鈴木孝夫のレビュー一覧
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ネタバレ文化に対する言語の影響を独自の視点から論じた,この分野の書物としては古典中の古典と言ってもよいものでしょう。大学生のときに一度読みましたが,約20年ぶりに再読しました。一度目の読書の記憶は皆無と言って良いので,ほぼ初見という印象です。
書かれたのが40年以上前ということと,私がこの分野が専門に近く,それなりの背景知識を有していることの2点を踏まえて言うならば,かなり独自の論陣を張っているなという印象です。言語相対論という名称で知られている,言語が事象の認識に対してどのような影響を与えているのかを研究する分野にかんして,教科書的な内容でなく,鈴木氏が独自に研究・調査して得られた観察や知見が本書には多く盛り込まれています。この点では,この本はこの分野の通り一遍の知識を身につけるには適してはいないと思いますが,鈴木氏の観察眼には感心させられますし,なるほどと思わせる記述がいくつもあります。
難点を挙げると,話があっちこっちへ飛んで一つのトピックを一貫して論じていないことがままあり,まるで鈴木氏の講演を聞いているような印象を持ちました。しかし,これは著者の伝えたいという気持ちがほとばしっているとも取ることができます。鈴木氏のあふれ出る好奇心・探求心から様々な文献を渉猟し考察した結果が生き生きと記述されており,難点を差し引いても一読に値します。 -
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高校生の時に読んだ新書と、古本屋で偶然の再会を果たし、懐かしくなり購入・再読。
国やその地の持つ文化により物事の見方が異なり、それが「ことば」という現実の切り取り方の違いにも反映されていることが具体例を交えてわかりやすく述べられていた。
もっとも印象に残ったのは、第6章の「人を表すことば」の最後の部分。
ことばという観点から日本人の持つ傾向をさらけ出しただけでなく、絶えず相手の顔色を窺うといった日本人の持つ問題点までを論じている。
本書が最初に書かれたのは1973年。
多方面でグローバル化が叫ばれる今日、果たして日本人は本来の意味で「グローバルな人材」になれているのだろうか。そんなことを考えさせられた。 -
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言語学者・鈴木孝夫による1973年の著作。
著者は本書の目的を、「この本の中で私が文化と称するものは、ある人間集団に特有の、親から子へ、祖先から子孫へと学習により伝承されていく、行動及び思考様式上の固有の型(構図)のことである。・・・この本の目的は、ことばというものが、いかに文化であり、また文化としてのことばが、ことば以外の文化といかに関係しているかを、できるだけ平易なことばで明らかにすることにある」と述べている。
そして、「私の立場を、一口で言えば、「始めにことばありき」ということにつきる。・・・ことばがものをあらわしめるということは、世界の断片を、私たちが、ものとか性質として認識できるのは、ことばによってであり、ことばがなければ、犬も猫も区別できない筈だというのである」と、ソシュールの言語学の中心的考え方をわかりやすく述べるとともに、各言語における「世界の断片」の切り方が、それぞれの文化といかに密接に結びついており、言語によって違うものかを、多くの具体例を引いて説明している。
更に、人を表す場合に、インド・ヨーロッパ語系(ラテン語、英語等)が、(絶対的)関係に関わらず、自分と話し相手を規定する(英語ならIとyou)のに対して、日本語では、人の呼び方が話し相手との関係に依存しがちである(上司のことは役職で呼び、部下のことは名前や「キミ」と呼ぶなど)が、それは西欧の文化が、観察者と対象の対立(自他の区別)を基礎とするのに対し、日本の文化では、自分と相手の関係が特定できないと安定した人間関係を組むことができないという、文化の基本的な違いが反映されているという分析を展開している。
外国語・外国人に接するに当たり、多くの示唆を与えてくれる良書。
(2005年12月了) -
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言語学の“3K”は、やらない――とおっしゃる言語社会学者、
鈴木孝夫先生の日本語称揚集成。
「言語学の3K」とは、
敬語(の研究),系統論,漢字の起源解釈の三つを指すのだそうだ【*1】。
本書は『新潮45』で2007-2009年に18回に渡って連載された「日本語万華鏡」の
加筆修正版で、新しい表題は最終回のタイトル。
個人的には「日本語万華鏡」のままの方がよかったような気もするけど、
ともかく、最近になって改めて読み直したくなったので購入。
日本語独特の曖昧さ、ややこしさと、その理由について、
また、欧米の言語との違いについて、
一般人が自明のこととして普段深く考えずにいる問題に光を当て、
わかりやすく解説。
日本語は日本国内でしか用いられないマイナー言語だと考えられているが、
使用者である日本人は一億人以上存在するのだから、立派な「大言語」なのだし、
政治経済における国際的な交渉力を底上げするためにも、
日本語および日本文化を積極的に海外へ発信すべきである――とのこと。
最近は、漫画やアニメを通して日本に興味を持ち、
日本語を理解したいと考える諸外国の人が増えている様子が、
盛んにメディアで取り上げられていて、
少しずつ、いい方向へ向かっているようだけれども、
相変わらず政治の場では今一つ、二つ、といったところだろうか。
しかし、連載中同様、
不意に遠藤ミチロウの名が出てきたところ【*2】で笑ってしまった。
【*1】『新潮45』2007年5月号「ビートたけしの達人対談」より。
【*2】『新潮45』2008年1月号,本書ではp.163。 -
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日本人の考え方の特殊性についての鋭い考察。
日本人は混合文化を創る柔軟な才能をもっている。
反面、固有文化を大切にしないという点がある。
また島国という特殊性から国外のことに関しては半透膜効果が生じる。
外国をすべて良いものと考える蜃気楼効果は、外国との距離と時間によって生み出されたものである。
外国の醜いところが見えないバスト型外国感を持っている。
実は、欧米は日本人が一般に考えているよりもズルイ。
つい近年まで奴隷制、植民地、人種差別を行っていた。
非西欧社会に対して侵略と略奪を繰り返していた歴史を忘れてはいけない。
日本が欧米の侵略主義に立ち向かった第2次世界大戦をきっかけに世界が変わった。
日本は、いつまでも平和だと考えるのは不沈戦艦幻想。
日本は平和国家として独自性を追求すべき。
そのために外交に秀でたエリート集団(現代版防人)を育成して言論で立ち向かうことができる言力国家を目指すべき。 -
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"日本の小説で、始めて主人公が登場してくる時、もし作者がその人の顔を詳しく描写するならば必ず、目や口や眉と共に、鼻がどうだということが出てくる。ところが英語の小説を読んでいるうちに、顔が克明に描かれている場合でも、どうしたことか鼻への言及が少ないことを発見した。" "どんな微細なことも見逃さない名探偵が、相手の顔を、じっくりと見て、眉や、口や、あごの形や、眼の様子から、相手の性格を読み取ろうと努力しているのに、なぜか彼は鼻のことにふれない。日本の作者がこのような調子で、人の顔を描くとき、鼻を落すことがあるだろうか。" "一般にヨーロッパの小説で、鼻に言及がある時は、このように(ロスタン『シラノ・ド・ベルジュラック』、ゴーゴリ『鼻』)醜い欠点として扱うことが多い。どうも欧米人は、鼻をなんとなく猥褻な感じを起こさせるものと見ているようだ。"
"顔の描写の様式を調べているうちに、もう一つ面白いことに気がついた。それは英語の小説では、人物のあごに非常な注意が払われているという事実である。" "用いられている形容詞は殆んど、その顎の持ち主の性格に関係しているのが特徴である。人物の生命力、人柄、意思の力、決断力の有無を判定する部位として、人の顎を見ているのである。" "これに比べると、日本人の顎の描写は、はるかに形態的で視覚的だ。顎がしゃくれている、長い、張っている、とがっている、角ばっている、二重あご、また顎のない人というような、よくきく表現はすべて外見に関している。人の性格の表われる場として顎をみることは少ないのではないか。" -
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鈴木孝夫さんのこれまでの研究内容、持論がわかりやすく凝縮された一冊。日本、日本語の素晴らしさの世界への発信という著者の希望は、不十分ながら近年急ピッチで進んでいる気がする。少子化で外国人労働者を多く迎え入れたり、観光業に力を入れたりする中で、不可欠だと日本社会が思い始めたのか。その対象が日本のアニメやエンタメ部分ばかりなのは、鈴木さんの意図するところではないかもしれないし、相変わらず日本の英語へのコンプレックスは凄いけれど(私もそのひとりか)、。
また鈴木さんが研究対象そのものでなく、広く好奇心を持って積極的な行動力を持っていたことが、これだけのインパクトの大きな業績に繋がっていると思った。目の付け所と対象の絞り方が凄い。当たり前と思われていることに改めて疑問を持ち、分析、発展していくことはどの分野でも大事なのかもしれない。 -
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課題で出されたものだったのだが、非常に面白かった。
前半は(比較)文化論として、後半は言語学として述べられている。
小学校から英語の導入を、なんて言われているが、その前に日本語の持つ特徴と魅力を丁寧に伝えておいて欲しい。
そうでないから、漢字テストは10回書いて丸暗記、なんていうことで終わってしまうのであろう。(かくいう私もそんなもので済ませていたが)
安易にグローバル化を掲げるのであれば、この一冊分くらいの知識は持っておかねばならないと思うのだ。
言葉とは移り変わりゆくものだけれど、著者も述べているように、我々が日本語を肯定していかなければならない。
若い内に読んでおいて欲しい。 -
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タイトル通り日本語と外国語の違いなんだが、普通に勉強してるだけじゃ気付かないような意味の違いを解説している。
色に対する認識の違いなどは目から鱗が落ちるような思い。
また、「とる」という言葉に対する違いも、日本語では漢字による表記分けがあるが、英語では用途によって単語が違う。どちらも同じようなものだと思っていたが、日本語では口語だけでは意味が判別できず漢字による表記が必要になる(といっても文脈でわかるだろうが)など、気付かされることが色々あった。
世界共通言語を作るにはこういったそれぞれのものに対する認識を共通化させることをせねばならないという点などは「なるほど」と思える内容だった。
言語だけでなく、国(言葉)による物事の捉え方の違いを知るきっかけにもなる一冊。