【感想・ネタバレ】中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―のレビュー

あらすじ

日本銀行の金融政策はなぜ効かなくなったのか? 仮想通貨はなぜお金として機能するようになったのか? 「金利付き貨幣」の出現は、経済の仕組みをどう変えるのか? 日銀を飛び出した異能の経済学者が、「貨幣発行独占」崩壊後の新しい通貨システムを洞察する。マイナス成長がもたらす大格差時代を生き抜くための必読書。 ※単行本に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。

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2018年12月31日

Posted by ブクログ

ブロックチェーンとかビットコインを学ぶにはとても良い本です。大変勉強になりました。日々勉強ですね。
銀行も今の業務形態からどんどん変わっていくのでしょうね。日々の技術の進歩で業務が変わっていき、それについていくためにどうするか考えたりするのでしょう。そもそも自分たちが業務を変えてしまうような技術の進歩に携わっていきたいものですね。日々チャレンジ!

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2017年06月07日

Posted by ブクログ

前著「貨幣進化論」に続く、日銀出身者による貨幣論。前著と同様に現下の金融政策は限界に来ているとの認識に立ちつつ、今作は実社会でも徐々にそのプレゼンスを高めつつあるビットコインのメカニズムを下敷きに「良い通貨」とは何かを論じ、それが金融政策のぶち当たっている壁を破る可能性を示してゆく。

第1章で前著のアウトラインを大まかになぞった後、第2、3章でビットコインの成り立ちやロジック、今後の展望が解説される。そこではマイナーたちの私利追求がこの管理者不在のいわば「ソーシャルコモンズ」的システムの基盤を成していること、そしてプロトコル次第で様々な目的指向に応ずる通貨が設計可能性であることが示される。そして第4章で低成長時代における金融政策の限界が論じられた後、いよいよ第5章では仮想通貨の方法論を用いた「貨幣利子率」を通じ、中央銀行の通貨独占発行権を排した、多頭的な通貨政策で「流動性の罠」を迂回する方法が模索される。

現行の日銀の金融政策については相変わらず辛辣な論調だが、いよいよ手詰まり感の彩りを濃くする現状を目の当たりにすれば、如何に上げ潮派であっても本書の提案を一部でも真剣に受け止めねばならない時期に来ているのではなかろうか。無論、本書の提案がすぐに現実の政策に適用可能というわけにはいかず、現時点では思考実験的な領域に止まるものも多い。しかし「そもそも通貨とは何か」を考える上でも、ビットコインを題材とした本書の議論は極めて有用と思う。

基礎的な暗号理論にまで立ち返った説明は個人的に馴染みの薄いものだったが、これまで読んだどの仮想通貨本よりも丁寧で解りやすかった。また、中央銀行のバランスシートを投資信託のそれに擬して説明される「決済通貨」と「価値尺度測定通貨」の分離などは、極めて直感的で納得的。マイナス金利等のニュースに接するうち、「通貨って何だかよくわからなくなってきた」と感じ始めた向きに是非お勧め。

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2016年05月22日

Posted by ブクログ

師、岩村先生の最新作。ブロックチェーンについては野口悠紀雄先生と並ぶ日本の2トップだけあり、ブロックチェーン、特にビットコインについて、本質的な示唆を与えてくれ、読みながら、何度も頷かされた。でも最も面白いのは、あとがきである「おわりに」。先生らしいなと、ニヤリとさせてくれる。

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2021年12月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 本書の根幹にあるのは、「流動性の罠」というケインズ経済学の古典的命題である。金利をいくら引き下げても、人々は資金を使わず、銀行は貸し出さない――その結果、中央銀行がどれだけ通貨供給を増やしても、実体経済には届かず、投資も消費も動かない。まさに日本が長年経験してきたデフレ経済は、この「罠」の実証例である。著者の岩村充氏は、従来の金融政策はもはや「効かない局面」に突入していると警告し、現在の中央銀行は「将来の成長を前借りする」政策を繰り返すことで、制度としての正統性を徐々に失いつつあると指摘する。
 この制度疲労に対し、著者が注目するのがビットコインやブロックチェーンに代表される分散型通貨の可能性である。ここで重要なのは、岩村氏がそれを「中央銀行に取って代わる通貨」としてではなく、「中央銀行の制度的革新を促すテクノロジー」として捉えている点だ。例えば、利子付きデジタル通貨や「減価する貨幣」といった発想は、すでに近代経済学の中で提案されてきたが、技術的な実現手段がなかった。岩村氏は、ブロックチェーン技術によってそれらが現実味を帯びてきたと論じる。
 ただし、この議論には慎重さも必要だ。貨幣とは単なる交換手段ではなく、「信認の装置」である。国家や中央銀行が通貨を支えてきたのは、単に紙幣を印刷してきたからではなく、「最後の貸し手」として市場に介入し、経済危機時に人々の不安を緩和する役割を果たしてきたからだ。ビットコインがこの「制度的安心」の代替となり得るのかは、現段階では明確ではない。さらに、仮想通貨は価格変動の激しさやエネルギー消費、法規制との相克など、実用化にはいまだ多くの課題を抱えている。それでも本書が優れているのは、仮想通貨をきっかけに、中央銀行制度そのものを「与件」とせず、不断に問い直そうとする姿勢にある。通貨の本質とは何か。中央銀行は誰のために存在するのか。そして制度が機能しなくなったとき、私たちはどのような仕組みを望むのか。岩村氏の議論は、技術論を超えて、「貨幣とは制度である」とする政治経済学的な視座にまで踏み込んでいる。
 『中央銀行が終わる日』というタイトルは、破局の予言ではない。それはむしろ、「中央銀行が終わらないためには何を変えるべきか」という警告である。流動性の罠に囚われ、通貨供給のパイプが詰まった現代において、中央銀行は自らの存在意義を問い直さねばならない。そのとき、制度改革のヒントは過去ではなく、むしろビットコインのような「異物」に宿るのかもしれない。本書は、そうした異物に真剣に耳を傾けるための思考の出発点として、大いに読む価値がある。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

秀逸な一冊!難しすぎる所があるので☆1つ落とし。

経済学部出身者は特に面白いのでは・・・と。

怪しい感じしか無かったビットコイン。そこに仕込まれた設計者の思いに少し触れられた気がします。設計者、天才過ぎる人かも。「中央権力に対する天才の反逆」って感じもしました(笑)

印象に残った言葉たち。

「ビットコインが成功したのは、現金をネットワーク上で作り出したい、しかも中央銀行のような管理者無しに実現したいという目標を、技術の高度化という観点から追い求めないで、人々の利己心を利用してやろう、あるいは競争原理を利用してやろう、という方向から達成しようと発想を転換したところにある」

「ブロックチェーンで権利の帰属者を特定し、そのチェーンの正当性を競争的なマイニングで保証する」

「(マイニングという)プルーフ・オブ・ワーク(POW)自体が貨幣としてのビットコインの価値源泉になっている」

「ビットコインは、マイニングという作業に膨大な電気代がかかる、そのことによって貴重なものになり結果として価値が生じている、要するにPOWが価値を生む」

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2024年10月18日

Posted by ブクログ

ビットコインと中央銀行の未来について論じた本。
岩村さんの他の著書と同じように、さらっと読むには面白いんだけど、ちゃんと理解しようと思うと難しい、でも多くの示唆があるんだろうと感じさせる内容。

金融政策の担い手としての中央銀行が昨日不全に陥ったとき、中央銀行は終わるのか。新しい生き方があるのかもしれない。巻末のこうした議論は、中央銀行以外の組織にも示唆的だろう。

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2018年09月16日

Posted by ブクログ

・貨幣に金利をつけるという仮説
現実の貨幣に金利が付いたらどうなるのか。そんなお金は嫌だ。しかし、確実にお金は動くようになるだろう。マイナス金利をつけられたら、減るくらいなら使おうと考えるだろう。
いくら、メディアで「金融緩和」と言われていても、「デフレから抜け出すには、お金を使わないといけない」と分かっていても、みんな結局は自分が一番可愛いんです。明るい未来が見えているからこそ、人はお金を使おうとする。

・お金の不思議
日本人は貯金が大好きな人種と言いますが、改めて考えてみるとお金というのは不思議。
ただの紙切れである。みんなが価値があると思い込んでいるから成り立っている。
この理論から言えば、仮想通貨もみんなが価値があると言えば、お金になる可能性は大いにありえる。

・仮想通貨の可能性
まだまだ、ビットコイン・仮想通貨と聞いて胡散臭いという印象を受ける人が多いのではないだろうか。しかし、考えれば考えるほど、仮想通貨は段々日常になっていくように感じる。
運送会社が荷物の届けを見直すほどネットを使って物を買うということが当たり前になっている今日。
送金の簡単さ、手数料の安さという面で仮想通貨という概念はネット社会の現代において、理に叶っているのではないか。

管理者がいないという点もおもしろい。どこの国の支配下でもないお金。
少々専門的で難しいと思うところもありますが、お金に対する考え方を変えてくれる本。
仮装通貨というものを、ただの「仮装」ではなく、リアルに考えることのできる内容で良い意味で期待を裏切られた。

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2017年12月22日

Posted by ブクログ

ビットコインの基本を、公開鍵暗号から説明してくれる。その上で、ビットコインのプロトコルにある限界、それを回避する代替通貨アルトコインがあり得ること、従来通貨もビットコイン達と同様裏付けがないことを説明する。
ところで、楕円曲線暗号の説明を今まで何度も聞かされたが、この本で初めて入口がわかった (~_~;)

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2017年07月01日

Posted by ブクログ

ビットコインと呼ばれるものが「仮想通貨」であることを知っている人は少なくないと思うが、実際に誰が作り出して、どういう仕組みで管理されているのかを知っている人はまだ多くないだろう。
本書は、新しい通貨としてのビットコインの可能性と役割、課題として残る点などが指摘されており、ビットコインと一国のマクロ経済政策、特に金融政策との関係を説明している。
ビットコインは、マイナーと呼ばれる人たちによって作り出されており、ビットコイン自体の価値が変動するため、投資の対象ともなっているようだ。仮想空間の技術的な部分や、どうやって上限が決まるのかなど、専門的で難しい。
平易な言葉で書かれているとはいえ、経済学の素養がない人には、本書はマニアックすぎると思われる。筆者の議論はきわめて論理的であり、「すごいな~」と思いながら読んだ。

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2016年12月09日

Posted by ブクログ

世界のデフレ傾向は大発明と大発見がひと段落したことによる。人口が増えない日本で脱却は難しい。

ケインズ的な政策運営は、アメリカのスタグフレーションで
行き詰った。
ロバートバローの等価定理=財政政策の効果がなくなる。

流動性の罠を避けるためのマイナス金利。ビットコインの技術を利用できないか。

行動経済学=カーネルマンとトベルスキー
心のバイアス問題。豊かになるときは保守的、貧しくなる時は冒険的。後悔の回避=失敗したくない。

各国の協調は、貨幣の逃げどころがなくなっている=ビットコインはどうか?

コロンブスの卵=私がやったあとならだれでもできる。西へ航海することはだれでもできる。

キプロスの金融危機で逃避手段としてビットコインが使われた。

暗号技術=DES、AESなど。アルコリズムがわかっていてもキーがわからなければ解読できない。非対称鍵暗号。フェルマーの小定理。

公開鍵と秘密鍵。SSL通信で使われている。

手形や小切手はコピーできるが、現金はコピーできない。電子データはコピーできる。

台帳を使えばどうか。ビサンチン将軍問題が起きる。

ハッシュ関数を埋め込む。

試行は市折込になるか。電車の時刻表は平均的になるが、バスやタクシーは待つことが絞り込みにならないため、平均分数では表せない。指数分布やポワソン分布に従うから。

ブロックチェーンで管理する。特定の管理者を置かずに台帳を管理する方法。POW。マイナーの発掘努力が台帳の管理方法になっている。マイナーのPOW。
ビサンチン問題を解決せず回避した。

SDRは、無から生み出されている。

ビットコインの追従者=アルトコイン。古代の貨幣と同じ。
ビットコインの問題点=スケーラビリティ=大量取引に対応できない。=他のアルトコインへの乗り換えが発生する可能性。

ブロックチェーンの活用法=リップル、イーサリアム。

マイニングは4年に一度づつ、半減する。マイナー同士のチキンレースになる。

供給が硬直的であることは通貨としては不適格。
貨幣として使えても、将来価格が不安定なため通貨にはならない。
POWモデルの通貨。
生成量が少なくなっていくことは、先行者利益を確保しようとしたのではないか?

長くしぶといデフレと短い水準調整的なインフレの繰り返しになるのではないか。
格差は広がる。

底辺への競い合い=税制や規制を緩和して企業を誘致しようとする争い。

コースの定理=環境負荷となる企業活動を最適化するための法則。=投資家は分散投資できるが、社員はそうはいかない。=投資家はリスクを取って利益を追求したがるが、労働者はそうではない。=労働者を経営に入れたほうが最適化できる。

グローバル市場は一部のエリートのみのもの。一般には労働市場は閉鎖的。格差は縮小しない。

ゲゼルの魔法のお金=スタンプ紙幣によって現金にマイナス金利をつける方法。

ハイエクの通貨の選択。より便利で価値のある通貨だけが残る。

ビットコインの価値の源泉はマイニングの労力(電気代)。POW型通貨。
国際決済のコストが安い。送金者にコストを負担させない。

ブロックチェーン技術をフィンテックに使えないか。ゲゼルの魔法のお金と同じことをできないか。そうすればマイナス金利を実際に運用できる。

ティンバーゲンの定理=目標の数だけ手段が必要。

異次元緩和は政策効果の時間軸政策=将来からの借り入れ。
起こりそうなのは物価のジャンプアップ。
マイナス金利が多くなれば、現金で保管する需要が増える。現金保管コスト以上にマイナス金利はつけられない。無視すれば再び流動性の罠に陥る。

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2016年07月23日

Posted by ブクログ

中央銀行が通貨の独占発行権を持ち、金融政策による景気対策を行うという現状が既に限界を迎えているとの認識の下、今後の中央銀行はどうあるべきかを、ビットコインをはじめとする仮想通貨のテクノロジーを参照しながら探っていく。

通貨を自由競争市場に委ねるハイエクの思想、貨幣自体にマイナス金利を付せるようにするゲゼルの思想、ビットコインのブロックチェーン技術を応用したデジタル銀行券…と、著者の提示する技術は、現下の閉塞状態を乗り越え、明るい未来を示すものに見える。
ただ、その(技術的な意味ではなく、政治的・社会的な意味における)実現可能性を考えると、手放しに楽観視はできない。

著者の前著『貨幣進化論』と併せて読むのがよりベターだろう。

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2016年07月03日

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