井上一夫のレビュー一覧
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言わずと知れた87分署シリーズの、記念すべき第一作。「この小説に現れる都会は架空のものである。ただし警察活動は実際の捜査方法に基づいている」という有名な扉書きも、マクベイン節などと言われる独特の美文調も、いや、そもそも警察小説というジャンル自体が全てはここから始まったのだ。捜査するマシンでしかなかったミステリーの刑事たちは、マクベインの登場で初めて血の通った人間になったのである。とにかく読み始めると、いつの間にか刑事たちのキャラクターに引き込まれ、気が付けばキャレラたちと一緒になって喜んだり、悲しんだりしている自分に気付く事になるのだ。
87分署シリーズには刑事ものの全ての要素が詰まっている。 -
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87分署シリーズ、記念すべき1作品目。
1956年の作品なので、今の時代に読むと捜査方法や動機、表現等が古い部分もあるし、斬新に思わないだろう。
それは今の時代に読んだから当たり前なのである。
そんな部分を差し引いても、この作品は非常に面白い。
その最大の魅力は個性的なキャラクター達。
87分署の刑事全員が泥臭くて感情的で、それでいて魅力的だ。
この作品には天才的頭脳を持つ、クールなキャラクターは出てこない。
同じ口径の銃を所持している前科者のアリバイを調べる為、暑さにうんざりしながらも、ひたすら足を使って嗅ぎまわったり、科学捜査で発見される犯人の詳細な特徴に、なんでこんなにわかるんだろう -
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2009年の読み初めは、ボンドの原作!しかも大好きなボンドガールソリテアの登場するこの作品。
007の小説、初めて読みました。
映画とは違って、ボンドは意外と人間くさく、ストーリーは意外とハードボイルド。
そして、文章が美しい。さすがシェークスピアのお国、イギリス。
「まばらな木立ちの間で立ち止まると、ボンドは涼しい朝の空気を味わった。木立ちの間をすかして東の方を見ると、星影は色あせてゆき、地平線が夜明けの輝きを見せはじめている。こおろぎの鳴き声はほとんどやんでしまって、島のどこかで物真似鳥が夜明けの歌を歌いはじめた。」(ぱらっとめくってP273)
「ハイビスカスのまわりを飛びまわっていたエ -
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87分署シリーズ、初めて読んだ。
夫を捕まえたキャラレ刑事に復讐しに、警察署に押し入る女クリスティーン。ニトログリセリンを持っており、部屋にいる刑事を脅す。キャラレは別の事件の捜査に出ていて不在。キャラレ刑事がかえってくるまでの部屋での様子と、キャラレ刑事の事件の捜査が交互にえがかれている。
部屋にいる刑事はなんとか外にこの事件を伝えようとするがなかなかうまくいかず、ニトロが本物なのかどうかよくわからないまま時間だけが過ぎていく。
昔の話なので、なんとなく古い感じはするが、部屋での緊迫する様子が面白かった。
余談だが、プエルトリコが、プエルト・リコ(Puerto Rico)ということを初めて知 -
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アメリカの作家エド・マクベインの長篇ミステリ作品『サディーが死んだとき 87分署シリーズ(原題:Sadie When She Died)』を読みました。
『ショットガン 87分署シリーズ』に続き、エド・マクベインの作品です。
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雪を予感させる雲が覆う下で、街はクリスマスの飾りつけにざわめいていた。
87分署に、殺人事件のしらせがとびこんだのもそんな時だった。
刑事専門の弁護士ジェラルド・フレッチャーが、自宅の寝室で妻サラーの刺殺死体を発見したと報告してきたのだ。
捜査は開始された。
犯行は稚拙で、物盗りによる計画的な犯行とみることができた。
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ネタバレニューヨークモデルの架空の都市を舞台にした刑事シリーズ、87分署の一作目。
おもしろかった。
本格モノが好きなミステリファンにはちょっと物足りない(解決が唐突過ぎて…)けど、警察組織と刑事と都市を主人公にした小説としてはかなり楽しめた。この都市の茹だる様な暑さ、嫌気がさす様な熱波、市民が暑さに参ってる描写がほんとにすごくて、面白かった。読んでる間中都市のもわっとした不快な暑さを感じ続けてた。
ミッシングリンクものといえばそうなんだけど、やっぱり解決が唐突すぎるなぁ、とは思ってしまった。刑事ものだから納得感はあるんだけど。
読みながら、やたら刑事の妻だの母だの彼女だの、個人的な人間関係の描写が -
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「翳りゆく夏」に登場した作品ということで読んでみた。
ある製靴会社の重役であるダグラス・キングの息子を誘拐して身代金をせしめようとしたケチな悪党二人組。ずさんな計画のなせる技か,間違えてキング家の運転手の息子を誘拐してしまう。しかし間違いに気づいて諦めるどころか,あくまでもキングに身代金の支払いを求める犯人。キングは会社経営の主導権争いの渦中にあり必要な株式を手に入れるために全財産をかけており,運転手の息子のために支払える余分な資金がなく,支払いを拒絶する意向を示している。しかし幼い子供を見殺しにしたとあってはキング氏の個人的な評判も会社の評判も地に落ちる。果たして事件はどのような結末を迎える