向坂逸郎のレビュー一覧
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「ヨーロッパには幽霊が出る―――共産主義という幽霊が。古いヨーロッパの強国は全て、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる。教皇とツァー、メテルニヒとギゾー、フランス急進派とドイツ官憲。」は、本書の冒頭部分である。説明が必要なのは、ツァー=国王や有力領主、メッテルニヒ=オーストリアの外相、ギゾー=フランス王制最後の首相。「個人の獲得した財産、自ら働いて得た財産を、すなわち一切の個人的な自由、活動、独立の基礎をなす財産を、我々共産主義者は廃棄しようとする、という非難が我々はに対してなされる。働いて得た、苦労して得た自分で儲けた財産!諸君は、ブルジョア的財産以前からあった小市民の、小農民の
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2024/4/18
労働力は他の原料や材料と同じで売ることができる物資みたいなもの。我々労働者はこの労働力を売って対価を得ている。生産の過程で原料の代金に労働力分の付加価値が付くわけだが、この再生産にあたり労働課程は労働力分の代金の付加価値を超えて続行される。剰余価値は資本家に。
#2 2024/4/17
生産で使用する物資のほとんどは加工物であり、
綿、木版、ネジ、鉱物
それを購入して加工、付加価値をつけて販売する。種子は過去に人が作ったものなので、こういった自然物も加工品と呼べる。
労働はこれらの原料と同じで、資本家が購入する物資のように捉えることができる。
原料と労働を購入して付加価 -
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本来、労働は創造的な活動で、自己実現、人間能力の開花につながる。しかし、ものを生産する手段(労働者)を資本家が握る社会では、労働者は自分の人生や運命を決めることができない。本来、自分のものであるはずのものが自分から離れてよそよそしくなる(疎外)。
※疎外の指標(無力・無意味・孤立・自分が自分でないような感覚)。単純流れ作業の労働者は疎外感が高い。選択肢もなく、ただひたすら単純作業を機械のように続ける労働者。一方、職人は疎外感が低い。自分の技術を日々磨き、成長・やりがいを感じている。R・ブラウナー
物の価値は労働量で決まる。人間は自分で素材を買い、働いて価値を付けて、売るのなら、搾取はどこに -
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ネタバレ題の通り、当時の共産主義の理論と実践が記述されている。現代で共産主義というとイデオロギー的な他意を含みがちであるが、本書ではその根幹を成すロジックに触れることができる。
ありがちな誤解として一切の財産の私有の廃棄というものがあるが、本書ではそれは明確に否定されている。本書で述べられているのはあくまで生産手段たる資本の共有財産化であり、それはプロレタリアが元々所有していない、所有できないものを指している。また同時に、相続も資本の拡大と階級間の対立を助長するものにすぎないことから、これも否定している。
これらの原則は、突飛で理解に苦しむような類の思想というよりはむしろ、現代の価値観に照らしても -
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ネタバレ久しぶりに読んだなあ,マルクス・エンゲルスの文章。
いま,
内田樹✕石川康宏著『若者よ,マルクスを読もう 20歳代の模索と情熱』(かもがわ出版,2010年)
を読んでいる。高校生以上向きに書かれた本書は,二人の手紙のやりとりという形をとってマルクス・エンゲルスの著書を順に読み解いていく。二人の手紙風の文章は,「簡潔!」とまではいかないけれど,これまで読んだどのマルクス解説書よりもわかりやすいし読みやすい。今の日本の社会で,ほとんど消えかかっているマルクス(の著作や思想)の現代的な意味を掘り起こしていこうという本だ。
その最初に取り上げられているのが『共産党宣言』である。『共産党宣言』には -
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学生時代に読んだ記憶があるのはこの第1巻のみ。今回30年ぶりに再読を思い立ったが、この岩波文庫版が第9巻まであるということを知り愕然とする。みんなよく読むよなあ。以前ホッブスの「リバイアサン」に手をつけたときは第3巻の最初で挫折、しかも今回は優にその3倍以上はある。全巻読破は無理かなと思いつつ、幸か不幸かコロナ禍で通勤時間が節約できている今しか読む機会はなかろう、と考え読み始めた。
個人的に貴重な再発見であったのは以下のくだり。商品生産における価値体系「使用価値」「交換価値」とパラレルな形で、労働にも「具体的な有用労働」と「抽象的な人間労働」があり、交換価値は専ら労働時間で計量される抽象 -
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これを読んだ当時はマルクスの慧眼に気付かなかったが、ブルデューなどの階級社会論を読んでから、なるほどと思った。かつてから階級社会では、上位の階級は国際的にラテン語でコミュニケーションを取り、さらに上位の王室では婚姻により女性を通じたコミュニケーションがあった。フランス革命時に対仏大同盟、対革命の連合が出来たのはそのような横のつながりが、国を別にしても潜在的に存在していたからである。上位こそ横の連帯が強く、国際的に融通が利くが、末端に行くにつれ人々は分割され、いわゆる分割統治の形態がとられる。中間共同体を失った近代以降では、末端の人々をむずびつけるものは無きに等しい。国単位でみても、ウォーラース
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「今日までの歴史は階級闘争の歴史である」という有名なフレーズで始まる本書。あたかも、社会に支配者がいて被支配者を搾取しているという対立構造を設定して、いたずらに対立を煽っている扇動的な虚構理論。
古来、我が国は、農業集団、職工集団、芸能集団、治安集団(武士)、権威集団(朝廷)、などの各職能集団が調和し、歴史を形成してきた。
ゆえにこれら集団が比較的分かりやすく分類されているため、対立軸を持ち出すとあたかも階級闘争が現実に存在すると錯覚してしまう。
我が国の諸集団は相互補完し、社会を循環させてきた。
一部のインテリ層はこれを悪用し先の大戦で我が国を「敗戦革命」に落とし入れようとした。
しかし、現 -
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-資本主義的蓄積は、その不変資本(生産設備等)と可変資本(労働)への分配を恣意的にすることによって、ますます支配する資本家と支配される労働者の立場を固定する(人件費削減)
-労働者の生み出す剰余価値は、富として資本家に蓄積され、また地代や租税として地主や国家に吸い上げられる、という三層構造である
-資本主義的生産の歴史は、宗教改革による教会所領の掠奪、封建社会の終焉、自由農民層の崩壊と都市工業への賃金労働者としての供給、という仮定で築かれた。
-帝国主義は、自国内で国民から土地を奪い、植民地では現地人から土地を奪って、さらに保護貿易によって利殖する
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第 -
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第二分冊。
手工業の機械化、労働及び機械の資本化、労働の単純化、という過程の中、
資本家は、剰余価値を吸い上げるため、絶え間なく労働の時間若しくは強度の増加を迫る。
その中で労働者の保護と待遇改善を目的としたはずの工場法だが、図らずもさらなる機械化と労働者の雇用数減を推進し、小規模工場を駆逐して大規模工場資本の独占的支配権を高める。
要約すると、以上の過程をこの第二分冊で説明している。
産業革命による動力および手工業の機械化と、機会の資本化が、労働者を労働に留まらせて奴隷化する、という構図がわかりやすい。
詳細な論述の合間に、当時の主にイギリスにおける統計や、古代~中世の哲学も挟んでいる -
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大学生になりたての時分、君たちは資本主義社会に生きながら資本論も読んでないなんて!と教授に焚きつけられてはや十年あまり、労働者としての経験を積んで中間管理職となり、いよいよこれは読まないとまずいぞと思い手にとる。これだけ記号消費の時代にあっていまやマルクスの論だけで全てを説明できようとは思わないけれど、生産に費やされた労働力が価値を決めるという考え方が、労働者の価値をその維持と再生産に必要なコストにもとめる考えに行き着くのはなんともいえない悲哀があってぐっとくる。交換価値と使用価値を区別したうえで、ではなぜ等価交換のなかから資産が生まれてくるのかという問いに展開していくのがたのしい。交換におい
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「経済学批判の書であるマルクスの『資本論』から、何故マルクス経済学が誕生したかは、歴史の謎です」
「天上の批判を経由し地上の批判を貫徹した結果、この地上になお天上の論理が働いていることを明らかにする、宗教批判の継続」
いつか読もうと思っていたマルクスの大著。
上述の熊野純彦氏の言葉を聞いてやっと読み始めた。
岩波文庫全9巻というボリュームは一年くらいかかると覚悟したが、思いのほか読みやすく、一年は要らなそう。
第一巻の読みどころ:
━私的労働の生産物は、それ自身独立したもののように見える。これを「物神崇拝」と名付ける
━交換の中で最初の価値を超えて与えられるものを「剰余価値」と呼ぶ
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