あらすじ
アジアか西洋か。道徳か経済か。天皇か革命か――日本人はいつも自らの理想とする「国のかたち」を西郷に投影し、「第二の維新」による「もう一つの日本」の実現を求めてきた。福澤諭吉から中江兆民、頭山満、丸山眞男、橋川文三、三島由紀夫、江藤淳、司馬遼太郎まで、近代化の是非を問い続けてきた思想家たちの一五〇年。
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Posted by ブクログ
明治から昭和にかけて、西郷隆盛という人物にどのような思想が投影されてきたかを論じた本。
様々な思想家たちの西郷に対する考えが説明されてきたが、西郷の思想を表す言葉である敬天愛人の「天」をどう捉えるかが異なっているのだと理解した。つまり、思想家たちの間で反近代の象徴として、西郷を掲げることは一致しているが、その代わりに何を「天」として重視すべきかという考えが異なっているのだと思う。
西郷を論じてきた思想家たちと比べて私の知見はあまりに少ないが、それでも個人的な意見を述べるのであれば、もっとシンプルな思想の持ち主だったのではと考える。つまり、その時々で、理屈ではなく感覚的にこれが天命だと考えたものに全霊で向き合ったのが西郷であり、そのシンプルさ故に西郷像には大きな余白ができ、各時代の思想家たちの考えが投影される余地ができたのではないだろうか。