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Posted by ブクログ
日銀出身者の本は変に感情的なところがなく落ち着いて読めるのがいいところだと思う。金融政策に過剰な期待を寄せる向きには「日本だけがデフレで国益を目減りさせている、早くデフレを止めろ!」と息巻く者が多いが、本書は冷静にデフレが遅かれ早かれ日本だけの問題ではなくなることを指摘している。日本は特殊なのではなくフロンティアを走っているに過ぎないということだろう。また「自然デフレ率」を前提に最適システムを模索することを示唆する辺りは、アベノミクスを経た今読んでも全く色褪せたところを感じさせない。逆に言えば、本書でも繰り返し言及があるように、金融政策には貨幣と物価に関する問題の発生の時間軸を前後ろにずらす効果しかない訳だから、アベノミクス前だろうが後だろうが、いずれは我々は「自然利子率の長期的低下=成長鈍化」という避け難い事実に直面せざるを得ないのだ。
内容は貨幣と各国中央銀行のクロニクルの中で貨幣経済に関する基本的論点に触れていくというスタイル。「そもそも貨幣って?」という根源の疑問にも丁寧に立ち入っていて理解が進む。特にパンの木の島での物々交換経済から国際的な貨幣経済に移行する仮想物語が解りやすい。貨幣価値と株価のアナロジーの指摘も目からウロコ。貨幣経済や金融政策に関する書籍は結構読んだつもりだったが、まずこの本に手を付けていればより理解がスムーズだったのに、と思わせられた。
Posted by ブクログ
本書は、「貨幣と通貨システム」についての本であるが、とても読みやすくわかりやすい。
「貨幣」について「パンの木の物語」という架空の世界で表現した内容には驚いたが、なるほどこのように読むとその「原理」がわかる。
「金本位制の旅」を読むと、現在当たり前のこととなっている「利子」などへの見方が時代とともに変化してきたこともわかるし、「金本位制」と1930年の大不況時代の経済政策なども理解しやすい。
しかし、歴史では「ブロック経済」についてはその後に戦争を招いた悪しき政策のように教えていたと思うが、本書で読むその評価は「自由貿易の世界では財政による景気刺激を行っても効果の一部は他国に流出して・・・ブロック経済はそれを回避させる効果はあったのです。実際、ブロック経済と財政出動のセットを選択した国々は、ほぼその順番に景気を回復させることに成功しています」とあるのには驚いた。
日本の戦後の高度成長についても、「空襲などに対して優先的に疎開保護されていた資本財生産設備はあまり被害を受けていない」と、興味深い指摘をしている。
また、本書は2010年9月の発行だが、驚く程現在の「黒田日銀」下でのアベノミクスの現状を予見しているように思える。
「おわりに-変化は突然やってくる」には、「いつしか私たちは日本の最大の問題はデフレだ、デフレの問題さえ解決すれば良い日が戻ってくる、そう思い込むようになってきています。今のデフレから抜け出しさえすれば次は穏やかなインフレになる・・・しかし別のもっと悪いシナリオに落ちてしまうことはないのでしょうか。・・・穏やかなインフレではなく、急激なインフレかもしれません」とは、恐ろしい予言ではないだろうか。
「貨幣」や「金本位制」、「金融政策」やその歴史などは極めて専門性が強く、関心はあってもなかなか理解しにくいが、本書は、その専門的な内容をわかりやすく紹介していると高く評価したい。
Posted by ブクログ
貨幣や通貨が素人の人にもわかりやすく解説されている良書だと思いました。ただ一つ文句を言うとしたら、第1章の架空の島の物語は質が低い。私は個人的に、このくだりは不必要かつ本の水準を落としていると思いました。そして第2章から金本位制への道が示され、第3章ではついに貨幣の価値が金から離れて、変動相場制の通貨システムへといたる歴史が説明されていました。貨幣の価値が金という実態から離れても問題なく流通した背景には、その貨幣を発行している政府に対する信頼があるからです。そして第4章では、我々の経済の前提が変化しつつあること、成長ではなく横ばいあるいは収縮が当たり前になる世界においては、これまでのような「インフレとプラス成長を前提にした貨幣制度」は修正すべきという主張がなされます。
素人的に納得感があったのは、インフレターゲットはインフレ時にこそ有効な策であって、デフレ時にはいわゆるシルビオ・ゲゼルが提唱した「減価する貨幣」つまりマイナス金利が付く貨幣制度を導入することでデフレを制御できるのだ、という主張でした。ゲゼル型貨幣は管理が極めて複雑になりますが、デジタル化が進んでいる社会においては実現可能であること、またさらにいえば減価させるだけでなく、いざとなれば増価させることもできるような「全天候型貨幣」を生み出すべきという主張は興味深く感じました。思考実験という意味でも頭の体操になりますし、正しい/正しくないという軸からではなく、社会の前提が変わりつつある時代の貨幣はどうあるべきか、という問いを考える意味で多くの気づきがありました。
Posted by ブクログ
貨幣は、価値の乗り物。
貨幣の進化
パンの実、美しい貝殻、貴金属、兌換紙幣、不換紙幣。
自然利子率=お金の利子ではなく、モノの利子=モノを貸し借りした時に一年後にどのくらい増えたら文句がないか。
シニョレッジ=鑑定料=貨幣発行権=シニョールとは領主のこと。
旧約聖書では利子を禁じている。利子は神の時間が産んだモノ。ただし異教徒への貸付はとっても構わない。=ユダヤ教徒に金貸しが多いのは、異教徒が多いから。ただしリスク・プレミアムの部分はよい=インテレッセ=インタレストの語源。
初穂料は、種籾のお礼としての利子と同じ。
江戸時代はゼロ成長だったため、時々徳政令でリセットしないと、偏った社会が収まらない。
ゲゼルのスタンプ付き貨幣=現金にマイナス金利をつけることができる。
自然利子率は資本の限界効率で決まる。
レンテンマルクの奇跡=5日間でインフレが収まり、その後はワイマールの黄金の日々、とよばれる繁栄があった。
フランスではポワンカレの奇跡=為替相場を操作しておいてフラン安のときに新平価で金兌換に復帰した。ポワンカレ予測のポワンカレは従兄弟同士。
日本とイギリスは、対戦前の平価で金兌換に復帰。しかし高金利にせざるをえなかった。
アメリカはロアリングトゥエンティーズ=雄叫びの20年代=1920年だいのアメリカは世界の経済大国になった。
高速道路、映画、ラジオ、電話、水道、T型フォードなど。
暗黒の木曜日で、イギリスと日本に通貨売り圧力。
金兌換離脱。最後にフランスも離脱してブロック経済化。ブロックの拡大競争が第2次大戦に。
プレトンウッズ体制では、金と交換できるのは通貨当局だけ。
トリフィンジレンマ=基軸通貨であるためには信任が必要。しかし国際決済に使うためには十分な通貨が供給されなければならず、国際収支は赤字になるはず。プレトンウッズ体制は矛盾がある。
BISは第一次世界大戦後のドイツの賠償金の受払機関として発足、BIS規制とは、実質的にBISが会議室を用意した会議、といった程度のもの。
パンコールとSDRの違い=パンコールは決済のために貸与されたもの。SDRは与えられたもの。
ドイツのハイパーインフレは、インフレというより貨幣崩壊のようなもの。
日本の戦後インフレは、凍結されていた預貯金が一斉に不足する生活物質に向かったため。通貨の信任が失われたわけではないから、貨幣崩壊ではない。
ドッジ・ライン=IMFの政策と似ている。
朝鮮戦争の特需。
スターリン暴落。
高度成長。
民生財生産設備は破壊されたが、資本財生産設備は優先的に疎開していたため、温存されていた。
1ドル360円は最初はきつかったが、だんだん楽になってきた。最初は国際収支の天井に成長を抑えられた。
現代の貨幣は、政府への信頼が貨幣価値をつなぎとめている。
穴をほって埋める公共事業でも景気対策になるか。=ヘリコプターマネーが有効か、と本質は同じ。お金をばらまいたあと、それを人々がどう判断するか。貨幣錯覚がどう働くか。
貨幣のネットワーク効果。一般受容性。=統合のベクトル
離散のベクトル=マイレージ、ポイントカードなど。
ハイエクの貨幣発行自由化論。貨幣発行にも信用創造の競争をさせる。
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