三木卓のレビュー一覧

  • 砲撃のあとで

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    近年の三木作品にはやわらかな温かさを感じるが初期作品には感じないのは、書いた三木さんが若かったからかな、と思っていた。
    本書を読んでその冷徹さが理解できた気がした。
    満州引き揚げ前後の日々を描く連作短編集。
    死と隣り合わせで生きる少年の毎日。常に飢えている。
    生きるためには泥棒もする。
    引き揚げ途中祖母の具合が悪くなり足止めされ、彼女の死を望む。
    大人の醜さもつぶさに見る。
    引き揚げの無蓋列車でコレラの青年に接触してしまう恐怖。
    小学生がこんな体験をすれば、世の中に対して期待を抱いたり、甘い夢を持ち続けたりするのは不可能だろう。
    『震える舌』でも死に直面した娘を見る目がクールだと感じたが、どん

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    2012年11月26日
  • K

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    詩人の妻は思いっきり自分勝手。同居を拒み長い年月、別居しているのに離婚せず、身体不調になると身近に居て欲しいと命令する。クリエーター夫婦というのは、お互いに同じ空気を吸いたくないものだ。それは創作の裏側があからさまになり、理解よりも嫉妬や苛立ちが立ち上る。
    やれやれの夫婦に一生、しかしそれなりの年月、ぞっとするほどに深くまみれるのが夫婦。それなりの誰にも立ち入れない関係、そして愛がある。わがままな人生を送った妻へのレクイエム。

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    2012年10月22日
  • K

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    芥川賞作家の三木卓さんが、奥様で詩人の福井桂子さんについて書いた本。
    小説家と詩人の夫婦ということで、
    創作を優先して三木さんが仕事部屋にばかり居て、
    別居同然の生活が長く続いたり、
    具体的な夫婦生活を描いている部分もあるけれど、
    夫からのワンサイドの話なので、
    これで三木夫妻のすべてがわかる、という作りではない。

    はじめては淡々とすこし突き放したような文体だけれども、
    最後のほうで奥様kの闘病記に差しかかると、
    たまらず、といった風に感情がこぼれ出てくる様子が、
    夫婦の深みや不思議を感じさせる。

    読み終わったあと検索して知ったのは、
    三木さんが「震える舌」の作者なのだということ。
    子供の

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    2012年10月21日
  • K

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    ネタバレ

    三木卓が、自分と奥様をモデルに書いた私小説。
    社会人になったばかりのころの二人の出会いから結婚、出産、二人の仕事、長く続いた別居結婚。
    そして、闘病と死。他の人には決してわからない夫婦の間の気持ちの揺れ動きを描いていて、秀逸。
    詩人同士の結婚って、大変そう。

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    2012年08月31日
  • K

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    なんだかんだ言っても夫婦って恐るべし

    やっぱ先に逝きたい

    残されたら生きて生けないよぉ

    看取られたい

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    2012年08月11日
  • K

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    一人称の語りで、Kさんと付かず離れずの関係が描かれる。その文体と内容でひき込まれた。Kさんがまとっている空間はとても広い。その空間と空間が相容れることが、人と関わることならば、こんな関係もあっていいのかもしれない、とどこかでほっとしてしまった。

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    2012年07月30日
  • K

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    著者・三木卓さんはインタビューで「はたぶんこの人が好きだったんだろう」と奥様、詩人の福井桂子さんの事を語っている。文中でも「結婚とは日々に深まってくる相手への幻滅に耐え続けることだ」とある。奥様への敬愛に満ちた一冊。

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    2012年07月29日
  • K

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    夫婦って、こんなもんなのか?
    若いうちに同棲、そして結婚。子供が産まれ、妻は病的に子供に関わり自分の存在が家庭から消えていく。長きにわたる別居生活のあとに迎える晩年。
    これがリアルな夫婦生活、というか人生なんですね。

    自分の生活を振り返ってしまいます。

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    2012年06月16日
  • 砲撃のあとで

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    小説においてリアリズムこそが素晴らしいと言うわけではないと思うが、リアリズムが素晴らしい作品。
    無慈悲であることに対しての救いを求めるのではなく、祈りたくなる作品。

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    2011年06月21日
  • 震える舌

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    ネタバレ

    小さな娘が破傷風になる。「もしかしたら・・・」と思いながらも、違う診断にほっとしながら、最終的には手遅れに近い状態で入院。そして主人公も感染? 全体的に暗い文体で、主人公の子供に対する距離感とか、妻が壊れていく感じとか怖い。

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    2011年06月05日
  • 井原西鶴集 21世紀によむ日本の古典

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    90ページ 
    「和泉の国の水間寺(大阪府宝塚市にある寺)」→「貝塚市」
     ※「日本永代蔵」。手書き原稿を入力する際に誤ったのでしょうか。

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    2012年10月04日
  • 徒然草・方丈記

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    ネタバレ

    古典随筆の名作を読んでみようと思ったけれど、とても原文で読んで理解することが出来ないので、少年少女古典文学館として現代語訳された物を手に取った。

    徒然草は、まさに「徒然なるままに」書いたとあって何でこんなつまらないことまで書くの?という段もあるが、人生訓となるようなことも書いてある。

    例えば、
    ・大事を成そうとするものは、全てを投げ捨ててそのことに取り組もう。
    ・自分の知識をひけらかすことなく、常に謙虚であること。
    等々

    ええっと思うのは、
    ・良い友とは次の三つ。一つは、物をくれる友。

    もう一度、違う現代語訳でも読めば、この随筆の奥深さを感じることが出来るのかな。。

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    2025年09月22日
  • 砲撃のあとで

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    主人公は10歳の少年です。最初の「朝」で敗戦を知り、最後の「朝」で日本への連絡船に乗ります。それまでの間の、寒さや飢えに対する生存競争が語られます。それは悲惨です。一方何故か、満州人による日本人虐待については、ほとんど描かれて居ません。無かったのか、体験しなかったのか、あえて避けたのか。
    時に少年らしい残酷さが表に出ます。例えば足手まといになる祖母への憎悪などです。また一方で、少年らしい冒険心なども見せます。
    とはいえ、やはり人間を描いたというより、事件を描いた記録文学という感じがします。

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    2017年10月30日
  • 震える舌

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    映画が強烈で、「エクソシスト」並のホラーという印象だったので、大人になってから三木卓原作と知って驚いた。
    読んでみると、精神的に追い詰められていく夫婦を描くという点ではサイコサスペンスとは言えるかもしれないが、ホラーではもちろんない。
    娘の異常の原因が、病院に行っても分からず、躾の行きすぎでおかしくなったんじゃないか、とか若い夫婦が疑心暗鬼に陥る。
    やっと破傷風とわかって入院するが、治療が遅れたため激烈な発作が襲う。
    当然娘の「死」を考える。
    疲労と心労が重なり、妻は精神的なバランスを崩す。

    実体験に基づいてはいるものの筆致は感情に溺れず、さすが小説家、親であっても業が深いな、と思った。

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    2012年11月16日
  • K

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    これも友人に薦められた本です。
    妻を看取る亭主の話、というとどこかで読んで、そのときはかなり胸が苦しくなったものだけど(何だったかなー?? 思い出せない)、この本は、しっとりしてらず、またいわゆる愛に満ちた夫婦というわけではないので、通常の「そういう物語」とはちょっと違った。
    夫婦関係は最初から、あっさりしていて途中からは別居するに至る。だけど、三木さんの奥さんへの思いが変わらずにあるからその関係も続いてゆく。奥さんは果たして? と思ってしまうくらいに自分勝手なんだけど、それを見守れるのは三木さんだけだろうと、よく分からない私が思ってしまうので、きっと多分そうなんだと思う。
    普通の夫婦愛じゃな

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    2012年10月04日
  • K

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    三木卓さんが、亡くなられた奥様「K」との出会いから別れを綴った小説。
    こういう夫婦のカタチも有りだよなぁ、実際あったんだし。

    結婚というのは、ただの公式セックスパートナーを得るというだけではなく、相手を知り、また相手を知ることで自分を知る、という事なのだと改めて思う。

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    2012年08月27日
  • K

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    ネタバレ

    不可思議な夫婦の在り方を描いた作品です。

    夫(小説家)と、妻(詩人)は、40年に近い結婚生活を、ほぼ没交渉で送ります。このような生活で、夫婦としての感情を維持できるものかどうか・・・。
    妻が癌を宣告された後、夫は悲嘆にくれますが、これは「妻」だからでしょうか、「知人」だからでしょうか。

    夫婦と一言でいっても、様々な在り方があるものだと感心した一冊です。

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    2012年08月07日
  • K

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    これはまさしく一組の夫婦の愛の歴史である。
    それは常識的な結婚という形とは違うかもしれないが
    魂の奥で結ばれ
    存在を肯定し
    夫々の愛し方で愛したのであろう。

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    2012年07月29日
  • 砲撃のあとで

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    満州国崩壊後、引揚船に乗るまでを、少年の目で淡々と描いた短編小説の『連鎖状作品』芥川賞受賞。
    子供の目に生々しいのではなく、淡々としているが、父や祖母、汽車で乗り合わせた人たちの死、『いつもいつも死に襟首をつかまれている』状態で西までたどり着く。逞しいというより、子供ならではのすばしこさで切り抜き、惨状を頭に投射させていく怖さ。何より怖かったのは、祖母のジョクソウに、第3の眼を見ておびえるところであった。

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    2009年10月04日