あらすじ
1959年、〈ぼく〉は詩の同人誌で〈K〉と出会った。ふたりは結婚し、一児をなしたが、詩人としてのプライドが強すぎた〈K〉の言動は常軌を逸しはじめ、〈ぼく〉は困惑する。ふたりの生活は、すれ違い、やがて別居へと至る……。ただ、この奇妙な生活にも、「夫婦愛」は紛れもなく存在していた!
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Posted by ブクログ
人間関係の距離感は、人それぞれ違う。
特に異性との距離感は、様々。
悲喜交々相まって、複雑だ。
夫婦関係も同じだ。
ラブラブ親密をいつまでも維持している
カップルがいる反面、
なんで、まだ婚姻関係が続いているのか
理解不能なカップルもいる。
面白いものである。
本書は、ある意味特殊であり、どこにでもある
夫婦。
すれ違いあり、心の通い合いがあり。
個人的にはとても楽しめたのだが、読者を選ぶかもしれない。
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決して楽しい話ではないのに、ユーモラスで軽い文章で楽に読めた。
風変わりな妻を当事者ながらすごく客観的に見ている「ぼく」。
彼女をわからないといいながらも、風変わりなのは育った環境など彼女にも事情があるということを受け入れている。
他人同士が結婚するのだから、何もかもぴったりの夫婦は稀で、価値観や性格が違うのは至極当然である。
わからないながらも47年という月日はいつの間にか二人を立派な夫婦にしていたのだろう。
いろいろな夫婦のかたちがあるのだと思う。
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男性が妻を亡くして書く追悼記には鼻白むことが多いのだが、これは違った。
著者が妻になる女性と知り合ってから、彼女が亡くなるまでを書いているが、まあこの女性の強烈なこと。
家事はしたことがなく、仕事もしたくない。お金はあるだけ使ってしまう。子どもは溺愛し、自立させない。夫は追いだす。(生活費は夫持ち)
普通の男なら離婚して当然のような人。
でも、いやな気持にならないのは、夫である三木さんが、彼女の生い立ち、性格を十分わかっていて、彼女の個性を認めているから。
確かに乳児の頃に乳母の家に預けられ学齢になったら、むりやり家に戻されるという体験が感じやすい女の子の心にどれほど深い傷を残したか想像に難くない。
生き方が非常に下手で、生きにくい世を精一杯生きた彼女、Kの冥福を祈ります。
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久々に3日で読破しました。
我が家は日経新聞を読んでいるのですが
以前、新聞で見た三木さんの書いたものの印象が、とても強く残っていて
いつか読もうと決めていた本でした。
三木さんご夫婦の不思議な、というより変わった関係と、
近頃私も考えてしまう孤独と、繋がっているような気がしてきました。
それにしても、Kさんは謎。
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がまくんとかえるくんの、心にしみる翻訳が好きだが、恥ずかしながら翻訳以外は初挑戦の三木卓作品。
生意気承知で言うが、さすがの文章力で、エッセイを読むのが苦手な私にも、とても読みやすい。
奥様(K)と、奥様との暮らしの回顧録だが、読んでいくとKという女性が奥様という言葉が遠い方だとわかる。そして、三木さんとKさんの夫婦生活が、普通とずいぶん違うことも。
この本をKさんが読まれたら、と想像すると、思わず笑ってしまう。でも、芥川賞作家で日本中の子どもたちに愛されるアーノルド・ローベルの名翻訳者の三木卓さんがあるのは、ちょっと変わったKさんと、Kさんとの結婚生活があったからかもしれない。
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詩人三木卓氏が、同じく詩人だったKこと妻の福井桂子氏との出会いからその死までを描いた私小説。夫婦(家族)のことは夫婦(家族)にしかわからないというけれど、それはこういうことなのだなぁという感慨、そして陰惨にもなりかねないこの物語をそうは描かない(またはそうは受け取らない)著者のスタンスとセンスの絶妙さ。切なく滑稽で、深く頷いてしまうような。数十年間ほとんど家に帰らず別々に暮らしながらも離婚はせず、しかし当然のように乞われて最期を看取る。惚れ抜いた伴侶と共に歩んだ人生"ではない"、としてもそれを失敗とはせず、むしろそこから得たものがなんと豊かに描かれていることか。人の生と情の様々なあり方に静かに感嘆する。
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K(妻)と私(三木卓)のなれそめからKの最期まで。
児童書も書かれている三木さんのことが知りたくて読んでみた。
夫婦の話はいいなあ、と思って読めるのは最初だけで
Kが病につくあたりからとても苦しかった。
早く読み終えてしまおうと思った。
私自身が母の死を経験したばかりの時期だったせいもあり
そのことを重ねずに読めなかった。
なのに読んだのはなぜだろう。
ひたすら読み遂げなければと思っていたなあ。
Kが手術をするところ、手術のむごさに耐えられずレストランに転がりこんでハンバーグとビールを頼んだ三木さんは号泣したと書いていた。
夫婦の形は様々で、この二人はお互いを必要としているもの同士の結びつき。
恋愛?最初に愛はあったのかと疑う馴れ初めではあったし
仲睦まじかったようには思われないし。。。
それでも夫婦を続けるうちに情になり、こんな風に三木さんは本にすることに決めたのだろうと思う。
理想の夫婦、とは言えないけれど三木さんの気持ちは受け取れました。
三木さん今どうしてるかな。
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詩人の妻は思いっきり自分勝手。同居を拒み長い年月、別居しているのに離婚せず、身体不調になると身近に居て欲しいと命令する。クリエーター夫婦というのは、お互いに同じ空気を吸いたくないものだ。それは創作の裏側があからさまになり、理解よりも嫉妬や苛立ちが立ち上る。
やれやれの夫婦に一生、しかしそれなりの年月、ぞっとするほどに深くまみれるのが夫婦。それなりの誰にも立ち入れない関係、そして愛がある。わがままな人生を送った妻へのレクイエム。
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芥川賞作家の三木卓さんが、奥様で詩人の福井桂子さんについて書いた本。
小説家と詩人の夫婦ということで、
創作を優先して三木さんが仕事部屋にばかり居て、
別居同然の生活が長く続いたり、
具体的な夫婦生活を描いている部分もあるけれど、
夫からのワンサイドの話なので、
これで三木夫妻のすべてがわかる、という作りではない。
はじめては淡々とすこし突き放したような文体だけれども、
最後のほうで奥様kの闘病記に差しかかると、
たまらず、といった風に感情がこぼれ出てくる様子が、
夫婦の深みや不思議を感じさせる。
読み終わったあと検索して知ったのは、
三木さんが「震える舌」の作者なのだということ。
子供の頃に映画化されたものを観て、そのインパクトの強さをすぐに思い出した。
娘さんのことは切れ切れにしか書かれていないが、
有名な作家を父に持ち、自分の破傷風の闘病生活が作品として広く知られて、
いろいろとご苦労があったのではないかと、
おせっかいながら思わず心配になってしまった。
三木さんと娘さんがこれからもお元気ですごせますようにと
思わずにはいられない読後感だった。
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三木卓が、自分と奥様をモデルに書いた私小説。
社会人になったばかりのころの二人の出会いから結婚、出産、二人の仕事、長く続いた別居結婚。
そして、闘病と死。他の人には決してわからない夫婦の間の気持ちの揺れ動きを描いていて、秀逸。
詩人同士の結婚って、大変そう。
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一人称の語りで、Kさんと付かず離れずの関係が描かれる。その文体と内容でひき込まれた。Kさんがまとっている空間はとても広い。その空間と空間が相容れることが、人と関わることならば、こんな関係もあっていいのかもしれない、とどこかでほっとしてしまった。
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著者・三木卓さんはインタビューで「はたぶんこの人が好きだったんだろう」と奥様、詩人の福井桂子さんの事を語っている。文中でも「結婚とは日々に深まってくる相手への幻滅に耐え続けることだ」とある。奥様への敬愛に満ちた一冊。
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夫婦って、こんなもんなのか?
若いうちに同棲、そして結婚。子供が産まれ、妻は病的に子供に関わり自分の存在が家庭から消えていく。長きにわたる別居生活のあとに迎える晩年。
これがリアルな夫婦生活、というか人生なんですね。
自分の生活を振り返ってしまいます。
Posted by ブクログ
これも友人に薦められた本です。
妻を看取る亭主の話、というとどこかで読んで、そのときはかなり胸が苦しくなったものだけど(何だったかなー?? 思い出せない)、この本は、しっとりしてらず、またいわゆる愛に満ちた夫婦というわけではないので、通常の「そういう物語」とはちょっと違った。
夫婦関係は最初から、あっさりしていて途中からは別居するに至る。だけど、三木さんの奥さんへの思いが変わらずにあるからその関係も続いてゆく。奥さんは果たして? と思ってしまうくらいに自分勝手なんだけど、それを見守れるのは三木さんだけだろうと、よく分からない私が思ってしまうので、きっと多分そうなんだと思う。
普通の夫婦愛じゃないからこそ、夫婦の形がリアルに感じられたし、そういう夫婦のあり方に共感も覚えるし、実際そんなもんでもあるんだろうなとも思う。
結局、よく分からないけど、でも一緒にいるんだよね。
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三木卓さんが、亡くなられた奥様「K」との出会いから別れを綴った小説。
こういう夫婦のカタチも有りだよなぁ、実際あったんだし。
結婚というのは、ただの公式セックスパートナーを得るというだけではなく、相手を知り、また相手を知ることで自分を知る、という事なのだと改めて思う。
Posted by ブクログ
不可思議な夫婦の在り方を描いた作品です。
夫(小説家)と、妻(詩人)は、40年に近い結婚生活を、ほぼ没交渉で送ります。このような生活で、夫婦としての感情を維持できるものかどうか・・・。
妻が癌を宣告された後、夫は悲嘆にくれますが、これは「妻」だからでしょうか、「知人」だからでしょうか。
夫婦と一言でいっても、様々な在り方があるものだと感心した一冊です。