あらすじ
帝国の首都として繁栄を極めたローマ。世界に類を見ない壮麗な都市と建造物は皇帝たちの熾烈な権力闘争の場であり、その政治的意図を示す舞台でもあった。本書ではカエサル登場以前の紀元前2世紀から、コンスタンティノープル遷都にいたる330年まで約500年のローマの都市計画と建造物を一望し、そこに刻まれた各皇帝の政策や思想、歴史を読み解く。凱旋門、神殿、コロッセウム、浴場、広場や水路などを備えた都市はやがて変革期を迎え、皮肉にも都市に蓄積された歴史の重みによって終止符を打たれることになる。帝国の興亡を浮かび上がらせるスリリングなローマ都市史。
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Posted by ブクログ
ローマという都市を歴代の皇帝たちがどのように整備し、どんな建物を立てていったのかという観点から見ていくローマ史。凱旋門や神殿など記念的建物から、水道の整備、大火からの復興など、一つ一つの計画にどんな意図があったかを歴史とからめて探っていくような本になっている。カエサルからコンスタンティヌスまで扱っていてコンパクトにまとまっており、今まで読んだローマ史関係の本と違って内政が中心の記述で知らないこともたくさんあって勉強になった。
皇帝たちが建築によって自らの栄光を刻み込んでいったローマだが、コンスタンティヌスの頃には所狭しと並んだ古い記念建築物をかかえこんで発展の余地のない老朽化した都市になってしまう。そしてコンスタンティノープルが登場し、世界に比類なき、世界の中心たる都市だったローマは帝国内の一都市に成り下がっていく…というのは読んでいて歴史のロマンと無常を感じた。各皇帝が手掛けた建築・都市整備のやり方も状況と性格によって全然違うのも面白かった。
Posted by ブクログ
陣内秀信氏が「解説」において、本書の内容を簡にして要を得てまとめているので、その箇所を引用したい。
「主役は、都ローマをつくった権力者、特に皇帝達である。彼らにとって、自らの功績と栄光を視覚的に示し、また市民からの支持や共感を得るためにも、様々な建造物、施設を現実のものとする造営事業は極めて重要な意味をもった。…本書は、それぞれの皇帝がいかなる野心をもってローマを眺め、様々な建物、施設の造営事業にどう取り組み実現したのかを丁寧に説き起こす。こうした建設、造営事業の連鎖と集積によって、古代都市ローマが創り上げられたダイナミックな過程が解き明かされる。」(438ー439頁)
ポンペイウス、カエサルから始まり、アウグストゥス以下の歴史上有名な皇帝たちが計画、建設していった神殿、劇場、コロッセウム(円形闘技場)、パンテオン、凱旋門、浴場、水道施設 etc.
これらの一部が部分的とは言え、遺跡として現在でも見ることができるとは素晴らしいこと。ローマに行くのはちょっと難しそうなので、本書を参考にしながらグーグルアースを見て楽しみたい。