先崎彰容のレビュー一覧
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「ものさし不在」で、さまざまな「正義」が跋扈し、騒々しいまでに「処方箋を焦る社会」に対する違和感を先崎先生が斬る。
東日本大地震後の原発反対運動、安保法制反対デモ等が激しかった頃、著者が感じた違和感をベースに論じられる日本の姿は、驚くまでに今、コロナ禍で感じられる違和感とも相似している。
自らの正義を疑わず、「〜であるべき!」「反◯◯」を唱える人々。権力を持つものは悪で、民衆は善であるという決めつけ。
我が正義こそが普遍的であると押し付け、人の意見に聞く耳を持たない人たち。相手の尊厳をも尊重しない言葉の暴力が溢れた社会に疲れ果てている私に、この著書は静かに語りかけてくれる。
この本に引用 -
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この本から感じるのは、何よりも「思考の熱量の高さ」。新書という紙幅の制限の中に、葦津珍彦、ハンナ・アーレント、江藤淳、オルテガ・イ・ガゼットなどの思想を援用、敷衍しつつ、健全なナショナリズムの復権を説く。
個人的には、海外の左翼と日本の左翼との大きな差は、夫々の属する国への思慕の軽重にあるように思っていた。どうも日本の左翼には、「自分の国」を何とかしようという意識が薄すぎるのだ。
非常に多くの要素が熱く語られており、少々とっ散らかった印象を持ちつつも、最後半部に、高坂正堯の有名な「国家を形成する三つの要素」の話があり、何とかまとまった感がある。以下引用。
『国家には三つの要素がある。「力 -
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明治から昭和にかけて、西郷隆盛という人物にどのような思想が投影されてきたかを論じた本。
様々な思想家たちの西郷に対する考えが説明されてきたが、西郷の思想を表す言葉である敬天愛人の「天」をどう捉えるかが異なっているのだと理解した。つまり、思想家たちの間で反近代の象徴として、西郷を掲げることは一致しているが、その代わりに何を「天」として重視すべきかという考えが異なっているのだと思う。
西郷を論じてきた思想家たちと比べて私の知見はあまりに少ないが、それでも個人的な意見を述べるのであれば、もっとシンプルな思想の持ち主だったのではと考える。つまり、その時々で、理屈ではなく感覚的にこれが天命だと考えた -
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『古今和歌集』や『源氏物語』にかんする本居宣長の思想を中心的にとりあげて、「もののあはれ」の解釈と「日本」のアイデンティティについて、彼がどのようなあたらしい見かたを提示したのかということが追求されています。
著者は、2023年におこなわれたG7広島サミットと、1943年におこなわれた大東亜会議の写真をならべて比較することで、本書の議論を開始しています。この二枚の写真は、普遍的な価値をもつ国際社会を意味する「西側」への日本のかかわりかたが、この間に大きく変わったことを示しています。しかし前近代においては、中国が普遍的な秩序を意味する「西側」の役割をになってきました。著者は、「西側」の秩序のな -
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戦後、日本のアイデンティティーとは、自由と民主主義、成長主義、個人主義。これに対して新しい国家像、令和の日本のデザインを考える。キーワードは、「尊厳」だ。
コモンセンスは多数の人間がよしとする価値観に支えられているが、それを持たない個人は、自分の中に閉じ込められてしまうとハンナアーレントは言う。明確な価値基準がないと、他人の芝生が青く見え、他者に翻弄される状態であり、自己の中に閉じ込められてしまう。社会に共有されている価値観を自分が物事を判断する際の支えや視座にすることで安心して判断を暮らすことができる。他者からの「承認」で満足を得られる。非正規雇用が何よりつらいのは、彼らが社会から正当な評 -
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【福沢諭吉】
16
政体(政府の仕組み、立憲主義など)と政務(政府の事務、制度のあり方などの議論など)
【中江兆民】
26
「新しずき」=理論に傾きすぎ、時と場所を忘れる否定的側面
【高山樗牛ちょぎゅう】
33
「今後のわが日本は、快活に能動的に、日本の自己主張をせねばならない」
【北村透谷】
【石川啄木】
51
弱々しい個人主義
【岡倉天心】
62
アジアの連帯
【頭山満】
【三木清】
【保田與重郎】
【萩原朔太郎】
93
漂泊者、家郷喪失者
【伊藤静雄】
【丸山眞男】
【江藤淳】
119
文学者=政治を行わない。政治的連帯を叫ぶ丸山などの知識人を否定した。
【竹内好】
126
日本浪漫派
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最近夜はBSフジのprimenewsにハマっているのだが、先日登場されていた日大の先崎教授の著作。
日頃ビジネス界隈の本ばっか読む中、ひっさびさに思想、社会学系の本に触れたのもあり、初っ端から『ああ文系の論考ってこうだよなぁ〜』感を痛烈に感じた!
物事を、ファクトベースではあるんだけど、そこに個人の知識や知見、過去の思想家などの思考をふんだんに絡めて、独自の視点で喝破する。それはとてもブレもなくなるほどなぁと思わされるのも多いが、極めて分かりづらい...。論点や論拠があっち行ったりこっち行ったり、着いてくのがしんどい。
primenews登場 -
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著者は、ナショナリズムをめぐる三つの誤解があるといいます。まず、ナショナリズムを全体主義とみなす誤解、次に、ナショナリズムを宗教とみなす誤解、そして最後に、ナショナリズムをデモクラシーの帰結とみなす誤解です。
まず著者は、アレントが問題にした「モッブ」や、ゲルナーが問題にした「大衆」は、伝統から切り離されており、全体主義を招き擬似宗教的なポピュリズムに陥ることを明らかにしたうえで、ナショナリズムがそれらの立場とはっきり異なっていると論じます。
つづいて、吉本隆明の『共同幻想論』が、なにを問題にしたのかということに議論は進みます。吉本は、習俗に基づく「黙契」と、そのような背景をもたない「禁制