是枝裕和のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
映画に納得がいかず, 小説に手を出してみた。
映画では感じることのできなかった心理描写があって分かりやすくなっていたけど, やはり映画のスタンスと同じで, 社長を殺したのが誰なのかは最後まで明かされないし, あの段階で犯人性を争うと言い始めた三隅の想いも語られないため, こちらで想像する他ない。
邦画にありがちな展開なのに何でこんなに腑に落ちないんだろうかずっと考えてた。
多分私は物語を追ううちに, 重盛と同じ気持ち・目線に立ってしまったんだ。
真実なんて当事者しか知り得ないのに, それを知りたいと願ってしまう。誰かのために三隅が罪をかぶったのだと信じたくなってしまうのに, そうだと言ってもらえないもどかしさが腑に落ちないところに繋がっていたんだ。
ここまで考えて, 改めて良い作品だったのだと今更ながら気付かされた。 -
Posted by ブクログ
エリート官僚の自殺を、その人生を丹念に追うことで描いた作品。
主人公(山内さん)は、官僚として出世をしていく中で、だんだんと理想やポリシー、優しさは、力を失っていき、むしろ邪魔になる。駆け引き、政治力などのバランスをいかに要領よくとれるか、いかに現実的に時に冷酷に現実と向き合い、自分のエゴを通せるか、その現実と理想のはざまでもみくちゃにされ、また体力的にも精神的にも限界が来て、遂に死を選ぶ。
まさに政治の世界は妖怪魑魅魍魎の世界、善意、倫理感だけでは生きていけない、自分を客観的にみて常に世の中との距離を測りながらコントロールしていく冷静さ、冷酷さがないといけないのだと感じた。
奥さんがいっているように、なぜ死んだのかは全くわからない。若き是枝さんも原因を無理やりつけるようなことはしない。死を選んだことの本質的な説明は、本人でも説明できないのではないか。論理的なものではなく、本能的な死のようにも思える。
時代の空気感、今の時代よりもより経済的な部分が精神的な部分よりも、当然勝っているという世の中の風潮が強かった。ということを感じる。
また、新婚のころから奥さんに仕事の話をしない、山内さんの責任感の強さ、弱音を吐かなく、自分の信念に沿ってやりきる心が、裏目に出てしまったのかなと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今は「そして父になる」などで有名な映画監督、是枝裕和の原点は、フジで放映されたドキュメンタリー番組「しかし…福祉切り捨ての時代に」(1991)。
この本は、この番組を詳細に描いたものだ。
水俣病に関わった厚生労働省の高級官僚、弱者を前に常にひたむきに真摯に向き合った男が、その経歴ゆえに省の中で上りつめてゆく。
しかし、上に上がれば上がるほど、国を動かすために逆に弱者を切り捨てる政治が待っている。
優しさゆえに、その間で翻弄される一人の男。
やがて選択せざるを得なくなる自死への道。
番組を作る過程で、是枝氏本人が大手テレビ局員ではなく、外注スタッフと分かった時から、蔑む人の目。
人を見ず、肩書きばかりで見る社会は、本書の主人公も是枝氏にも生きにくかったのであろう。
「しかし…」現状に抗うために吐く言葉は、社会と向き合うために闘うためのものでもある。 -
Posted by ブクログ
ケン・ローチ監督最新作『オールド・オーク』を観て、彼のことがさらに気になって本書を読んだ。
是枝監督はローチ監督を師匠と仰ぐほど尊敬しているが、彼の左翼的で一貫した社会主義とその主張を前に、もう少し是枝監督自身は自分の解釈を観客には押し付けられない、だから解釈を観客に委ねる。
という両者の作家性の違いがよくわかった。
これを読んだあと、2026年5月号のキネマ旬報で本書以来7年ぶりとなった対談を読むと、お2人の価値観はまるで変わらず一貫しているなぁ、と思った。
一点気になったこととして、この本はお二人の対談の前後に、対談を振り返って思うことやコロナ禍の社会、映画にできること、をそれぞれが語るパートがある。
正直それが冗長的に感じたし、なぜそのような構成になったのか、あまりわからず、ちょっとだけ退屈してしまった。