木村友祐のレビュー一覧

  • 幼な子の聖戦

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    めちゃくちゃ良かったなあ。
    表題作の「幼な子の聖戦」は中年弱者男性の臆病な怒りが炸裂している物語。なんか主人公の感情の揺れ動き方が突飛な感じがするけど、そこに至るまでの過程は納得できる。

    「天空の絵描きたち」は途中までは普通のお仕事小説みたいな感じで、「このまま進むわけないよなあ…」と思いながら読んだ。世の中のどうしようもなさと、それを呑み込んで生きていくしかない自分のちっぽけさを感じで、久しぶりに腹にずどんと来た。でも、何で思い詰めてからのセクハラなんだろうってところがちょっとノイズになったかも。まあ確かに、高校生の恋愛じゃあるまいし手を繋ぐとかだったら逆に変なんだけどさ。

    青森に旅行に

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    2025年09月06日
  • 幼な子の聖戦

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    「幼子の聖戦」も良いが、「天空の絵描きたち」が更に素晴らしい。久し振りに一気読みしてしまった。自分にとって新しい作家を見出した気持ちだ。

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    2025年08月16日
  • 猫と考える動物のいのち ――命に優劣なんてあるの?

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    数年前から畜産動物たちの現状に興味を持ち、肉食を控えたり動物製品を買わないといった行動をとりつつも完全なヴィーガンという域には達していない私にはとても共感できる部分が多かった。
    うちも猫がいるので、猫のごはんだけはどうしても脱肉食にはできないし…。
    なかなか理解してもらえない思想ではあるし、人によっては拒否反応を示すこともあるけど、だからといって、知ろうとすることや少しでも改善できるように考え続けることを止めてはいけないなぁ…と改めて思えた。

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    2025年04月09日
  • 猫と考える動物のいのち ――命に優劣なんてあるの?

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    P56より抜粋
    〃大切なのは、「命として同じ」という感覚を心に持って、意識を人間以外の外側にもいつも開いておくことなのだと思う。〃

    「この命は重要で、この命は重要じゃない」という命の線引きを、気づかないうちに人ってしてるよね?をやさしい口調で問いかける本。
    ペット、野生、家畜(経済動)など、または哺乳類・魚類・昆虫類といった分類で動物の扱われ方が違う、つまり命を区別・差別している現状がある。でもだからといってヴィーガンになろうとか畜産業はひどいダメだとか短絡的に思うのは違和感があること(従事している人の大変やさ有り難さや、消費している自分の状況を見て見ぬふりするのはよそう)、要は動物に対する

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    2025年03月29日
  • 猫と考える動物のいのち ――命に優劣なんてあるの?

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    タイトルに惹かれて手にとった。
    優劣や価値、それらを勝手に決めているのは
    人間だけなんだと強く感じた。

    人間の傲慢さ。欲。矛盾。
    動物や自然のことをおもうと、人間の悪い部分が浮き出てきて嫌になる。
    でも自分を含め周りも人間だらけで、
    その社会・世界で生きていかねばならず…
    生きるためには多少なりともお金や資本主義に染まるしかない。
    ↑この暮らしを続けるのか…とウンザリもする。

    大きく変化させるのはとてもとても難しい。
    経済が絡むので余計に……。
    だからといって、このまま何も救済しないのは罪だと思う。
    自己意識を変えること、動物の置かれている状況(畜産やペット産業など)を疑うことから変化が始

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    2025年02月04日
  • 猫と考える動物のいのち ――命に優劣なんてあるの?

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    【目次】

    第1章 猫はぼくの先生

    クロスケとチャシロの「育ち」のちがい
    猫は笑わない
    猫には「ブサイク」という考えがない
    猫は自分を責めない

    第2章 まったくちがう世界を見ている存在=他者

    身近な生きもののスケッチ――ハト・スズメ・カエル・クモ
    電線を歩くハクビシンと、電線にぶら下がったネズミの話
    同じ時間に多種多様な生きものが生きている

    第3章 動物のことをホントに理解できる?

    人は擬人化することでしか他者を理解できない
    だけど、擬人化された動物は尊重されてる?
    「わからない」という余地を保つ
    使えなくなった言葉――「馬鹿」「ケダモノのように」
    言葉が通じなくても一緒にいるのがう

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    2025年02月06日
  • 海猫ツリーハウス

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    2昔前に出た小説を今更読む。
    ずっと視界に入るところにあって、引っ越してもそれは変わらなくて、もうこれは読むしかないだろと。

    青森の海の近くの実家暮らしの25歳の亮介。頻繁に見る、ヘリコプターに吊るされぶらんぶらんと揺れている自分の姿の妄想に悩まされている。高校のあと弘前の服飾専門学校に入ったが卒業を待たずに中退して以来、ずっと中途半端な状態。いつかは洋服づくりで身を立てたいと思うものの具体的な行動を起こさぬままに祖父母の農業と地元の先輩のツリーハウスづくりや雑用に紛れる日々。そんなとき、兄の慎平が帰ってきて。

    兄弟の関係、地元のみんなとの関係、家族との関係などなど、丁寧に描いているのに重

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    2023年07月30日
  • 幼な子の聖戦

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    心に残る話だった。
    表題作は主人公が性格的に救えなくて共感できず中々話に入り込めなかったが、社会への怒りの部分は全く共感でき、男性優位社会において弱者である主人公が暴発するところは不思議とスカッとした。現状維持や保身しか考えない「オヤジ」は、日本の諸悪の根源と言ってもいい気がする。
    もう一つの収録作品、ガラス拭きの話も面白かった。こちらも社会への課題認識は表題作と同じで、さらに職人から仕事をする尊厳も奪い取ってる点も深刻に描かれていてリアリティがあった。クマさんが居酒屋で語る、人は生まれ死に今目の前の人と一緒にいることは流れの中では奇跡的に居合わせてるだけということを意識すれば人への見方が変わ

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    2023年04月01日
  • 私とあなたのあいだ――いま、この国で生きるということ

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    「第33回すばる文学賞」をきっかけに知り合った
    木村友祐さんと温又柔さんが2019年2月〜2020年8月の間に交わした往復書簡集。
    2019年は元号が平成から令和に改められた年。安倍政権下で何があったか。その時私はどう思っていたか。作家だからこその丁寧な言葉選び、比喩、さまざまなキーワードから当時の状況が生々しく浮かびあがる。最終便から約2年…コロナにとどまらず実社会は更に混沌としているけれど(正気を保つために犬や猫を愛で)よりよい選択をするために表紙の猫達のように毅然と前を向き手と手をとりあいたい。

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    2022年08月26日
  • 海猫ツリーハウス

    購入済み

    地方舞台の青春小説の傑作

    八戸を舞台に、南部弁丸出しで、青春まっただ中の若者の苦悩を描いています。
    そうそう、こんな鬱屈を抱えながら、田舎でくすぶっている若者っているよなあ、自分もそうだったなあ、と共感することしきり。
    家族の中でも居心地悪いし、兄弟で比べられるし、田舎の人間関係もけっこう複雑で、悩みは深まるばかり。

    ここではないどこかへ行きたいんだけど、どこへ行ったらいいのかわからない。そんな悩みを一人で抱え込んでいる若い人にお勧めしたいと思います。

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    2019年04月12日
  • 野良ビトたちの燃え上がる肖像

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    読み進めていくうちに息苦しく怖くなってきた。今の日本も着実にこのようになっていくんではないかと予感させるフィクションであるのにノンフィクションのような小説。昔から格差を作り上にいる人達は下のやつらを蔑み搾りとり優越感に浸る。そういう事は行われてきたけど、平等を謳う今のこの世もまたそこに戻っていくのだろうか?不気味でならない。私もホームレスを見れば社会の落伍者って見てしまっている所があるけれどいつ自分がそうなるかもわからない。この本を読んでホームレスも柳さんみたいにルールを守りながら猫と共存していっている人達もいるんだってわかったし、何とかそういう人達の居場所を私達も作ってあげないといけないのに

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    2017年05月22日
  • 野良ビトたちの燃え上がる肖像

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    ネタバレ

    途中で近未来小説と気が付く。ロヒンギャの書き方とかちょっとうーんというところもあるけれど。若い世代の人なんだろう。最後のイメージは私には説得力があり美しかった。

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    2017年01月29日
  • 猫と考える動物のいのち ――命に優劣なんてあるの?

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    玄米食からマクロビ、ヴィーガンかじりかけました。つらぬくのめんどくてやめちゃったけど、もう少ししたらまたかじりたいと思います。

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    2025年01月30日
  • 私とあなたのあいだ――いま、この国で生きるということ

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    往復書簡。P95〈野宿者も、ぼくらと同じ『人』です。
    でも、おいそれと近づくことができないこともある。
    しかし、この葛藤は、葛藤のまま、保持しておくべきものだろうと思うのです〉と、木村友祐さん。
    最近、想像しては疲れてしまう、ということが多くて。
    木村さんのこの言葉は救いだった。
    いろいろな葛藤があっても保持しておけばいいんだ。
    きれいな線引きはむしろ危険なのかもしれない。
    購入してから少し積んでしまったけれど、私にはいま必要だった本。

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    2021年10月21日
  • 野良ビトたちの燃え上がる肖像

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    この本を読んで可哀そうな人たちだと思える人は、曇りなく自分の人生を歩んでいる人々なんだろう。僕はこれを読んでいて不安で不安で仕方が無かった。住む所も家族も居るけれど、持ち家とはいえ借金は払っていかなければいけないし、日々の生活で掛かるお金はびっくりするほど掛かっている。昔よりも明らかに贅沢な生活をしている自覚が有ります。
    いつでも無一文からやり直せるつもりで生きていたけれど、だんだんと年を取ってきて再就職もそんなに簡単には出来ないと思います。
    日本は次第に力を失っていき、豊かな生活を送れる人も一握りになって来ています。綱渡りのような生活をして、病気や怪我をする事で一気に急坂を滑り落ちるように路

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    2021年09月28日
  • 海猫ツリーハウス

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    25歳の亮介と、地元コミュニティで人気者の兄・慎平。
    ふたりのヒリヒリとしたやりとりに心がざわつく。
    ファッション・デザイナーを目指し、
    実家の農業を手伝い、
    「親方」の元でツリーハウス作りをする亮介の努力を
    慎平はなぜ認めず、貶めるようなことを言うのだろう。

    p111
    ―兄弟だからだ―
    p112
    ―兄弟なんて、言ってみれば生まれたときから
    親の愛情を奪い合う敵同士みたいなものじゃないか―

    すとん、と腑に落ちた。

    慎平のことも亮介のことも
    どちらの気持ちも、少しだがわかる気がした。

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    2020年01月31日
  • 野良ビトたちの燃え上がる肖像

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    「野良ビトに缶を与えないでください」
    一気に増えたホームレス対策として掲げられた看板。

    P106
    「おれらもう、人扱いされてねぇんだな」

    嫌なものは見ないようにして、楽しいことだけに目を向け
    日々を過ごせるのなら、その方がいい、と思ってしまう。
    でも、この本を読むと、いろいろ問われている気がする。
    考えろ。
    自分の頭で考えろ。
    そう言われているのかもしれない。

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    2020年01月24日
  • 野良ビトたちの燃え上がる肖像

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    コミュニティーが喪失した社会では、ひとりひとりの行動の身勝手さがエスカレートして、自分以外の人に攻撃的になり破壊していく。
    そんな社会はすぐ近くまで来ているのかもしれない。

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    2017年03月11日
  • 聖地Cs

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     八戸市出身の若手作家(1970(昭和45)年生まれの46歳)木村友祐氏の最新作を読んだ。最近地元紙のデーリー東北にも、前々作の2012年(第25回三島由紀夫文学賞の候補となった)「イサの氾濫」と共に紹介されていたので、それに続けて読んでみた。(2009年には「海猫ツリーハウス」(既読)で「第33回すばる文学賞」を受賞している。)オビには「震災後文学で最高の一冊」と書いてある。そんなに素晴らしいなら地元贔屓の自分としても読まずばなるまい。

     理系でも土木屋の自分は、いきなりタイトルでつまずいた。『聖地』は知っていても『Cs』がわからない。放送大学でも「化学入門」をとったが、どうも頭に残ってい

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    2016年04月02日
  • 聖地Cs

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    ブンガクなんだろう。きっと。
    かなりストレートにボワンとしたゴワンとしたものを放り投げてくる。
    読み易くすいすい読めるけど、時々立ち止まって「ナニナニ?」と反芻する。
    想像以上に入りやすく、想像以上に色々思い巡らした。

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    2014年10月16日