佐藤高子のレビュー一覧
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ネタバレ冒頭の作者の前書きが1919年という血生臭い第一次世界大戦を経た世界に病に苦しむ作者から送られた物語であることを思い出させる。
ストーリーはキキ+ラゲドー、トロット+キャプテン・ビル、ドロシー+魔法使いの3つのグループを追いながら一つの流れに集約されていく。キキ+ラゲドーのシンプルな悪い心が魔法の力を使って決して愚かではない森の獣達をそそのかしていく過程は時代の暗喩なのかもしれない、などという考察はあまり意味がないかな。ちょっとした緊張感、機転で話がどんどんと展開していき楽しく読める。最後にはラゲドーが悪意に満ちた放浪から解放されたようで嬉しい。ガラスのネコの扱いやピンクのネコもそうなんだけど -
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ネタバレ割と一直線めのロードトリップ的ストーリーはシンプルだけど、昔のエピソードが繋がる感じととポリクロームの軽やかな愛らしさ、ミセス・ユープのエピソードのちょっとした緊張感、もう一人のブリキ人間の出現とその過程で生み出された寄せ集め人間のホラー感、かかしと木こりのなんとなしに滲み出る性格の歪さが味わい深い。これまでシリーズを読んできていればとても楽しめる。
以下備忘的あらすじ。
暇を持て余すブリキの木こりとかかしのもとにウートが現れ、木こりの薄情さを非難して元恋人ニミー・エイミー探しの旅が始まる。
一行はルーンの国で大暴れし、ユープの城でミセス・ユープの魔法により動物に変えられるも脱出。ジンジ -
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サスペンス風味があってこれまでのオズの物語と少し違う雰囲気で面白い。カエルマンという身も蓋も無い名前の新キャラをはじめとして多彩なキャラたちもそれぞれいい味を出している。途中までは表紙の目つきの悪い鳥は何?って感じだけどなるほどねという感じ。グリンダをも困らせる悪役ウグはなんか知的な悪役でこれもいい味。クマ・センターのラベンダー・クマとピンクのコグマもなんか不思議。ピンクのコグマはチクタク以上にすごいマシン。そしてスクラップスの陽気さがとても良い。ドロシー、ベッツィ、トロットのアメリカから来た少女たち3人組が揃い踏みだけど変なキャラたちに囲まれるとドロシー以外はやはり目立てないな。あと急にトト
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ネタバレなんかこれまでの作品と少し雰囲気が違うところがあって面白い。少しだけではあるけど作者がメタに作品に関わるところとかドロシーやオズマとは性格の違うベッツィやポリクローム、アン女王などの個性豊かな女性たちとか(薔薇のオズガ姫はあまり活躍しないけど)。訳者あとがきにもあるけど過去作との矛盾上等で筆のノリで書いているようなところも感じられる。ポリクロームとモジャボロはオズへ続く道で会ってるのに初対面になってるとか、モジャボロの愛の磁石が磁石なのにちゃんと見せなければ効果がないとか。ノーム王はエメラルドの都で記憶が消えて悪人でもなくなったはずなのに前以上の悪人になって再登場とか。
でもそんな細かいことは -
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ハヤカワ文庫で原作の順番を変えて優先的に日本語訳が出版されたこの作品。確かに間に挟まれた「オズの不思議な地下の国」「オズへつづく道」と比べると面白い。この作品ではおおよそ最初から最後まであからさまな悪役としてのノーム王とその仲間の悪意が継続する。やはりそういう面があると物語としての緊張感が出てくるのだろうな。この前の2作品は困難を与えるキャラクターは出てくるもののすぐに解決する話の連続で優しみに溢れるサイドの部分が多かったのがやや冗長に感じられるところはあった。オズの世界にはこの様な悪意は余りないとすればオズの世界に住むことが楽しいことなのかどうかわからなくなってくるが。
これまでのオズシリー -
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ちゃんと再読したのは四十数年前の小学2年生くらい以来かもしれない。その後もオズシリーズはハヤカワ文庫で追っていてオズのリンキティンクまでは新刊で読んでいたけどその後は読めていなかったのでここでシリーズ全巻再読しようと思っている。
新井苑子さんのイラストが改めて素晴らしいな。今の時代だともっと多様性がある様に書かなければ、みたいになりかねないけどオズだけではない外国自体への憧れを感じさせるイラスト。
最後のドロシーがカンザスの草原に帰ってくる場面を描いたイラストは初めて読んだ小学生の時にドロシーたちの長い旅路の物語が終わる寂しさを感じた夜の2段ベッドの上段オレンジ色の薄暗い電球の中でお話に夢中に -
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読み終わってしばし呆然。ずっしりと重い課題と、ひとかけらの希望を飲み込んだような気分。SFという括りを超えた名作だと思う。
ウラスとアナレスの双子星が舞台。ウラスは自然豊かで長い人類の歴史を持つけれど、競争主義社会で貧富の差がどうしようもなく広がっている。対するアナレスは荒涼とした植民星で、人々は協力し合い、飢えと闘いながら必死で生きている。一見すると共産主義礼賛のように捉えられてしまうのか、発表当時は作者の政治的思想に対して様々な批判があったらしい。私には、現代の政治的イデオロギーなどを超えた、普遍的な問題提起だと感じた。もっとも作者は、問題提起など全く意図していなかったらしいけれど。
主人 -
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共産主義社会を思わせる世界の荒涼とした惑星アナレスと、現代の資本主義社会や地球環境をほとんど写したかのような惑星ウラス。
この二つの惑星を舞台に、アナレス出身の科学者、主人公シェヴェックという個人の人生と社会、人々との関わりを重厚なスケールで描いた一冊。この本そのものが膨大な思考実験であり、なおかつ一人の男の物語としても一級品で読みごたえ抜群。
所有せざる人々の住むアナレスと、所有主義者(プロバタリアン)の住むウラス。
アナレスに生まれたシェヴェックがウラスに出発するに至るまでと、ウラスに到着後の人生が交互に描かれていくが、どちらの惑星でも個人というよりも社会そのものがシェヴェックに苦難の道 -
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ネタバレジョン・レノンが『イマジン』の歌詞の三番で「少し難しいかもしれないが想像してほしい」と歌った"所有のない世界”を実現した惑星アナレスから、資本主義と社会主義が対立しながらも美しい繁栄を謳歌する惑星ウラスに降り立った孤独な物理学者の物語。
無政府主義を現実のものとしたアナレスでも、最後の障害は「人々の慣習にすがる態度」だった、というのが衝撃的だった。
しかし、ほんの小さな希望が、長い、長い旅を終えて、アナレスに帰還する宇宙船の中、遠く離れた、古い歴史を持つ恒星系セインから来たひとりの下士官によってもたらされる。
彼は命の危険があり、二度と戻ることができないかもしれないアナレスへの同行を -
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