になったら、むりやり家に戻されるという体験が感じやすい女の子の心にどれほど深い傷を残したか想像に難く

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    2012年07月13日
  • 震える舌

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    破傷風の恐怖!
    子供が破傷風にもしかかってしまったら、この夫婦のように頑張れるか自信がない。子どもvs病魔、夫婦間のいさかい、子どもは助かっててほしいが、自分も感染してしまうのではないかという、抑えがたいジレンマ・・・等々、リアルな人間の本質が描き出されています。映画にもなった感動的ドラマです。外遊びから帰ったら、必ず手洗いは習慣付けましょう。
    ただ、現在でも入手できるか、わかりませんので、あしからず。

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    2011年11月01日
  • 震える舌

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    許さんの授業課題作品。じっくり味わうほど名作なんだなあ、と納得。破傷風の恐ろしさ、家族の不安定な感じ。緊張感。不快な生活匂いが充満した文体。色んな意味で生臭い。詩人ならではの独特な言葉選びも凄い。

    病に冒されて舌を噛み、血だらけになりながら痛いよう痛いよう…と泣き叫ぶ娘。
    看病疲れで狂ってしまう妻。
    「あなたは私の夫ですね、そうですね」と電話口で呟く。触れたくない見たくない人間の怖さが全面に出てきちゃってるかんじ。怖い。ほんと怖い。

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    2011年06月03日
  • はるかな町

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    「かれの心臓はよわかったから、いつもはり裂けそうになっていた」
    生きた時代は半世紀も違うが、作者の感覚は今も瑞々しく伝わってくる。

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    2009年10月04日
  • 震える舌

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    病の凄惨さの描写に対して、人間の彫刻も劣らぬくらいに濃い。
    個別に閉ざされてもいないけど、どこに行っても息もつけない。
    慌ただしく擦り切れてそこここから苦渋が滲むけど、日が差せば一面にほころぶ。
    「病棟」という場の迫真に吸い込まれそうになる。

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    2025年09月28日
  • おおやさんはねこ

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    猫好きな方には是非読んで欲しい一冊☆
    部屋を探していたぼくは、家賃5千円という破格の物件に住みます。そこは49匹の猫が大家さんの一軒家で…
    とにかく出てくる猫が可愛い☆
    魚屋に永久就職するために面接を受けに行く猫、そこは応募が多いのでスルメが整理券として配られますが食べちゃったら不合格とか、蝶に恋した猫を笑ったら「結婚式にはよばないぞ」と怒られたりとか、猫専用の地図を作成するため猫と出かけるとか、もう本当にこんななのかも⁇って思って笑える!
    最後は悲しいような切ない終わり方だけど、なんか勇気出る☆
    オススメです!

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    2025年02月09日
  • 震える舌

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    破傷風にかかった娘のお話でした
    幼い娘の様子がおかしい
    どんどん悪化しているようで病院へ
    そこで病名がわかり治療が始まり・・・
    著者の実体験からくるお話のようで
    とてもリアルに感じました
    病院の人たち、両親の看病も大変そうでした
    名前は知っていたけどどんな病気かまでは
    知りませんでしたが恐ろしい病気ですね
    映像化もされているようでそちらも気になるところです

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    2024年10月13日
  • 震える舌

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    幼い娘が破傷風にかかった。
    昼夜問わず起きる発作の恐怖。感染したのではと募る不安。たった数日の出来事なのに、両親は疲労困ぱいで今にも発狂しそうだ。
    読み終わっても、その気持ちに引きずられて腹にずっしりと重みを残した。
    自分は、夫とここまで支え合えるだろうか。

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    2019年02月24日
  • K

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    久々に3日で読破しました。


    我が家は日経新聞を読んでいるのですが

    以前、新聞で見た三木さんの書いたものの印象が、とても強く残っていて

    いつか読もうと決めていた本でした。

    三木さんご夫婦の不思議な、というより変わった関係と、

    近頃私も考えてしまう孤独と、繋がっているような気がしてきました。


    それにしても、Kさんは謎。

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    2018年03月13日
  • おおやさんはねこ

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    面白かった。比喩でも何でもなくおおやさんはねこ、の物件を主人公が借りる話。50匹のおおやさんと主人公の交流がなんだかほのぼのさせる。
    ひたすらほのぼの日常系なのかとおもいきや、ラストは
    「ええっ!」と驚いて、ちょっと切なくなりました。
    ボス猫ナツクサのエピソードは考えさせられます。

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    2015年05月02日
  • K

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    ネタバレ

    がまくんとかえるくんの、心にしみる翻訳が好きだが、恥ずかしながら翻訳以外は初挑戦の三木卓作品。
    生意気承知で言うが、さすがの文章力で、エッセイを読むのが苦手な私にも、とても読みやすい。
    奥様(K)と、奥様との暮らしの回顧録だが、読んでいくとKという女性が奥様という言葉が遠い方だとわかる。そして、三木さんとKさんの夫婦生活が、普通とずいぶん違うことも。
    この本をKさんが読まれたら、と想像すると、思わず笑ってしまう。でも、芥川賞作家で日本中の子どもたちに愛されるアーノルド・ローベルの名翻訳者の三木卓さんがあるのは、ちょっと変わったKさんと、Kさんとの結婚生活があったからかもしれない。

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    2014年08月14日
  • 砲撃のあとで

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    合計で短篇及び掌編を14篇収録。篇中の「鶸」は、1973年上半期芥川賞受賞作。大連(小説中には地名が書かれていないが)で、終戦を迎えた時、著者は10歳。それとほぼ等身大の主人公の眼を通して、終戦から引揚げまでの混乱期が活写される。芥川賞の選考委員たちの選評は必ずしも絶賛というわけではないが、それは素材の古さ(戦後28年が経過していた)に、作品の新しさが認識できなかったからだろう。今読むと、実にうまい小説だ。少年の心理の綾から、不安感までが見事に描き出されていたことに驚く。彼の散文は、まさに詩的でさえある。
     著者の三木卓は詩人としても名高いが、そのことは小説においても言葉の密度の高さとして表れ

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    2014年03月30日
  • K

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    詩人三木卓氏が、同じく詩人だったKこと妻の福井桂子氏との出会いからその死までを描いた私小説。夫婦(家族)のことは夫婦(家族)にしかわからないというけれど、それはこういうことなのだなぁという感慨、そして陰惨にもなりかねないこの物語をそうは描かない(またはそうは受け取らない)著者のスタンスとセンスの絶妙さ。切なく滑稽で、深く頷いてしまうような。数十年間ほとんど家に帰らず別々に暮らしながらも離婚はせず、しかし当然のように乞われて最期を看取る。惚れ抜いた伴侶と共に歩んだ人生"ではない"、としてもそれを失敗とはせず、むしろそこから得たものがなんと豊かに描かれていることか。人の生と情の

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    2014年01月26日
  • K

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    抱え続けていた「少女の肖像」を独り内包して逝った妻と言う名のkに惹かれる。それが著者のKへの愛なのだろうか。

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    2013年06月26日
  • K

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    ネタバレ

    K(妻)と私(三木卓)のなれそめからKの最期まで。

    児童書も書かれている三木さんのことが知りたくて読んでみた。
    夫婦の話はいいなあ、と思って読めるのは最初だけで
    Kが病につくあたりからとても苦しかった。
    早く読み終えてしまおうと思った。
    私自身が母の死を経験したばかりの時期だったせいもあり
    そのことを重ねずに読めなかった。
    なのに読んだのはなぜだろう。
    ひたすら読み遂げなければと思っていたなあ。


    Kが手術をするところ、手術のむごさに耐えられずレストランに転がりこんでハンバーグとビールを頼んだ三木さんは号泣したと書いていた。

    夫婦の形は様々で、この二人はお互いを必要としているもの同士の結

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    2013年05月08日