岩村充のレビュー一覧
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バブル以降の日本の金融政策の変遷、FTPL(物価の財政理論)、マイナス金利、ヘリマネ、仮想通貨…多くのトピックから、(特に日本の)金融政策を論じた本。
180P弱の薄い新書ながら、内容はみっちり。
文章のうまさにスイスイ読めてしまうのだけど、ちゃんと理解しようと思うとかなり骨が折れる、スルメのような本。
FTPLの存在を本書で初めて知ったのだが、「物価は中央銀行と政府を合わせた『統合政府』への信頼に依存する」という論理は、直感にも沿っており、面白い内容だった。
また、「後戻りができなくなる前に、日本は金融政策のあり方を見直すなり、対策を講じるなりした方が良い」という、強い切迫感を持った筆 -
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・貨幣に金利をつけるという仮説
現実の貨幣に金利が付いたらどうなるのか。そんなお金は嫌だ。しかし、確実にお金は動くようになるだろう。マイナス金利をつけられたら、減るくらいなら使おうと考えるだろう。
いくら、メディアで「金融緩和」と言われていても、「デフレから抜け出すには、お金を使わないといけない」と分かっていても、みんな結局は自分が一番可愛いんです。明るい未来が見えているからこそ、人はお金を使おうとする。
・お金の不思議
日本人は貯金が大好きな人種と言いますが、改めて考えてみるとお金というのは不思議。
ただの紙切れである。みんなが価値があると思い込んでいるから成り立っている。
この理論から言 -
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ビットコインと呼ばれるものが「仮想通貨」であることを知っている人は少なくないと思うが、実際に誰が作り出して、どういう仕組みで管理されているのかを知っている人はまだ多くないだろう。
本書は、新しい通貨としてのビットコインの可能性と役割、課題として残る点などが指摘されており、ビットコインと一国のマクロ経済政策、特に金融政策との関係を説明している。
ビットコインは、マイナーと呼ばれる人たちによって作り出されており、ビットコイン自体の価値が変動するため、投資の対象ともなっているようだ。仮想空間の技術的な部分や、どうやって上限が決まるのかなど、専門的で難しい。
平易な言葉で書かれているとはいえ、経済学の -
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貨幣は、価値の乗り物。
貨幣の進化
パンの実、美しい貝殻、貴金属、兌換紙幣、不換紙幣。
自然利子率=お金の利子ではなく、モノの利子=モノを貸し借りした時に一年後にどのくらい増えたら文句がないか。
シニョレッジ=鑑定料=貨幣発行権=シニョールとは領主のこと。
旧約聖書では利子を禁じている。利子は神の時間が産んだモノ。ただし異教徒への貸付はとっても構わない。=ユダヤ教徒に金貸しが多いのは、異教徒が多いから。ただしリスク・プレミアムの部分はよい=インテレッセ=インタレストの語源。
初穂料は、種籾のお礼としての利子と同じ。
江戸時代はゼロ成長だったため、時々徳政令でリセットしないと、偏った社 -
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世界のデフレ傾向は大発明と大発見がひと段落したことによる。人口が増えない日本で脱却は難しい。
ケインズ的な政策運営は、アメリカのスタグフレーションで
行き詰った。
ロバートバローの等価定理=財政政策の効果がなくなる。
流動性の罠を避けるためのマイナス金利。ビットコインの技術を利用できないか。
行動経済学=カーネルマンとトベルスキー
心のバイアス問題。豊かになるときは保守的、貧しくなる時は冒険的。後悔の回避=失敗したくない。
各国の協調は、貨幣の逃げどころがなくなっている=ビットコインはどうか?
コロンブスの卵=私がやったあとならだれでもできる。西へ航海することはだれでもできる。
キ -
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中央銀行が通貨の独占発行権を持ち、金融政策による景気対策を行うという現状が既に限界を迎えているとの認識の下、今後の中央銀行はどうあるべきかを、ビットコインをはじめとする仮想通貨のテクノロジーを参照しながら探っていく。
通貨を自由競争市場に委ねるハイエクの思想、貨幣自体にマイナス金利を付せるようにするゲゼルの思想、ビットコインのブロックチェーン技術を応用したデジタル銀行券…と、著者の提示する技術は、現下の閉塞状態を乗り越え、明るい未来を示すものに見える。
ただ、その(技術的な意味ではなく、政治的・社会的な意味における)実現可能性を考えると、手放しに楽観視はできない。
著者の前著『貨幣進化論』 -
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岩村充著「貨幣進化論」新潮選書(2010)
*現在の貨幣制度は管理通貨制といって、貨幣価値の体系の中に金を介在させません。貨幣を発行する仕組みそのものへの信用によってささえようというシステムなのです。それは第二次世界大戦中の1944年に開かれた国際会議、いわゆるブレトンウッズ会議での合意に始まるものですが、現代の貨幣が金と完全に縁をきったのは、1971年のニクソン大統領がドルと金との交換を停止すると宣言した「ニクソンショック」からです。
*需要と供給「みえざる手」 アダムスミスは国内の勤労の維持に自分の資本を用いる人はみな、その生産物ができるだけ大きな価値をもつような方向に持っていこうと、おの -
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ファイナンスの世界において、リスクとは「不確実性の大きさ」である。
ファイナンスの前提として、投資家は「リスク回避者」であるとの想定がある。つまり、同じ収益性が得られる範囲では、できるだけ不確実性が少ない方法でその収益性が得られる投資機会を選択するとの想定である。
DCF法とは、予想される資金の出入りを金利で割り引いた現在価値を算出する手法である。DCF法の考え方は、「将来発生するキャッシュフロー(現金の入り)を、そのリスク(不確実性)に見合ったリスク・プレミアムを上乗せした金利で割り引く」というものである。
現在において、最適資本構成は改めて重要性を帯びている。企業が事業活動を行う際に -
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コロナがもたらした資本主義の変化を色々な面から説明された本。
色々と感じる点が多かったが、とある物事が発生した時に、どのような影響があるのか?
通常思いつく領域だけではなく、その更に外側の領域にまで思いを巡らし、
先手管理をする重要性を感じた内容。
想定される未来がいつ来るのか?
それは誰にも分らないが、こうしたコロナのような大きなインパクトのある事態があった際に、
一気に進む(現実に近づく)ことも今回誰もが理解できた点。
いつそうなっても良いように準備すること、また想定してうごくこと、この重要性がよく理解できた。
とは言え、総じて難しい内容であった。 -
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今、世界中が新型コロナに怯おびえている。このウイルスは、国や社会のありようを変えるのか?経済、デジタル技術、グローバリズムなど多角的な視点から、コロナ後の世界を見通す書籍。
今回のコロナ禍では、多くの国で「接触追跡システム」のスマホアプリが導入された。
・アプリはプライバシー侵害に配慮し、個人情報が特定されない仕様になっている。だが、その動作条件はグーグルとアップルが定めており、両社が強大な力を持つ恐れがある。
・このアプリのシステムは、取り入れ方次第では、民主主義の脅威になりうる。追跡者を「感染者」ではなく、「反政府活動参加疑惑者」に変更することも可能だからである。
コロナ禍で、ズーム( -
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世界は“不都合な未来”に向かっている。グローバリズムとデジタル化の進展がもたらす、「国家・企業・通貨」の変容について考察した書籍。
かつて、国家は企業の支配者だった。だが、グローバリズムの時代に入り、力関係は覆くつがえる。企業が活動する国を自由に選べるようになると、国家は企業を呼び込むため、税率を引き下げる「底辺への競争」を始めざるを得なくなった。
今日、グローバル企業の経営者や投資家などの富者にとって、国境の壁はないも同然で、彼らは所得税率が低い国へ移動する。国家も富者に選ばれるよう、個人所得税の最高税率を引き下げている。これも、富者に媚こびを売る「底辺への競争」。
先進各国の個人所得