久生十蘭のレビュー一覧
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ネタバレ『湖畔』
イギリス留学中に決闘を行い顔に大きな傷を負った奥平。帰国後出会った少女・陶と結婚したが上手く結婚生活を営めない。陶の浮気を疑い追い出した奥平。発見された水死体。疑いをかけられた奥平の弁護を担当した高木。
『ハムレット』
祖父江と名乗る人物が連れている老人の秘密。祖父江が所属していた劇団が上演した「ハムレット」で何者かに殺害された小松。小松の婚約者である琴子と結婚した阪井。阪井の家で居候し娘と結婚した祖父江が受けた依頼。生きていた小松。ハムレットの劇内で生きる小松の秘密。
『玉取物語』
参勤交代中にふぐりが肥大化する病にかかった西国の大名。
『鈴木主水』
姫路藩榊原家の相続。新た -
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ひどく生々しい夢を見ているような。
そんな印象が残る、戦前戦後の混乱や変遷の渦中で翻弄される人々の愛と生と死の物語集。
かと言って歴史を語る戦争モノではなく、数奇な運命に捕まった人々の奇妙な半生の物語が多い。
「お地蔵さん」と呼ばれる少年兵を描いた「少年」や、庭中に溢れる花の描写が美しい「花合せ」やなんかは、人の価値観まで犠牲にしようとする戦争とはなんなのか、というメッセージを、そこにある人々や事物の描写で丹念に描き出す。
それだけでもぐっとくるものがある美しい作品なのだけど、「大竜巻」や「三笠の月」などエンタメ色の強い作品もあり、最初から最後まで本当に退屈しない。 -
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「フィクションとしての小説というものが、無から有を生ぜしめる一種の手品だとすれば、まさに久生十蘭の短編こそ、それだという気がする」と、解説で澁澤龍彦が指摘しているが、その通り。
私は作者が現れてくるような作品の方が好きな場合が多いけれど、久生十蘭のプロ技は素直に凄いと思う。
『無残やな』『死亡通知』『藤九郎の島』あたりがなかなか気に行った。奇妙なほどあっさりした描写が面白い。
でも結局一番好きなのは『生霊』で、久生十蘭の味というよりは、田舎の因習やそれに類するものの土着的な不思議な雰囲気の描写が好きなだけなのかも知れない、という気もする。 -
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凝縮された完成度の高い短編が多く、何とも言えない美しい描写や人の性格の描き方が上手さもあって楽しく読める。時々立ち上る「ハイカラ」な香りも良い感じ。
「黄泉から」
話の筋よりも、おけいが死の間際にニューギニアで見た「雪」のシーンが実に素晴らしい。★★★★
「予言」
これは夢だったか妄想だったか、読んでいるうちに立っている平面が分からなくなる書きっぷりが絶妙。★★★★
「鶴鍋」
いやはや、良い話だなあ。といったところ。★★★
「無月物語」
これは十分に狂ってると思うなあ。★★★★
「黒い手帳」
これはいいね、実にいい。ルーレット必勝法を軸に、短いながらも話が二転三転、読ませる。★★★★ -
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この作品集に収められている『母子像』をゼミの演習で発表してくれた子がいて、すごく面白かった。美しいと思って、憧れていたもの、この物語の少年にとっては母親の汚さを見て、もう嫌だ!死にたいと思ってしまうのは、少年であるがゆえの心の純粋さのためであると思う。そんな悲しい気持ちを持ってしまった少年の最期は切なくて、悲しかった。この作品では、自分が解釈する自分、他人が解釈する自分とのズレが興味深い。自分が考えている自分だけではなくて、他人が解釈する自分も、自分であることは紛れもない事実で、でもそのズレが人との関係をややこしくしてしまうのかなと思う。
ゼミで久生十蘭を初めて知ってよかった。自分だけで読む