久生十蘭のレビュー一覧

  • 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
    冒頭の「生霊」のドメスティックな物語からは想像もできないオチがまるでコルタサルでいきなり度肝を抜かれる。精緻で端正な文体と小説という表現スタイルだけが引き起こしてくれるめくるめく感覚。
  • 魔都
    幻想的な昭和の東京の大晦日から元旦にかけての短時間に起きた出来事を多方向から。
    「作者」目線で物語が進められていくのはかえって新鮮?
    結局はやくざ崩れの抗争でしかなかったというのが肩透かし感なのだけど。
    悪役か、という風貌の真名古が結構、人間味のある人で、重要な役どころであった加十の呆気ない死に様に...続きを読む
  • 十蘭万華鏡
    初めて著者の小説を読みましたが、ちょっと不思議な感覚で、なおかつ読者を楽しませる短編小説集ですね。乾いた感性とモダニズムの匂いのする、私には好みの小説家かもしれない、と思いはじめています。映画になっている「キャラコさん」も見てみたいですね。
  • 十蘭錬金術
    十蘭先生の不真面目に、僕はいつも真面目に付き合わされます。ある着眼点でまとまった新聞記事のようなネタに、詩的で遊んだ描写を入れる、十蘭先生のレトリックにはいつも書き方とは何か考えさせられまする。
  • 十蘭ラスト傑作選
    7冊で十蘭傑作選は、打ち止めのようだ。7冊目も戦記、ナポレオンもの、時代もの等盛り沢山で楽しめた。巻頭の「風流旅情記」は、海軍報道班員になった画家の目からみたニューギニア戦記。徴用漁船による航海、行きついた島の守備隊の状況が凄まじい。去年刊行された十蘭の「従軍日記」の体験と一致するから、背景は事実に...続きを読む
  • 久生十蘭短篇選
    ひと時やひとつの情景を切り取った描写が美しく感じた。

    先読みした展開が全く異なる方へと行ってしまうのが楽しく、良い短編が読めた。

    印象深い女性が多く出る。
  • 十蘭錬金術
    新しくなつて 読みやすかったです。 どれも良かったですが、しいていえば、「勝負」ですか、絵で見るフランス風土紙を読んでいたので、景色を想像して、
  • 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
    たまたま書店に平積みされていて手に取った。アンソロジーだけあって、様々な色合いの作品が集められている。
    (2012.10)
  • 久生十蘭短篇選
     久生十蘭という作家はどこかでちょっと聞いたことはあったが全く知らなかった。
     今回読んでみたが玄人向けの作品といえる。話のオチはあまり明確ではないし、予備知識も必要である。しかし読むのになれてくるとその構成の綿密さ、東西文化の混交に大きな興味をもつようになるのだろう。世の作家にシャーロキアンのよう...続きを読む
  • 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
    素晴らしい。
    収録されているどの短編も、驚くほどに生々しく、それでいて技巧に富んでいる。
    なのに全く作為のようなものが感じられない。あまりに自然で、しかし緻密で、澄み切っているのにずっしり重たい。

    最初の数編を読んで、そのあまりの出来栄えに私は舞い上がってしまった。これは凄い、これは素晴らしい、思...続きを読む
  • パノラマニア十蘭
    十蘭の北方史への愛着を感じる漂流もの2編の描写が実に痛ましい。舵も帆も失って数年間も流され続ける船の上で、飢え、絶望し、心身共に蝕まれていく人々。東北の大飢饉の中、新天地を求めてなお夢破れた人々。悲しくはあるけれど、精一杯生きようとした人々の夢のあとがじわっと胸にしみる。
  • 湖畔 ハムレット 久生十蘭作品集
    『湖畔』
    イギリス留学中に決闘を行い顔に大きな傷を負った奥平。帰国後出会った少女・陶と結婚したが上手く結婚生活を営めない。陶の浮気を疑い追い出した奥平。発見された水死体。疑いをかけられた奥平の弁護を担当した高木。

    『ハムレット』
    祖父江と名乗る人物が連れている老人の秘密。祖父江が所属していた劇団が...続きを読む
  • 十蘭万華鏡
    ひどく生々しい夢を見ているような。
    そんな印象が残る、戦前戦後の混乱や変遷の渦中で翻弄される人々の愛と生と死の物語集。
    かと言って歴史を語る戦争モノではなく、数奇な運命に捕まった人々の奇妙な半生の物語が多い。
    「お地蔵さん」と呼ばれる少年兵を描いた「少年」や、庭中に溢れる花の描写が美しい「花合せ」や...続きを読む
  • 十蘭錬金術
    河出文庫での十蘭短編集もとうとう5冊目になった。3冊ぐらいで打ち止めと思っていたので嬉しい。続編が出るのか気になる。本編でも、事実をもとにして、驚くべき物語を生み出す錬金術に驚かされる。大戦直前のフランス、戦争中の東京、南方の戦地を舞台とする魅力的な男女が繰り広げる刹那的な行動を描く「勝負」が気に入...続きを読む
  • 湖畔 ハムレット 久生十蘭作品集
    「湖畔」「ハムレット」「玉取物語」「鈴木主水」「母子像」「奥の海」「呂宋の壺」

    湖畔・ハムレット・母子像がよかった。
    ほかは歴史小説のような形式で仮名遣いなどがかなり読みづらい。
    玉取物語は文字どおりすぎて笑ったw
  • 十蘭レトリカ
    国際的な話が多い。息もつかせずグイグイ引き込まれ最後にストンと落とすところが見事。面白かったのは「胃下垂症と鯨」「ブゥレ=シャノアヌ事件」「心理の谷」
  • 十蘭レトリカ
    著者の作品に初めて触れたのだが、行間に滲むその博覧強記ぶりにまず圧倒され、溢れ出る言葉の旋律が心地良い。生島治郎の「黄土の奔流」を思わせる冒険譚あり、幕末を舞台にした波乱万丈の復讐劇ありと、収録されている八編の短・中編はそれぞれ異なる趣で楽しませてくれる。
  • 十蘭レトリカ
    河出文庫での十蘭短編集の第4弾。フランス、中国、オーストラリア、幕末等舞台が変われど奔放な想像力の爆発と華麗なストーリー展開は、変わらない。三界万霊塔、花賊魚が特に凄い。
  • 十蘭万華鏡
    ドキドキする。隙間に入ってくるレトリック。もう純文学でそんなに感動することはないと思っていたが、帯の「澁澤龍彦が絶賛」で購読。丁寧な仕事ぶりに驚嘆。刹那的だが芥川より明るく、横光よりも洒落ている。寒い土地で育った元新聞記者には何も言っちゃあいけないのかも。
  • 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
    「フィクションとしての小説というものが、無から有を生ぜしめる一種の手品だとすれば、まさに久生十蘭の短編こそ、それだという気がする」と、解説で澁澤龍彦が指摘しているが、その通り。
    私は作者が現れてくるような作品の方が好きな場合が多いけれど、久生十蘭のプロ技は素直に凄いと思う。
     『無残やな』『死亡通知...続きを読む