青柳正規のレビュー一覧
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ローマの盛衰についての概説書。
入門書のような見せかけだが、実はローマ史の2~3冊目程度で読むのが推奨。通史を期待すると肩透かしをくらうと思う。
共和制ローマ時代からローマ帝国滅亡までを概説しているが、帝政期、しかもそのうち初代皇帝アウグストゥスの治績に特に重点を置いた構成となっている。
それはローマの最良の時代の基礎を築いたのも、その後のローマの限界の端緒が垣間見えたのも、アウグストゥスの時代だったからということが読めばよく理解できる。
本書の良い点は「なぜ」が大変分かりやすい点。
古代ローマは、その1000年近い歴史の中で、王政⇒共和政⇒(内乱)⇒帝政⇒瓦解とその性格を徐々に変化させて -
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ネタバレローマという都市を歴代の皇帝たちがどのように整備し、どんな建物を立てていったのかという観点から見ていくローマ史。凱旋門や神殿など記念的建物から、水道の整備、大火からの復興など、一つ一つの計画にどんな意図があったかを歴史とからめて探っていくような本になっている。カエサルからコンスタンティヌスまで扱っていてコンパクトにまとまっており、今まで読んだローマ史関係の本と違って内政が中心の記述で知らないこともたくさんあって勉強になった。
皇帝たちが建築によって自らの栄光を刻み込んでいったローマだが、コンスタンティヌスの頃には所狭しと並んだ古い記念建築物をかかえこんで発展の余地のない老朽化した都市になってし -
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文明の発生と消滅が必須であれば、成功と失敗から学ぶべきことは「失敗の仕方」ではないか。
ということで、《興亡の世界史シリーズ》を読む。
『人類文明の黎明と暮れ方』では、ヒトの進化から古代文明までが語られている。
前半の「言葉の定義」解説的箇所にやや手こずったが、シュメールの解説あたりからガゼン面白くなる。
中でも「チグリス・ユーフラテス川とナイル川の氾濫の違いが、二つの文明の相違を生み出した」と……。
メソポタミア文明のヨーロッパへの影響とエジプト文明の過大評価というのも面白い。
また、ギリシャ文明のことをこんなに知らなかったことに気付かされる。
「おわりに」では、現代の問題と筆者自身の -
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世界史についての本。
興亡の世界史というシリーズの中の最終巻。2007年に出されていたが、文庫化されるにあたって新しく手直しされたもの。
従来の世界史というのは西洋史を中心としたものであったが、本書ではそれに対してもっと多文化的で中立的な世界史を提唱している。
人口問題については、人口バランスとその国の繁栄について書かれており勉強になった。日本は戦後の復興期、高度成長期に人口ボーナス期を迎え、一気に経済繁栄した。これからは急速な高齢化と少子化で人口減少時代を迎える。経済的な縮小はやむを得ないだろうと思う。しかし、世界的には人口増加による環境問題に直面しており、日本の人口減少は今後に必要な世界的 -
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古代ローマが始まってから終わるまでの歴史や戦争、政治について教えてくれる本。古代ローマの歴史や文化にもうちょっと明るくなってから読み直したら、もっと楽しく読めそう。分かってたけど、もともと知っていた物にしか反応できないのね。なのでもともといくらか知っていたことについて書かれているところはとても楽しく読めた。そうでなかったところは適当に流し読んでた。分かったら、きっと興味深いんだろうな。
ローマで文字が使われるようになったのって、紀元前6世紀頃からなんだ?メソポタミアよりだいぶ後なんだわね。
ギリシャ文字がエトルリア文字になって、エトルリア文字がローマ文字になったんだって。ローマ文字は今のアル -
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1964年の東京オリンピックを挟む1955年から1973年までを高度経済成長期といい、GDP成長率は年平均9.1パーセントであった。しかし、それを支えたのは人口増加であり、すでに人口減少時代に入った日本が、GDPの高い成長率を取り戻すことはない。
ゆえに、これからの日本人の暮らしを豊かにするのは物質ではなく、文化である。文化による精神的満足が大事になる。
また、近年加速するグローバル化はアメリカ化とほぼ同義であり、それは反作用としての反グローバル化の流れをもたらした。アイデンティティを自国の文化に求め、自国ファーストの考えが世界を分断しつつある。
イギリスのEU離脱もしかり、スコットランド独立 -
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ローマ帝国の歴史を成り立ちから、東西分裂(実質崩壊)までコンパクトに1冊で。基本のき、ということでジュニア新書から選ぶも、いきなり色々と目から鱗で超面白かった。カエサルってローマ帝国の人だったんだ!オクタウィアヌスってアウグストゥスだったんだ、8月!とか。子供のころって地理が嫌いだったせいで世界史もイメージが全くわかずに、さっぱりだったんだが、今まがりなりにも海外に行ったことがある経験を踏まえて読むと無茶苦茶面白かった。実のところヨーロッパってほぼ未踏なんだけど、これで体験後に読むとさらに面白いだろうと思うと歳を取るのも悪くないな、とか最早本の感想じゃねーなこれ。
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文化庁長官が語る「文化」論。日本のソフトパワーの底力、それは、外来の文化を柔軟に取り入れ、寡黙でシャイな日本人ではあるが、連綿と培ってきた「和」の心で各地の小さな文化をネットワーク化し、切磋琢磨することにより世界が絶賛する日本文化を花咲かせるに違いと言っている。
無味乾燥な大都会の発想である「日本消滅」では、出てこない思想・哲学である。
産業革命で勃興しながらも、脱工業化社会で落ち込んでいたヨーロッパの都市の再生は「文化」であった。
日本という国は、先進ヨーロッパの少し後を行くパターンである。
日本の各地で、明確な構想と強いリーダーシップの首長の下、文化創造都市・村が立ち上がってきている。
第 -
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先日、青柳 正規 氏 による「逸楽と飽食の古代ローマ―『トリマルキオの饗宴』を読む」を読み終えました。
案内によると、本書が扱っている「トリマルキオの饗宴」は、古代ローマ時代の風刺小説「サテュリコン」の最も有名な場面とのこと。主人公のトリマルキオは、成功して財を成した大富豪の解放奴隷です。
本書において、著者の青柳氏は、そのトリマルキオが催した饗宴の様子の描写を取り上げて、その背景や意味するところを克明に解説していきます。その内容は、饗宴に供された料理の細かな解説もあれば、トリマルキオの振る舞いから読み解くことのできる当時のローマの世情の説明もあり、とても興味深いものでした。 -
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[ 内容 ]
「ローマは一日にして成らず」―史上もっとも繁栄した大国・古代ローマ帝国は、どのようにしてでき、滅んだのか。
その広大な領域支配を可能にしたシステムとは?
トロイア戦争に始まる建国神話、勇将ハンニバルとの戦い、カエサルのルビコン渡河、暴君ネロの常軌を逸した振舞いなど、エピソード豊富にその栄光の歴史を描きます。
[ 目次 ]
1 ローマ帝国ができるまで―建国物語と覇権確立までの道のり(平和の祭壇 トロイア戦争 ほか)
2 ローマ帝国の成立―アウグストゥスの時代(元首政時代 アウグストゥスの権力基盤 ほか)
3 帝国の発展と充実―皇帝たちの饗宴(皇帝崇拝と皇帝の神格化 後継者ティベリ -
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陣内秀信氏が「解説」において、本書の内容を簡にして要を得てまとめているので、その箇所を引用したい。
「主役は、都ローマをつくった権力者、特に皇帝達である。彼らにとって、自らの功績と栄光を視覚的に示し、また市民からの支持や共感を得るためにも、様々な建造物、施設を現実のものとする造営事業は極めて重要な意味をもった。…本書は、それぞれの皇帝がいかなる野心をもってローマを眺め、様々な建物、施設の造営事業にどう取り組み実現したのかを丁寧に説き起こす。こうした建設、造営事業の連鎖と集積によって、古代都市ローマが創り上げられたダイナミックな過程が解き明かされる。」(438ー439頁)
ポンペイウス -
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【文明史を学ぶということ】
P.15
historyの中のstory =経時的(ディアクロニカル)方法
⇔共時的(シンクロニカル)方法
専門知→統合的な機能不全
全体をみることと要素還元主義の弊害
文化だけでなく文明の多様性
P.23 文化と文明の定義とその差異
【ヒトから人類へ】
r戦略者 K戦略者
アシュール文化
P.84 ヴィーナス像の造形法
洞窟壁画 なぜ動物は描かれ、植物は描かれない?
【農耕というイノベーション】
P.110 消極的移住
人口増加→農耕でなく農耕→人口増加
イェリコとナハル・オレン
チャタル・ヒュスク
「ノアの洪水」
P.150 世界的に東アジアの土器製 -
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●構成
はじめに:なぜいま“ローマ帝国”なのか
Ⅰ ローマ帝国ができるまで:建国物語と覇権確立までの道のり
Ⅱ ローマ帝国の成立:アウグストゥスの時代
Ⅲ 帝国の発展と充実:皇帝たちの饗宴
Ⅳ 人類史上もっとも平和な時代:五賢帝の統治
Ⅴ 帝国の混迷と解体:なぜローマ帝国は滅びたのか
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誰でも一度は「ローマ帝国」という言葉くらいは聴いたことがあるのではないだろうか。古代にヨーロッパにあった国、という知識しかない、という方も少なくないであろう。
本書は、ローマ帝国の前史から書き起こし、初代皇帝アウグストゥスによるローマ帝国の基盤づくりを詳述し、その後に代々の皇帝の事跡を概括しながらローマ