富田彬のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
言わずと知れた名作、同時に難解との評がつきまとう。よって気難しい文体を知らず知らず想像していたのだが、読み始めて早々、むしろ饒舌な文体に面食らった。
しかし確かに捉え所がない。現代の読者からすると、ド頭から「食人種」のあまりに不適切な描き方にやや閉口し、同時にその現実味のなさから写実的に受け止めることをやめてしまう。そのため中盤以降に怒涛のように展開される捕鯨や海洋についての蘊蓄は「本当か〜?」との思いで漫然と頁を繰るだけになってしまう。そうこうしているうちに対峙する白鯨との闘いそのものは、存外あっけない。
なんとなく、狐につままれたような気持ちで本を閉じた。この作品は、何を伝えたかったのか? -
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18世紀のイギリスの片田舎を舞台に上流階級と上流中産階級のいくつかの家の間で巻き起こる、人間模様、恋愛を扱った作品。タイトルの「高慢」はミスタ・ダーシーの性格を、そしてそんなダーシーへのエリザベスの思いを「偏見」と表していると感じるが、この作品の登場人物には誰しもがもつ人の心の裏に見える高慢な心を持ち、互いに探り合っている偏見を見ることができたと感じた。当時のイギリスの気品高いそう言った作法や言葉遣いの裏に、互いに探り合ってアイロニーな含みを持たせてる点に非常に面白みを感じた。そういった、当時の上流中産階級社会規範をうつしながらも傑作と呼ばれる現代の人々にも万人ウケする恋愛小説を書き上げたオー
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大好きな歴史漫画『風雲児たち』にて、漂流していたジョン万次郎一行を救出した捕鯨船のことをふと思い出した。作者のみなもと太郎氏曰く、欧米のクジラ漁は燃料に使われる鯨油(げいゆ)確保のためだけで、日本のような肉目的ではなかったという。
今ではその史実を棚上げ、わが国の捕鯨を批判する傍らで本書を米文学の名著だともてはやす。こればかりはアメリカという国がよく分からん…笑
まぁ何だかんだ言って夏っぽい作品だし、同名のジェットコースターがあるくらいスペクタクルっぽいし…ということで、世間の夏休みに便乗して自分も航海に出た。
主人公イシュメールが、宿屋が満室だったため先客で銛手(もりうち)のクィークェグと -
Posted by ブクログ
ネタバレ非常に読みづらかった。ほとんどが本筋と直接関係がない鯨や捕鯨についての薀蓄となっており肝心の白鯨との対決は最後のわずか三章のみ。
どこかでこの作品が世界文学の名作の1つに挙げられている理由が、文字通り世界規模のスケールで物語が展開しているからだという評を見たことがあるが、たしかに多数の人種と国、地域にまたがる話であった。だが、せっかく主人公と冒頭で仲良くなったクィークェグも、中盤以降は出番がほとんどない。伏線というわけではないのか?ただエイハブ船長が終始信頼を寄せていた(と思われる)のは、銛手や拝火教徒たちといった「異教徒」たちであった。少なくとも彼らは書かれた内容において白人と同等に扱われて -
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「お前の姉さんは、失恋してるんだね。僕はめでたいことだと思っているよ。女の子は、結婚がなによりもお好きだが、たまにはちょっと失恋するのも、わるくないと見えるね。失恋すれば、なにかかにか考えさせられるし、仲間よりはなんとなく偉そうに見えるものね。お前の番はいつまわってくるのかね? いつまでもジェーンに負けていたんじゃ、お前もやりきれんだろう。さあ、お前の番だよ。メリトンには、国中の若い娘たちを失恋させるに十分なほど、士官がうようよしているよ。ウィカムさんにしといたらよかろう。快活な男で、立派にお前を捨ててくれるよ」
「どうもありがとう。でも、もっと感じのよくない男の人でも、わたしけっこうですわ。