鈴木孝夫のレビュー一覧
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とても面白かった。
言語学と日本語のことがもっと好きになる。
第五章で、カタカナ語の氾濫に対してバチギレ(誇張)している著者の熱量が好き。
>いったい日本以外の国で、このように自国民だけしか飲まない(読めない)出版物の名前だけを、しかも国民のすべてが理解するとは限らない外国語で表示し表紙を飾るという、不可思議なことが流行しているだろうか。もしあるとすれば、それはどこかの国の植民地である。
日本語のロゴが書かれたTシャツは日本人にとってはダサいものだが、英国では英字ロゴのTシャツは普通に売られている。
当事者たちはどんな気持ちなんだろうと想像することもあったが、そもそも「母国語はダサい -
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言語学者で慶應義塾大学名誉教授の著者により記された本書は、わたしたちがことばによってどのように世界を捉えているのか、またそれがいかに他言語・他文化と異なっているのかということについて述べられています。
しばしばわたしたちは、ものというものの存在がまず先にあって、それに対応づけを行うようにことばというレッテルを貼っていくのだというような錯覚を覚えます。
しかし、実際はその逆で、ことばがあるからものを認識できるのだと述べられます。
例えば日本語では「湯」「水」「氷」をそれぞれ区別しているのに対して、英語では「water」と「ice」としか区別されません。
一方、日本語では「ワニ」としか呼ばな -
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言語が違うということは、世界を見るフィルターが違うということ。
生まれたときから見ている世界を違ったフィルターを通して見ているとすれば、言語の違いが単純に「言葉が通じない」以上の意味をもつことがわかる。文化も考え方も、ものの捉え方も変わってくる。
とりわけ、日本語における人称代名詞が、日本人の文化や考え方に多大な影響を及ぼしていることがわかった。
自分のことを「ママ、パパ」「お姉ちゃん」など生得的階級が上のものは、自人称としてその階級を誇示するために使用することができ、ゆえに日本人は年齢、生まれもった資格(性別、階級)を重んじる文化が発達した。
また、対象と同化することで自分の位置付け(自人称 -
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言葉を真剣に考察した結果生まれた本だと思った.日本語が不完全で不便であることを多くの事例を挙げて検証しているが、その中で多くの語句が目についた.例えば、「文字は言葉ではなく、ただ単に目に訴えるしるしによって言葉を記録する一つの方法に過ぎない.」 イギリスのブリタニカの本質を、「客観的な知識の集大成ではなくて、実は世界をイギリス人がイギリス人の目で、彼らの価値基準で解釈したもの」と称していた.日本語に人称代名詞が多いことに関して、「日本人は自分がなんであるかという自己同一性の確認を他者を基準にして行う傾向が強い.」 英語を国際補助語としてとらえて、現在学校で教えている英語の不完全さを指摘していた
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ネタバレ 購入済み
感想
第四章、五章に関して、作品の中で挙げられる例はなんだか難しいと思うものもあったが、よく考えてみると私たちの身近に頻繁に見られる現象や出来事に当てはまることもたくさんあり、考えさせられることが多かった。また、英語を学んでいる身としては、初めの方に登場した、日本の中で日本人が使用しているカタカナ表記の英単語が表す単語の意味と、実際に英語を日常的に使用して生活している人が思う単語の意味には、時に全く違う内容を表していることもあるのだということに驚いた。さらにその違いに気がつくには、違っていないと思っている考えを捨て、常に私たち日本人の思うこの単語が表す意味と、英語を話す人々が使用するこの単語が表す意
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ネタバレ良著。まえがき,1~5章・6章1節6節,あとがきを読んだ.
<印象的なものを列挙>
1,2章:文化によって各言葉で各事象概念を包括できる範囲が異なる.よって文化によっては区別されない事象概念を区別する文化があるために文化によって言葉の数が異なる.
3章:名詞は人によって着目ポイントが異なるので動詞や形容詞の方が定義しやすい.言葉の意味は個々人の体験に基づくため言葉の定義を言葉で示すことができても意味を示すのは至難の業である.辞書ではよく説明のループが起きている(特に基礎語(これ以上分けようがない言葉)において多い).
5章:文化によって感じ方が異なる(この例ではイギリス人と日本人の動物観 -
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平田「…いまの語学教育は、『使える』ということのみに偏っている」
鈴木「…日本のこれからの一般の外国語教育は異文化理解ということを主にして展開すればいい。『月は黄色』と日本人は思うけれど、白と思う国もあるんだよ。中国では太陽が白なんだよ。…逆に日本の日の丸は赤でしょう。ところが世界中の人に『これはなんだ?』と聞いたら、ほとんどの人は『血』って答えますよ。だいたい世界の人の赤い丸は血なんです。日本人だけが太陽だと思っている。…」
言葉や文化の違いの「面白さ」を
どこかに置き忘れて
使うことばかりを念頭に言語教育をしていないかと
考えさせられたやりとり -
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言語社会学者、鈴木孝雄の書。
世界には6千もの言語があるとのこと。
日本語を他国の言語と比較し、その独自性を追求していくなかで、日本語の素晴らしさを説かれている。
当たり前のように接し、当たり前のように使用している母国語の日本語。だからこそ、気付かないその魅力を十二分に解説されている。
二重音声、色、人称の話は感心しながら楽しく読めた。
また、文明と言語の絡み合いについて力説されている当たりは、後段の日本語教のすすめに説得力を与えている。
日本語が、世界から、そして日本人自身から過小に評価されている点について、それを大きく撥ね除けるように日本語の魅力が綴られている。
著者は新興宗教を -
Posted by ブクログ
ネタバレ前に読んだ「ことばと文化」もべらぼうに面白かったが、
これもそれに迫る勢いで面白い。
りんごは何色か、
太陽は何色か、
虹は七色か、
といった日常的の一旦から、
言葉と密接にかかわる文化の違いを明らかにしていく様はエキサイティング。
辞書での意味の一致が必ずしも環境認識と一致しているとは限らない、
というのは見落としがちな事実だな。
他にも、
イギリス人が靴を脱ぐのを嫌がるのは、
「足」の持つ根本的な意味の違いから来ているという考察。
日本語の漢字の音読みと訓読みという、
同一概念の二重音声化と同一表記の双面性が、
高級語彙の理解に寄与しているという考察。