永井淳のレビュー一覧
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マープルもの9作目。
本書はクリスティー74歳の時の作品だそうですが、さすがの円熟ぶりといいますか、「あっぱれ!」な完成度でございました。祝日に一気読みです〜。
転地療養のため、セント・メアリ・ミードを離れてカリブ海のリゾート地にやってきたマープル。
歳を重ねて頑固になる人は多いですが、甥の親切なおせっかいをありがたく受け入れ、「ほんとうの意味の若さの精神を発揮して、それほどおもしろいものなら自分もなんとかそれを好きになろうと努力しよう」(p31)という姿勢にはとても感心しました。
また、さまざまな人との会話の中で、時にかまをかけたり、ぐっと反論をこらえたり……次々繰り出される会話術にも脱帽。私もこんな聞き上手になりたい。
そして見知ったサー・ヘンリーもクラドック警部もいない中、バディとなるのはたいへんなお金持ちであるラフィール老人。
”死を目前にした剣闘士”同士のやりとりは、退官後戦場に戻ってくる老兵士のようなかっこよさがありました!
後の作品である「復讐の女神」が出てきましたが、これは続編にあたるとか……?うーん楽しみ!
本書のキーワードである”噂話”は、やはり誰しも気になってしまうもの。
旅先という特定の環境で、人々の口の端にのぼる噂話がいかに広まり、どんな人物像を形成していくか……。それをもとに人間を緻密に描いていくクリスティーの腕前は、やはりさすがの一言。
リゾート地には縁がないので、こちらはいつかドラマ版でも観てみたい作品です〜。 -
Posted by ブクログ
1964年の作品。
ミス・マープルシリーズ9作目。
ミス・マープルは療養のため、カリブ海の島サントノレに保養に来ていた。
話好きなパルグレイブ少佐は、ミス・マープル相手に妻殺しの殺人犯の話をして、殺人犯の写真をみたいかとミス・マープルに尋ねる。しかし、そこに入ってきた人々の顔を見るやパルグレイブ少佐は顔色を変え、写真をしまい話題を変えてしまう。
その翌日、パルグレイブ少佐は自室で死んでいた。持病の高血圧の薬が原因ではないかと医師は考えていたが、ミス・マープルはパルグレイブ少佐は高血圧ではなく、これは殺人ではないかと疑い始める。ミス・マープルは身体の不自由な大富豪で偏屈物のラフィール氏と協力して、事件を解決に導く。
このラフィール氏という偏屈な老人がとてもいいキャラなんですよね。こういう不自由で大富豪の老人というアイコンはクリスティもお気に入りの題材。
他の作品にもよく出てきます。ラフィール氏との関係は次作の「復讐の女神」に続いて描かれています。
今回は療養地での事件とあって、サーヘンリーやクラドック警部などお馴染みの人物は出てきませんが、ミス・マープルがラフィール氏と協力して2人で事件を解決していくところが見どころ。
写真に写っていた人物は誰なのか?
犯人は男なのか、女なのか?
パルグレイブ少佐は高血圧だったのか?
いろんな伏線が張られていて面白いです。事件に関係しているものも、実は全然無関係なものもあって本当に見事だなぁと。 -
Posted by ブクログ
【マープル】
カリブ海のホテルで療養しているマープルは、「殺人犯の写真を持っている」という退役少佐の昔話につき合わされる。
その直後その少佐は変わり果てた姿に…。
クリスティー74歳の作品。
クリスティーが歳をとったからなのか、この作品はおばあさんであるマープルと、介助なしでは歩けないおじいさんが大活躍する。
クリスティーとマープルが同年代なので、もう私の中では完全に2人が同一人物だと思って読んでいる。
マープルはいつもは現場に行かずに安楽椅子形式で推理して、登場するのは最後だけ。
でもこの作品は違った。
マープルの泊まっているホテル内で事件が起きるので、マープルも終始現場にいる。
だからいつもとは違う、動きまわる大活躍の元気でカッコいいマープルが見れて嬉しかった。
だいたい作品順に読んでるので、クリスティーの年齢によって作品が変わっていく様子も面白い。
・離婚問題で失踪して大変だった心境が何となく伝わってきた『ビッグ4』。
・2度目の結婚で幸せいっぱいでノリに乗ってる感じの『そして誰もいなくなった』『オリエント急行殺人事件』
・旦那さんが考古学者でクリスティーも発掘作業を手伝って現地に行っていた『ナイルに死す』『メソポタミアの殺人』
・戦争中で自分の身もどうなるかわからない時期に書いた『カーテン』
・クリスティーが歳をとって、おばあさんマープルが活躍するこの作品。
クリスティーが辿ってきた人生も作品から感じることができる。
クリスティーが晩年までたくさんの作品を残してくれてとても嬉しい。 -
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ネタバレ甥夫婦の厚意で陽光降り注ぐカリブ海のゴールデン・パーム・ホテルに滞在することになったミス・マープル。そこには個性豊かな宿泊客が集まっていた。二組の夫婦、頑固者の大富豪とその世話係、そして退役軍人の老紳士・パルグレイブ少佐。マープルは、話半分にパルグレイブ少佐の長話を聞き流していたが、翌朝冷たくなった少佐が発見される。高齢者が突然死ぬことはよくあることと、事件性も疑われず処理されてしまうが、マープルは少佐が語っていた写真のことが気に掛かっていた。しかしその写真は少佐の持ち物から忽然と消えてしまっていたのである。
少佐の死には何かあると踏んだマープルは、宿泊者たちを相手に捜査を進めていく。
その最中、何かしらの秘密を握っていたと思われる人物が殺害されると、自殺未遂や新たな殺人など事件は連続殺人の様相を呈し始める。
警察が完全に空気の中、マープルはかなり能動的に捜査を進めていく。歯に衣着せぬ物言いの大富豪ラフィールとのタッグがこの作品の見所。年齢は全く違うけれど、ラフィールがジェフリー・ディーヴァー作品のリンカーン・ライムに少し似ていてそこも面白かった。
クリスティ作品は基本的にどの順番で読んでも問題ないが、この『カリブ海の秘密』と『復讐の女神』は明確な繋がりがあるのでこちらを先に読むべき。
「隠し事のある人にとっては、会話はいつだって危険」ポアロも言っていたこの言葉。かなり的を射た考え方だと思う。
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Posted by ブクログ
この年になってクリスティかと笑われそうだが、旅行中に何か読む本をと思って本棚の中から一冊選んで持っていったところ大層面白かった。本棚にあったので初読ではないはずだが、読んだのは何十年か前で内容は完全に忘れていた。
ここ最近の複雑なトリックとサスペンスが洗練されたエンターテイメントと比較して、クリスティなんて非現実的なプロットと時代がかった謎解き話かと軽く見ていたが、穂井田直実の解説にある通り、年を取って判る面白さというものは確かにある。ミス・マープルの年齢に近くなって、そろそろ老人の生活を復習しておくにはよい年かもしれない。シリーズをもうちょっと読んでみよう。 -
購入済み
出会ってしまった
あっという間に話に引き込まれる内容でした。
どうしてあの様な発想が出来るのかと不思議になります。
と言っても、無茶苦茶な奇をてらったような内容ではなく、とても新鮮でした。
今の時代、似たような内容の話ばかりで、面白くないわけではないけれど、新鮮味かけるものばかりで「アイデアは枯渇したのか」と感じていましたが、この1950年の作品に新しさを感じました。
中には多少難解な言い回しの箇所もありますが、理解不能というわけではないと思います。 -
Posted by ブクログ
イギリスを離れ、西インド諸島で療養生活を送るミス・マープル。ある晩、とりとめのないおしゃべりを繰り返す老少佐が「殺人犯のスナップ写真」を彼女に示そうとするか、寸でのところで取りやめてしまう。そしてその晩少佐は亡くなってしまう。
序盤で死体が登場するわりに、事件そのものの進展は遅い。だが、一見「良い人」に見える宿泊客の仮面を一つ一つ剥がしていくことで、物語に深みを与えているように思う。いつもの頼りになる仲間が不在の中、ミス・マープルと相棒を組むのが、嫌味な大富豪というのも面白い。警察や医者と事件に関する話ができない一方、大富豪との会話は老人パワーフル回転で楽しくもあり、若者とは違う視点で物事を見ているのがわかる。(クリスティー自身が年を取り、老人に肩入れしているのかもしれない)
事件そのものは、最初から示されていたのに、目くらましをまんまと食らってしまった。悔しい。