阿部智里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ路近、清賢、翠寛、そして長束。
それぞれの過去と今、そして未来に向けた意思。
つながる。つながっていく。
p.68
「勁草院で私が学んだのは、『こうあるべき』ではなく、『どうあるべきか』でしたね(中略)「どういう意味だ?」
「授業で教わった内容が何であれ、他人の唱えた字義を諳んじるだけでは、ただの阿呆ということです」(中略)「勁草院には色々な育ち、色々な身分の者がいて、それぞれに違う価値観を持っていた。同じことを教わっても、そこから出した仲間の解釈は、一人一人違ったように思う」
p.312
「反吐が出る」「うん」(中略)
他人事のように相槌を打った金烏は、感情をまるごとどこかに落としてきたような顔をしていたからだ。罵ってやろうと思っていたのに、その顔を見た瞬間に、声が出なくなった。
「あなたは、分かっていてやらせているのですね」
「そうだ。分かっていてやらせている」
p.134
「そなたはやらねばならないという前に、やって堪るか、という意思がある。そこが雪哉とは決定的に違うな」どちらが正解で間違っているというものではないが、と金烏は続ける。「雪哉はそなたの甘さだと言った。実際そうだろう。そなたは甘いし、現実は厳しい。だが、私はその甘さが通用する世界のほうが望ましいと思っている」(中略)
「分かるか、この言葉の意味が」(中略)「はい」
────これは、この先山内をどう導くか、という話だった。
p.315
「それでも、私から見ても兄上は経験が不足している。そうあれかしと育てられたお方だ」
p.328
「利用されて下さい」「私が利用されるのか」(中略)
「むしろ、それ以上のものを求める方がおかしいのです。人の心はままなりません。上の者からただそうせよと強いれば、下の者は必ず嘘をつきます。嘘が重なれば重なるほど、あなたの目に真実は見えなくなっていく」
p.341
「我々は、負けたのです」
翠寛は泣きそうに笑った。
────我々は負けた。 -
Posted by ブクログ
「亡霊の烏」を読んだのをきっかけとして、どんどん復習が進み、こちらを再読。
↓
以下ネタバレです
ハミドリ→ミドリ→スイカン
になるまでの話がメイン。
だったのだが、他に疑問があって
やっぱり雪哉が博陸候になるまでの経緯が書かれていませんでした。
どういう経緯で、その地位を手に入れたのかがわかりませんでした。
それと結局、長束と、雪哉ってもともと(?)仲良くかなかったんだなと。
金烏の暗殺により、この世界、この物語、が大きく変わるけど、
金烏の暗殺が強引というか、
うっかり殺された感。
どうして藤の宮が殺してしまったのかも、書かれてない。
暗殺が大きな転機になっているため、
暗殺される、納得できる理由が欲しいです(しつこい)。 -
Posted by ブクログ
作者独特の世界観。
八咫烏シリーズでもそうだが、ファンタジーでありながら、深く考えさせられる作品だと思う。
この作品では「皇后」「伴侶」という表現が何度も出てくる。
単に婚姻した相手、男女の夫婦という形のみならず、作者がこめたこの作品の核となる意味あいとして、「運命を共にする相手」「一緒に未来を切り開く相手」という意味が大きいように思う。
イリスは凄まじい生命力の持ち主であり、力強さを感じる反面、ジョウが池に落とされればすぐに飛び込む情の深さを持っている。
ナオミへの謎解きに関して言えば、蜻蛉帝の真実を知ってほしいと願う、一人の女性イリスとしての願いを垣間見た気がする。 -
Posted by ブクログ
長束陣営を描いた今作。なぜ路近が長束に仕えているのか、やっとわかった。
そして、これまで雪哉と対立していた翠寛について深掘りされる。
雪哉視点では本当に憎くてたまらなかったけれど、生い立ちを知り、考えを知ると全く印象が変わる。読み終わった時には翠寛が大好きになっている。
やはり視点を変えるというのは大事で、一方向からしか物事を見ないというのは、何も見えていないのと一緒だなと思う。
皆自分の考えがあり、大切にしていることがある。翠寛も、雪哉も、奈月彦も、長束も、浜木綿も。
これから山内は滅びに向かい、たくさんの血が流れるんだろう。しっかりと見届けたい。
-
Posted by ブクログ
「楽園の烏」の時代より以前、その間何があったのか?の答え合わせ。
一回読んでいるんですけど、一回目は正直あまり理解できなかった。後続のシリーズを読んでから、こちらを読み返すとしっかり理解が深まった。元々本を読み返すタイプではないが、このように一つの長編小説を深掘りするのも悪くないなあと初めて感じる。
浜木綿と一緒に姿を消した紫苑の宮であるが、物語後半、澄尾の娘となって現れる。
どのタイミングで、澄尾の家庭に預けられたのだあろう?そしてどうやって?誰が仲介した?
その疑問は確か、亡霊の烏に書いてあったような気がする。すると今度は亡霊の烏をまた読むんかーい。堂々巡り。奈月彦が死んだ後、急に10年経ってしまったので、「烏の緑羽」の方こそ、読み返す必要ありかも。
「亡霊の烏」で登場する澄生が紫苑の宮だったとしたら、あんなに人格変わって、雪哉を敵視するだろうか?この章では「ゆきさん・・・」って慕ってたのに。
だから、亡霊の烏に出てくる、「自称・澄生」は、偽物のような気がしてならない。