岩村充のレビュー一覧
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現在の国家財政、中央銀行、株式会社は19世紀に仕組みが整えられた、
それ以降洗練され、通貨で言えば兌換紙幣が不換紙幣になり、中央銀行の独立性が確立された。
一方20世紀グローバリズムが進展し、前半では福祉国家を目指した先進国もグローバリズムの進展により企業誘致競争で税金の引き下げ競争に陥り、中央銀行も金融政策は本来は将来の先取りしかできないことから、金融緩和を進めることによってピケティの「r>g」の立役者となってしまっている。(ここがこの著作の肝である)
FTPLの物価決定式は以下になり、黒田日銀の緩和策は 市中保有国債を現在の通貨で買い上げただけで変えておらず物価にインパクトを与えなかった。
現在の物価水準= (市中保有国債の現在価値 +現在の通貨発行額)/ 税収など政府における将来収入の現在価値 -
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前著「貨幣進化論」に続く、日銀出身者による貨幣論。前著と同様に現下の金融政策は限界に来ているとの認識に立ちつつ、今作は実社会でも徐々にそのプレゼンスを高めつつあるビットコインのメカニズムを下敷きに「良い通貨」とは何かを論じ、それが金融政策のぶち当たっている壁を破る可能性を示してゆく。
第1章で前著のアウトラインを大まかになぞった後、第2、3章でビットコインの成り立ちやロジック、今後の展望が解説される。そこではマイナーたちの私利追求がこの管理者不在のいわば「ソーシャルコモンズ」的システムの基盤を成していること、そしてプロトコル次第で様々な目的指向に応ずる通貨が設計可能性であることが示される。そして第4章で低成長時代における金融政策の限界が論じられた後、いよいよ第5章では仮想通貨の方法論を用いた「貨幣利子率」を通じ、中央銀行の通貨独占発行権を排した、多頭的な通貨政策で「流動性の罠」を迂回する方法が模索される。
現行の日銀の金融政策については相変わらず辛辣な論調だが、いよいよ手詰まり感の彩りを濃くする現状を目の当たりにすれば、如何に上げ潮派であっても本書の提案を一部でも真剣に受け止めねばならない時期に来ているのではなかろうか。無論、本書の提案がすぐに現実の政策に適用可能というわけにはいかず、現時点では思考実験的な領域に止まるものも多い。しかし「そもそも通貨とは何か」を考える上でも、ビットコインを題材とした本書の議論は極めて有用と思う。
基礎的な暗号理論にまで立ち返った説明は個人的に馴染みの薄いものだったが、これまで読んだどの仮想通貨本よりも丁寧で解りやすかった。また、中央銀行のバランスシートを投資信託のそれに擬して説明される「決済通貨」と「価値尺度測定通貨」の分離などは、極めて直感的で納得的。マイナス金利等のニュースに接するうち、「通貨って何だかよくわからなくなってきた」と感じ始めた向きに是非お勧め。 -
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日銀出身者の本は変に感情的なところがなく落ち着いて読めるのがいいところだと思う。金融政策に過剰な期待を寄せる向きには「日本だけがデフレで国益を目減りさせている、早くデフレを止めろ!」と息巻く者が多いが、本書は冷静にデフレが遅かれ早かれ日本だけの問題ではなくなることを指摘している。日本は特殊なのではなくフロンティアを走っているに過ぎないということだろう。また「自然デフレ率」を前提に最適システムを模索することを示唆する辺りは、アベノミクスを経た今読んでも全く色褪せたところを感じさせない。逆に言えば、本書でも繰り返し言及があるように、金融政策には貨幣と物価に関する問題の発生の時間軸を前後ろにずらす効果しかない訳だから、アベノミクス前だろうが後だろうが、いずれは我々は「自然利子率の長期的低下=成長鈍化」という避け難い事実に直面せざるを得ないのだ。
内容は貨幣と各国中央銀行のクロニクルの中で貨幣経済に関する基本的論点に触れていくというスタイル。「そもそも貨幣って?」という根源の疑問にも丁寧に立ち入っていて理解が進む。特にパンの木の島での物々交換経済から国際的な貨幣経済に移行する仮想物語が解りやすい。貨幣価値と株価のアナロジーの指摘も目からウロコ。貨幣経済や金融政策に関する書籍は結構読んだつもりだったが、まずこの本に手を付けていればより理解がスムーズだったのに、と思わせられた。 -
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本書は、「貨幣と通貨システム」についての本であるが、とても読みやすくわかりやすい。
「貨幣」について「パンの木の物語」という架空の世界で表現した内容には驚いたが、なるほどこのように読むとその「原理」がわかる。
「金本位制の旅」を読むと、現在当たり前のこととなっている「利子」などへの見方が時代とともに変化してきたこともわかるし、「金本位制」と1930年の大不況時代の経済政策なども理解しやすい。
しかし、歴史では「ブロック経済」についてはその後に戦争を招いた悪しき政策のように教えていたと思うが、本書で読むその評価は「自由貿易の世界では財政による景気刺激を行っても効果の一部は他国に流出して・・・ブロック経済はそれを回避させる効果はあったのです。実際、ブロック経済と財政出動のセットを選択した国々は、ほぼその順番に景気を回復させることに成功しています」とあるのには驚いた。
日本の戦後の高度成長についても、「空襲などに対して優先的に疎開保護されていた資本財生産設備はあまり被害を受けていない」と、興味深い指摘をしている。
また、本書は2010年9月の発行だが、驚く程現在の「黒田日銀」下でのアベノミクスの現状を予見しているように思える。
「おわりに-変化は突然やってくる」には、「いつしか私たちは日本の最大の問題はデフレだ、デフレの問題さえ解決すれば良い日が戻ってくる、そう思い込むようになってきています。今のデフレから抜け出しさえすれば次は穏やかなインフレになる・・・しかし別のもっと悪いシナリオに落ちてしまうことはないのでしょうか。・・・穏やかなインフレではなく、急激なインフレかもしれません」とは、恐ろしい予言ではないだろうか。
「貨幣」や「金本位制」、「金融政策」やその歴史などは極めて専門性が強く、関心はあってもなかなか理解しにくいが、本書は、その専門的な内容をわかりやすく紹介していると高く評価したい。 -
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ネタバレ本書の根幹にあるのは、「流動性の罠」というケインズ経済学の古典的命題である。金利をいくら引き下げても、人々は資金を使わず、銀行は貸し出さない――その結果、中央銀行がどれだけ通貨供給を増やしても、実体経済には届かず、投資も消費も動かない。まさに日本が長年経験してきたデフレ経済は、この「罠」の実証例である。著者の岩村充氏は、従来の金融政策はもはや「効かない局面」に突入していると警告し、現在の中央銀行は「将来の成長を前借りする」政策を繰り返すことで、制度としての正統性を徐々に失いつつあると指摘する。
この制度疲労に対し、著者が注目するのがビットコインやブロックチェーンに代表される分散型通貨の可能性である。ここで重要なのは、岩村氏がそれを「中央銀行に取って代わる通貨」としてではなく、「中央銀行の制度的革新を促すテクノロジー」として捉えている点だ。例えば、利子付きデジタル通貨や「減価する貨幣」といった発想は、すでに近代経済学の中で提案されてきたが、技術的な実現手段がなかった。岩村氏は、ブロックチェーン技術によってそれらが現実味を帯びてきたと論じる。
ただし、この議論には慎重さも必要だ。貨幣とは単なる交換手段ではなく、「信認の装置」である。国家や中央銀行が通貨を支えてきたのは、単に紙幣を印刷してきたからではなく、「最後の貸し手」として市場に介入し、経済危機時に人々の不安を緩和する役割を果たしてきたからだ。ビットコインがこの「制度的安心」の代替となり得るのかは、現段階では明確ではない。さらに、仮想通貨は価格変動の激しさやエネルギー消費、法規制との相克など、実用化にはいまだ多くの課題を抱えている。それでも本書が優れているのは、仮想通貨をきっかけに、中央銀行制度そのものを「与件」とせず、不断に問い直そうとする姿勢にある。通貨の本質とは何か。中央銀行は誰のために存在するのか。そして制度が機能しなくなったとき、私たちはどのような仕組みを望むのか。岩村氏の議論は、技術論を超えて、「貨幣とは制度である」とする政治経済学的な視座にまで踏み込んでいる。
『中央銀行が終わる日』というタイトルは、破局の予言ではない。それはむしろ、「中央銀行が終わらないためには何を変えるべきか」という警告である。流動性の罠に囚われ、通貨供給のパイプが詰まった現代において、中央銀行は自らの存在意義を問い直さねばならない。そのとき、制度改革のヒントは過去ではなく、むしろビットコインのような「異物」に宿るのかもしれない。本書は、そうした異物に真剣に耳を傾けるための思考の出発点として、大いに読む価値がある。
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秀逸な一冊!難しすぎる所があるので☆1つ落とし。
経済学部出身者は特に面白いのでは・・・と。
怪しい感じしか無かったビットコイン。そこに仕込まれた設計者の思いに少し触れられた気がします。設計者、天才過ぎる人かも。「中央権力に対する天才の反逆」って感じもしました(笑)
印象に残った言葉たち。
「ビットコインが成功したのは、現金をネットワーク上で作り出したい、しかも中央銀行のような管理者無しに実現したいという目標を、技術の高度化という観点から追い求めないで、人々の利己心を利用してやろう、あるいは競争原理を利用してやろう、という方向から達成しようと発想を転換したところにある」
「ブロックチェーンで権利の帰属者を特定し、そのチェーンの正当性を競争的なマイニングで保証する」
「(マイニングという)プルーフ・オブ・ワーク(POW)自体が貨幣としてのビットコインの価値源泉になっている」
「ビットコインは、マイニングという作業に膨大な電気代がかかる、そのことによって貴重なものになり結果として価値が生じている、要するにPOWが価値を生む」 -
Posted by ブクログ
貨幣や通貨が素人の人にもわかりやすく解説されている良書だと思いました。ただ一つ文句を言うとしたら、第1章の架空の島の物語は質が低い。私は個人的に、このくだりは不必要かつ本の水準を落としていると思いました。そして第2章から金本位制への道が示され、第3章ではついに貨幣の価値が金から離れて、変動相場制の通貨システムへといたる歴史が説明されていました。貨幣の価値が金という実態から離れても問題なく流通した背景には、その貨幣を発行している政府に対する信頼があるからです。そして第4章では、我々の経済の前提が変化しつつあること、成長ではなく横ばいあるいは収縮が当たり前になる世界においては、これまでのような「インフレとプラス成長を前提にした貨幣制度」は修正すべきという主張がなされます。
素人的に納得感があったのは、インフレターゲットはインフレ時にこそ有効な策であって、デフレ時にはいわゆるシルビオ・ゲゼルが提唱した「減価する貨幣」つまりマイナス金利が付く貨幣制度を導入することでデフレを制御できるのだ、という主張でした。ゲゼル型貨幣は管理が極めて複雑になりますが、デジタル化が進んでいる社会においては実現可能であること、またさらにいえば減価させるだけでなく、いざとなれば増価させることもできるような「全天候型貨幣」を生み出すべきという主張は興味深く感じました。思考実験という意味でも頭の体操になりますし、正しい/正しくないという軸からではなく、社会の前提が変わりつつある時代の貨幣はどうあるべきか、という問いを考える意味で多くの気づきがありました。 -
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なかなか骨太な本…濃厚…
国民国家、株式会社企業、通貨発行体(中央銀行)の誕生
あって当たり前だと思う自分がいる不思議さ
19世紀 フランス革命の人権宣言には女性を国家の主体として認めていなかった。
国民国家→国家の本質は領域内にいる人々
国家=王家の時代
王様がいない→財産の収奪がない、所有権の成立。→蓄財へ
アジアには皇帝がいた
国軍に参加できるというのが一つの権利、国家の所属意識を得られる機会だった時代も
デヴィッドリカード 比較優位論・自由貿易を支持する自明の原理
しかしこれは国の分岐を招いた説.(収益性の高い企業はそれを投資に回し成長と回収のサイクル)
グローバル企業の台頭,グローバリズムー>国家は企業を招致したいー>各国の減税競争(底辺への競争)ー>そのツケは一般市民が支払うことに.グローバル企業及び株主はウハウハな裏で.
リアル財(鉄鋼,綿花,種子etc)に対するデジタル財.後者は無限の再利用が可能.一旦独占して仕舞えば油田や鉱山を抑えるどころでは無い利益の源泉を得られる
ハーバート・A・サイモン 「情報を持つものが持たないものに優位を持つ時代から情報を持つものが持たないものにすりよって自分のコンテンツを消費してもらう時代が来る」 ー>先見の明すぎる
事実,今は人々の余暇・関心の奪い合いの時代
伝統的メディア→編集方針(ステークホルダー,イデオロギーetc)に沿う真実を提供
非伝統的インターネットメディアー>民衆の関心にそう(関心が一番”心地いいと感じる”)真実を提供
情報の繭:人は欲しい情報にしか耳を傾けない.同質な意見や主義を持つ人で群れ視野はどんどん狭くなっていく.
BTCのような仮想通貨=分散化された記録維持管理システム
ネガティブケイパビリティ:
不確実なものや未解決のものを受容する能力を記述した言葉。 日本語訳は定まっておらず、「消極的能力」「消極的受容力」「否定的能力」など数多くの訳語が存在する。
著者最後にPoSを推している?確かに所有者に還元する仕組みがありその経済圏が健全であれば人は集まる.経済圏同士でいい意味での競争を促す
地獄への道は善意で満ち溢れている