中脇初枝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
心にずしっとくる重たい内容だけど、読みやすいやさしい文章。
弥生さんは藤堂師長と出会えてよかった。
生まれにより確かに格差は生じるけど、さらにその後に出会った人たちの影響で自分自身や人生は大きく変わっていく。
弥生さんが小さい頃に出会った幸子さんのように、就職してから出会った藤堂師長や菊地さんのように、きっと自分も知らないうちに誰かから幸せを願われているのだろう。
しかし、この院長の病院では絶対に手術したくないな。
医師も人間だし、だからこその人間らしさだとわかるけど、患者としては命がかかってますし。
藤堂師長が最初に出会った医師のような人に診てもらいたいな…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ呪縛から解き放たれた弥生の強い願いに、一緒になって願い祈る。
病院を少しでも良くするために、まだこの病院に残って頑張りたいという弥生の信念はすごいとは思うものの、こんな看護師を見下した医療事故を繰り返す糞みたいな院長がいる病院の体制はそうそう変わらない。弥生がどんなに奮闘しようと、病院が良くなって院長が改心するとは思えない。こんな病院とっとと辞めて藤堂師長について行っちゃえば良いのにと思うけど、今ここにいる患者さん達を、未来の患者さん達を彼女は見捨てることができないんだろうな。
「あなたがたのいる場所は、いつも、患者のそばよ。」去り際に看護師達にかける激励の言葉の温かさと力強さに、背中を押される。師長の人として器の大きさを感じた。院長がクズなだけに余計に。
そして誰よりも忘れてはならないのが、菊池さん。周囲に愛されるその人柄に、弥生の心も救われていく。九九が出来ない彼女の為に、夜な夜なひらがなの小さな文字で書いた九九の紙。
それが幼かった弥生も、大人になった弥生も、まとめて包み込んで救ってくれた。呪いとしか思えなかった呪文のような九九が、菊池さんから弥生への祝福の言葉になったんだと思ったら、もう胸がいっぱいになった。
ただの紙切れじゃない、それは長い間がんじがらめになっていた弥生の呪いを解く温かい魔法だったんだ。
「へば!」と言い合って手術室に向かう場面も、覚えた九九を菊池さんに披露しながら麻酔する場面も温かくて優しい。
それだけに菊池さんの無事を祈らずにはいられない。なのに手術シーンのままページ数は残りわずかで焦る。ちょっと待って、このまま終わらないで。っていうか早く電子メスで無駄に体を傷つけてるこいつの手を、誰か早く止めて。そして手術室から引きずり出して、誰か颯爽とヒーローみたいに有能な医者が現れてよ。
どうかどうか。菊池さんの無事を見届けてから終わって・・・という願いもむなしく、手術の結果がわからずに終わるというモヤモヤ。でもきっと助かったと信じたい。後遺症もなく無事に・・・とまではいかないかもしれないけど。また弥生と二人笑い合う日々が訪れてほしいと切に願う。
「わたしはいい子でもわるい子でもない。
わたしはわたし。
今はただ、このひとを守りたい。」 -
Posted by ブクログ
家族の気持ちがバラバラになってしまった三河家。
まだ9歳のさちは家族の目につかないように身を隠すことを覚え、お母さんに当たられても無表情で姿を消し1人で声を殺して泣いていた。
自分の部屋のないさちが、どこで寝ているのかを誰も知らないという状況だった。
そんな三河家を再生させるには何が必要だったのか?
物語の中ではいろんなことが起きるけど、全てを動かしたのはお正月の朝だった。
さちが着物を着たその瞬間、お母さんはまっさらな気持ちでさちを見たんだと思う。
さちを疎ましく思っていた理由を抜きにして1人の娘として。もしかしたら初めて。
親子に限らないけれど、この子はこういう子だという印象はなかなか消えないものだと思う。
一度「こういう人」とインプットしてしまうとその前提から全ての解釈がスタートする。
だから同じ言葉でも言った人によって受け取る側の印象は全く変わってしまう。
誰かとの関係を改善したいと思うなら、それまで構築してきた人物像を全て消去して白紙の状態で相手を見るしかない。きっと。
それは簡単なことではないし、何も変わらないかもしれないけれど、自分の目を変えなければそこに映る相手の姿は永遠に変わらないのではないか。
さちが家族の前で笑えるようになったことが嬉しい。
三河家が本当に小さなきっかけから再生したように、形だけの笑顔を作らなきゃいけない日々はいつの間にか終わっているのかもしれない。
ある日唐突に心から笑っている自分に気付く。
そんな瞬間が訪れますように。