佐藤高子のレビュー一覧
-
-
Posted by ブクログ
最初はなかなか慣れず、アナレスとウラスのセクションの時間軸が今ひとつわからなかった。最後まで到達してようやく理解でき、読み終わった直後にもう一度読み直した。
『闇の左手』にも記載したが、そもそもル=グィンのハイニッシュシリーズはSFというジャンルなのだろうか。
確かに異星の物語で近未来という意味ではSFだが、文化や人に焦点が当てられていることを考えると、異星というのはただの舞台に過ぎないように感じる。
ル・グィンの素晴らしい点は、やはりその精密な世界構築だ。描く世界の文化や気質、時には歴史など、説得力のある世界を描く。今回は一般に資本主義の象徴のように語られるウラスと、共産主義のアナレスと -
Posted by ブクログ
人間にとっての理想郷はどこにあるのか? この小説の主人公であるシュヴェックとともに、読者である自分もそんなことを考えていました。
経済の繁栄した自由主義・資本主義的な惑星のウラス、自由や平等をモットーに荒廃した惑星を切り開いてきた、共産主義的な惑星のアナレス。
歴史、政治、文化、言語……、回想と現在を行ったり来たりし、二つの惑星の違いを丹念に浮かび上がらせていく、その詳細さは、本当に二つの世界があるように思わされます。
シュヴェックは共産主義的な惑星のアナレス出身。そんな彼は、経済や文明が繁栄しているウラスの光、そして闇も先入観なく見つめます。時間や仕事に囚われ、芸術にすら価値を -
Posted by ブクログ
アナレス:荒れ果てた惑星、原始的な共産主義。
ウラス:豊かな惑星、資本主義。
単純な物質だけでなく、人間関係の「所有」も排した共産主義の惑星、アナレス。そこの天才物理学者、シェベックが主人公。
あからさまな権力機構がなくとも、慣習に縛られ、息苦しくなった彼は、自らの研究成果をより必要としているであろうウラスに亡命するが、そこで彼はゼイタクを満喫する研究者やハイソサイエティに接する。しかし、そこでも彼はやはり孤独なのであった。
「共産主義」を題材にした小説というと、「1984」や「われら」のような冷徹な独裁者が君臨するディストピアものしかなかったので、今回の「飢饉や、戦争はあるがそこそ -
Posted by ブクログ
オズの魔法使いのボームによる連作ファンタジー。ボーム自身の記念すべき処女作でもあります。
舞台となるモーの国は太陽は沈まずお菓子でできており、そこに住む人々は年も取らなければ死にもしない。必要なものはなんでも木に生っている。そんな夢の世界のような理想郷なのですが、そこではアレコレと騒動も起こるのです。
王様の首がムラサキドラゴンに飲み込まれたり、モーの国に鋳鉄の大男が攻めてきたり、癇癪持ちの姫の癇癪を治すために魔女の元に旅立つ若者がいれば、足の親指を盗まれた姫は取り返そうとする。アベコベの国や巨人の国サル人間の国に迷い込んでの騒動などなど。
でもどんな騒動に巻き込まれても、大変な目に遭っても、 -
-
Posted by ブクログ
40年近く前に描かれたユートピア。SF界の女王、ル・グィンの古びない傑作。
物語は、主人公シェヴェックが自らの画期的な物理理論を発展、完成させるために、故郷の星アナレスを離れ、惑星ウラスに向かうところから始まる。
物語の舞台は、アナレスとウラスという二重惑星。アナレスは、乾燥し、あまり人が住むには適さない環境の星。ウラスは緑と水が豊富な地球に似た星。
荒涼としたアナレスには、元々は人が住んでいなかった。アナレスに住む人々は、オドー主義者と呼ばれる政治的亡命者、革命主義者たちの子孫だ。
およそ2世紀前。ウラスの資本主義、自由主義経済国ア=イオから、オドー主義者たちが、自らが理想とする共 -
-
-
Posted by ブクログ
オズの魔法使いシリーズ2作目。子供に読み聞かせをしながら私としては実は終盤まで内心でだいぶ不満があったのですが、終盤の展開に見事にやられたので、続けて第3作も今注文したところです。
訳者が違うということも理由のひとつではあるのでしょうが、物語の出だしからこれは前作とは違う作者が書いているのではないかと疑ったぐらい、なにかが違うと感じました。前作はどこか抽象的で各キャラクターも設定も何かのシンボルのような印象があったのに対して、私が本作の出だしで主人公の少年に感じたのはもっと生き生きした具体性でした。それでこれは筆者の話術に磨きがかかったということかもしれないと期待したのですが、中盤にさしか -
-
Posted by ブクログ
惑星ウラスの空に浮かぶ大きな月・アナレス。それはウラスよりは小さく貧しいけれど、大気をもったひとつの惑星。
かつてウラスでは、オドーというひとりの人物が提唱した主義にしたがい、やがてオドー主義者たちがあつまり、革命を起こした。ものを所有することをやめ、権力というものを廃し、貨幣による経済を捨てて、すべてのものを分け合う、完全なる共産主義の理想郷。彼らを危険視した当時の政府は、彼らに新たな大地――空に浮かぶ月・アナレスを与え、彼らをそこに隔離することで、ウラスの平和を保とうとした。
以来、交易船に載せられた積荷と、わずかばかりの乗員が、宙港同士を行き来する以外、完全にアナレスは閉ざされてき -
Posted by ブクログ
『オズの魔法使い』の続編、オズ・シリーズの第6作目。
(早川書房ではシリーズ第4弾として出版されています)
オズマ姫の計らいで、カンザスに住んでいたドロシー一家はオズの国へと移住することに。のんびり家族で観光を楽しんでいた一方、ノーム王は魔法のベルトを取られた復讐に、オズの国を征服する計画を企てていた。地下にトンネルを掘り、オズの住人に気付かれる事なくエメラルドの都へ攻め込もうというのだ。
オズマ姫はノーム王の恐ろしい計画に気付いたものの、良い案が浮かばない。一体どうやってオズを守るのか…?
元々作者のボームは、この巻でオズ・シリーズをお終いにするつもりだったので、シリーズ最後に相 -
Posted by ブクログ
『オズの魔法使い』の続編、オズ・シリーズの第3作目。
乗っていた船が嵐に遭遇してしまい、ドロシーはニワトリのビリーナと共にオズの国の近くにあるエヴの国へと流れ着く。彼女はそこでオズマ姫達と出会い、エヴ王家の人々が地底に住むノーム王に捕らえられていることを知った。
ドロシーはオズマ姫と協力して救出へと向かうが…。
この巻からドロシーが再登場です。
チクタクやラングイディア姫、そしてノーム王…個性豊かなキャラクターがたくさん登場しています。特にノーム王との対決は見物で、ノーム王の策略にかかって皆が1人ずつ消えてしまうところではハラハラしました。
にしても、オズマ姫の性格の変わりように