作者の持つ世界が、広がっているようにも、一定の規則の下に従ってとんとんと置かれているようにも感じられる。短篇選では多種多様な語りぶりに心服したものだけれど、こちらは、あくまで個人の感想であるが、宙空に置かれた作者の視座のようなものが見えてしまう気がする。まあ、作者は表現に表現を重ね、読者を煙に巻くのが得意だったということなので、おそらくはこれも一種の錯覚のようなものなのだろう。数年後読み返して評価を一変させることになるのを期待するとともに、購入は無理でも、どうにかして全集を拝みたいような気持ちがある。