三木卓のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
近年の三木作品にはやわらかな温かさを感じるが初期作品には感じないのは、書いた三木さんが若かったからかな、と思っていた。
本書を読んでその冷徹さが理解できた気がした。
満州引き揚げ前後の日々を描く連作短編集。
死と隣り合わせで生きる少年の毎日。常に飢えている。
生きるためには泥棒もする。
引き揚げ途中祖母の具合が悪くなり足止めされ、彼女の死を望む。
大人の醜さもつぶさに見る。
引き揚げの無蓋列車でコレラの青年に接触してしまう恐怖。
小学生がこんな体験をすれば、世の中に対して期待を抱いたり、甘い夢を持ち続けたりするのは不可能だろう。
『震える舌』でも死に直面した娘を見る目がクールだと感じたが、どん -
Posted by ブクログ
芥川賞作家の三木卓さんが、奥様で詩人の福井桂子さんについて書いた本。
小説家と詩人の夫婦ということで、
創作を優先して三木さんが仕事部屋にばかり居て、
別居同然の生活が長く続いたり、
具体的な夫婦生活を描いている部分もあるけれど、
夫からのワンサイドの話なので、
これで三木夫妻のすべてがわかる、という作りではない。
はじめては淡々とすこし突き放したような文体だけれども、
最後のほうで奥様kの闘病記に差しかかると、
たまらず、といった風に感情がこぼれ出てくる様子が、
夫婦の深みや不思議を感じさせる。
読み終わったあと検索して知ったのは、
三木さんが「震える舌」の作者なのだということ。
子供の -
Posted by ブクログ
ネタバレ古典随筆の名作を読んでみようと思ったけれど、とても原文で読んで理解することが出来ないので、少年少女古典文学館として現代語訳された物を手に取った。
徒然草は、まさに「徒然なるままに」書いたとあって何でこんなつまらないことまで書くの?という段もあるが、人生訓となるようなことも書いてある。
例えば、
・大事を成そうとするものは、全てを投げ捨ててそのことに取り組もう。
・自分の知識をひけらかすことなく、常に謙虚であること。
等々
ええっと思うのは、
・良い友とは次の三つ。一つは、物をくれる友。
もう一度、違う現代語訳でも読めば、この随筆の奥深さを感じることが出来るのかな。。 -
Posted by ブクログ
映画が強烈で、「エクソシスト」並のホラーという印象だったので、大人になってから三木卓原作と知って驚いた。
読んでみると、精神的に追い詰められていく夫婦を描くという点ではサイコサスペンスとは言えるかもしれないが、ホラーではもちろんない。
娘の異常の原因が、病院に行っても分からず、躾の行きすぎでおかしくなったんじゃないか、とか若い夫婦が疑心暗鬼に陥る。
やっと破傷風とわかって入院するが、治療が遅れたため激烈な発作が襲う。
当然娘の「死」を考える。
疲労と心労が重なり、妻は精神的なバランスを崩す。
実体験に基づいてはいるものの筆致は感情に溺れず、さすが小説家、親であっても業が深いな、と思った。
い -
Posted by ブクログ
これも友人に薦められた本です。
妻を看取る亭主の話、というとどこかで読んで、そのときはかなり胸が苦しくなったものだけど(何だったかなー?? 思い出せない)、この本は、しっとりしてらず、またいわゆる愛に満ちた夫婦というわけではないので、通常の「そういう物語」とはちょっと違った。
夫婦関係は最初から、あっさりしていて途中からは別居するに至る。だけど、三木さんの奥さんへの思いが変わらずにあるからその関係も続いてゆく。奥さんは果たして? と思ってしまうくらいに自分勝手なんだけど、それを見守れるのは三木さんだけだろうと、よく分からない私が思ってしまうので、きっと多分そうなんだと思う。
普通の夫婦愛じゃな