久生十蘭のレビュー一覧

  • 久生十蘭短篇選
    初めて読む作家。
    何かで紹介されていて興味を持ったか、購入して積読になっていた。
    買っておいて良かったと思う。美文である。
    初出はほとんどが終戦から5〜6年のもの。
    まだ戦争の傷が癒えない時期で、戦争がらみの物語も多い。死が身近である。
    悲劇的な話多く、伝奇的な要素もあるが、おどろおどろしさは感じら...続きを読む
  • 魔都
    体言止めや四字熟語による独特な文章のリズム感がまず印象に残る。読みやすいとは思えないが、講談師の噺を聞いているような気分になってきて、癖になりそう。
    文集は濃く、やたらと多い登場人物は残らず胡散臭く、次から次へと事件がおこり、新事実が後出しされ、筆者自らネタバレする。
    連載物で読者を飽きさせないよう...続きを読む
  • 墓地展望亭・ハムレット 他六篇
     1937(昭和12)年-1956(昭和31)年に発表された作品を収めた短編小説集。
     初めて読む久生十蘭作品で、私はこの作家を探偵小説の作者と思い込んでいてのだが、本書を読み始めてびっくりした。最初の3つの短編「骨仏」(1948)「生霊」(1941)「雲の小径」(1956)は、驚くべき純粋芸術とし...続きを読む
  • 十蘭錬金術
    まちがいなく洋装ではなく和装の言葉。背筋をただして纏う着物のような。壮大な史実や有名な事件を背景に、そこにいた一介の人間の事情を描く。ノンフィクションからフィクションを編み出し卑金から金へ。まさに錬金術。渡仏した十蘭の目に映るフランスも味わえた。

    「爆風」には、月齢と月相で敵の爆撃機の入来時期に検...続きを読む
  • 魔都
    津原奏水『玻璃玉の耳輪』のようなミステリ仕立ての冒険小説
    のようなが逆でこちらが先だろうけれど
    ミステリとしても警察ものとしても中途半端だが
    昭和9年の時代ものとして充分な筆力
    登場人物たちにも十二分の説得力があり良い意味で辟易させてくれる佳品
  • 魔都
    探偵小説であり、幻想小説であり、怪奇小説であり、冒険小説であり…ミステリでもある。

    ルポタージュ風の語り口が独特。物語と世界観の妙を引き立てている。毎度、章のはじめに前回の説明があるのだが、作者の言い訳がましい解説やら補足は微笑ましい。

    不可思議な謎はどこへ行く?事件の謎は、大きな拡がりをみせて...続きを読む
  • 墓地展望亭・ハムレット 他六篇
    日影丈吉とともに引っかかった作家。
    凄い好き。
    冒頭から、どんなふうに展開して落ちが付くのだろうと様々な想像を膨らませて読むのだが、そうくるか、と仰天するばかり。
    『墓地展望亭』は、ものすごいファンタジーめいたラブ・ストーリーで、読み始めると止まらない面白さがある。
    『ハムレット』に出てくる女性たち...続きを読む
  • 久生十蘭短篇選
    該博な知識がさらりと反映され、しかも物語は、決してしつこくないくせに充分な分量を語って心地良い。「小説の魔術師」の異名が、確かに相応しい作家に思う。理屈や感情で通るところにこの作家の文章はない。あっと言わせてやろうなどという作為もない。ただ、物語がくるくる渦を巻いて、読者が予想していたのとは「位相が...続きを読む
  • 久生十蘭短篇選
    文芸・演劇評論家、川崎賢子セレクト、
    主に戦後に発表された久生十蘭の短編選集。
    作品のテーマ・雰囲気に合わせて
    自在に文体を変えているが、どれも見事。
    個人的には終戦直後の作、
    どことなく内田百閒に似たテイストの
    「黄泉から」「予言」など、
    少し素っ気ない感じの話が特に好み。
    何となくいい雰囲気を醸...続きを読む
  • 墓地展望亭・ハムレット 他六篇
    1930年代から最晩年までの作品から選び出された8編。
    改稿を繰り返し、彫琢を重ねたという名品揃い。
    物語が面白いだけでなく、文章そのものが美しくて、
    鳥肌や眩暈を催した。
    故・中井英夫が終生、師と仰ぎ続けたという話にも頷ける。

    以下、特に感銘を受けた作品について。

    ■「雲の小径」
     飛行機での...続きを読む
  • パノラマニア十蘭
    この人の短編では「漂流もの」(昔の)っていうのがジャンルになっている感がある。阿倍仲麻呂から江戸時代まで、このジャンルに佳作多い。個人的には江戸の庶民の目で異人の風俗を100%の日本語で語るという技、これが何ともおかしい。はまってしまいます。
  • 十蘭万華鏡
    十蘭の小説にはいつも死の影がつきまとっている、と思っていたが、本書では必ずしもそうでない短編が収められている。かたや掟破りの夢オチが多用されているのもご愛嬌。彦輔と艦長には感心した。
  • 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
    最後の「死亡通知」のオチがわからない。再読すべし。
    それはともかく、岩波文庫とまったく重複がないのがよい。また小説ジャンルも多岐にわたっていて
    力量を感じさせる。
  • 十蘭万華鏡
    テンポのいい語り口で楽しめた。気に入ったフレーズなのか、「花合わせ」と「雲の小径」とに、ほとんど同じ台詞があったのが興味深い。
  • 久生十蘭短篇選
    戦後に発表された久生十蘭短編集。
    作者の目線は冷静であり、しかし熱狂も感じる。時代柄戦時中から戦後の悲惨さ、高揚、異様さがごく自然に当時の感覚で語られる。後の時代の研究者がいくら戦時中を考察しても敵わない生の感覚。
    小説の筋構成も見事ながら、読んでいる時は本当に読書の愉しみを味わえる作家だ。
    作品の...続きを読む
  • 十蘭ラスト傑作選
    しみじみと印象に残ったのは、太平洋戦争を描いた「風流旅情記」。
    主人公の五流画家・三河万蔵は報道班員として、民間の徴用船に乗り込み、日本の勢力圏の南端にあるニューギニア・アルー諸島をめざす。
    彼がこの島をめざすのは、鶏の卵を人肌で抱いて孵化させた兵士がいるから、という一風変わった理由のため。
    乗り込...続きを読む
  • 久生十蘭短篇選
    なにせ、知らない熟語、読めない漢字、初めて目にする言い回し、が随所に出てきて大変!。でも、久生が創り出す独特の美しい世界の”雰囲気”は楽しむことが出来ました。気に入った短編を繰り返し読んでみれば、その度に新しくわかることがあるかも。。。
  • パノラマニア十蘭
    文庫で読む十蘭傑作選、好評第3弾。ジャンルは、パリ物、都会物、戦地物、風俗小説、時代小説、漂流記の10篇。全篇、お見事。
  • 久生十蘭短篇選
    万華鏡のような後味は他の作家にはないかもしれない。
    アコーディオンの伴奏にのせて物悲しく奏でられるBGM。モノクロの八ミリ映画の哀愁。ラジオから流れる雑音混じりの音声。懐かしい昭和の香り。「鶴鍋」「無月物語」が特に印象的だった。
  • 久生十蘭短篇選
    河出文庫より先に出てたのに(そして先に買ったのに)、こっちのほうを後から読んじゃった。全15篇。……こちらに採られているもののほうが、私は好きかな(甲乙つけがたいような気もするけれど)。巻末「解説」が丁寧。この人の著作は初出と最終稿ではかなり違うらしい。自分の書いたものに後からジクジク拘る私としては...続きを読む