遠山明子のレビュー一覧
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ホフマンが同じドイツロマン派のコンテッサ、フケーを誘い、「子どものメルヘン」として創作した短篇を作家ごとに二編ずつ収録したアンソロジー。子どもの頃クリスマスに、人形劇版をテレビで見て以来大好きな「クルミ割り人形」。去年はそのシーズンに再読しようと思っていたところにこのアンソロジーに出会い、翻訳違いでまた新しいクルミ割りに出会えて嬉しかった。
もうひとつ収録された、ホフマン作「見知らぬ子」もああ、ホフマンの世界だと感じられるクラシカルさと、少し怖くてドキドキしながらも先が気になるミステリーめいた展開の面白さがあり、大好きなお話がまたひとつ増えた。面白いポイントのひとつは長い章タイトル。
<子どもたちが森で出会った子どもについてブラーケル夫妻が言ったことと、その後その子に何が起きたか>長い。クマのプーさん以来に長い!目次に細かな章タイトルが掲載されていないので良かったけれど、章タイトルが目次にあったとしたらなかなかのネタバレを読んでしまうところもなんだか鷹揚な気もして嫌いじゃないというか、無邪気な呑気さに好ましさすら感じてしまう。でもクマのプーさんのネタバレ章タイトルはもっとくっきりとしたネタバレで爽快さすらあるので、気になる方は是非。
話は戻って「見知らぬ子」。ある兄妹と見知らぬ子が仲良くなった後に訪れる、命すら危険と思われるピンチを迎える場面で見知らぬ子は、「かわいそうな子どもたち__もうここには来られない。さようなら!どうか元気でいてね!」と去って行ってしまう。ええ!メロスでもウダウダ葛藤しながらがんばったのに諦めが早すぎるよ!がんばれよ!と心の声が木霊する中、結びの章で「ああ、そんなに嘆かないで、大事な友だち!いっしょに楽しく遊んだことを忘れたとでも思うの?もう気にかけてないとでも?」としれっと兄妹に呼びかける見知らぬ子。もうこちらは棒読みで台詞を読んでしまいましたよと思い乍ら、童話に突っ込みは無粋。(さんざん言った?)
でも安心してください、このあと1ページというところで幸せの超展開が待っています。そう、童話ですもの、幸せに暮らしました。ドントハレ!いや、お気に入りのお話です、本当に。突っ込みどころ満載なのも含めてお薦めです。伝わらないですか?…笑。
気を取り直して、大好きな「ウンディーネ」の作者フケーの「覗き箱」。もう最高!「ハーメルンの笛吹き」を上手く取り入れた作品で、「笛」に変わって物語へと誘導していくのは、アリストテレスが原理を考察していたとされる、小さな穴などを通して外部の光を取り込み、暗い壁などに反転した映像を映す「覗き箱(カメラ・オブスクラ)」。そしてその箱を操るのは、赤い靴のおじさん。赤い靴のおじさんと坊やの会話は「狼と七匹の子山羊」を彷彿させ、読み手を警戒させながらぐいぐいと物語に惹き込んでいく、流石のフケー。
ああもっとフケーの物語が読みたい!再読から初読まで、童話から感じる原点の面白さが詰まったアンソロジー、おすすめです!本当に。 -
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私の中の『ハイジ』のイメージは長いブランコ、ヨーロヨーロヨーロレイヒ♪というアニメ主題歌、家庭教師のト○イくらいしかなくて、よく考えたら全然知らないな、ということで本書を手にとってみました。
読書中常に眼前に拡がっていたのはアルムの山の素晴らしい景色。スイスには行った事なんて無いですが、日に照り映える山々、美しく輝く草花や雪原、周りを歩き回るかわいい山羊の群れ。とにもかくにも風景描写が素晴らしくて素晴らしくて、読み終えてからアルムの景色を画像検索してみたらイメージ通り、いや、ひょっとしたら本書で描かれる風景の方が勝っているかもしれない、それくらいに素敵な描写が沢山なので心身が洗われるような読書体験でした。デトックス読書。
一方で、ハイジがフランクフルトの〈ゼーゼマン〉邸に逗留しているタームではアルムの自然を見ること・感じることが叶わないハイジの辛さが痛いほどに伝わってきて、まさかゼーゼマンがこんなにも重要な役割を果たすなんて微塵も思っていなかった私は彼に最大限の賛辞を送りたいと思います。ブラボー!(ちなみにですが、読む前までクララの父親がゼーゼマンという事すら知りませんでした…)
同じく、そのきっかけを作ってくれたハイジの父代わりにして後に友人となるお医者さん〈クラッセン先生〉も間違いなくMVPでしょう。ハイジとの語らいのシーンは間違いなく名場面。「山はいいもんだな。体も魂も癒されて、また元気に生きていこうという気持ちになれる」(p416)は本作を貫徹する象徴的な台詞。
また、意外だったのは山羊番〈ペーター〉の描写。気のいい純朴な少年でハイジの相棒というイメージだったが、作中では家が貧しく偏狭で思慮が浅い、排他的な気質の癖がある人物として描かれている。これが物語に深さを与えており、彼の改心と成長というのも見所のひとつだと思う。キリスト教的な救済の意味合いもあるのだろう。
祈り、救われる。
都合よく王子様が現れたりする類の物語ではない、敬虔さと清廉さを備えた紛れもない名作ではないかと思いました。
1刷
2024.10.11 -
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サンジョルディの日に向けて、中学生の娘に贈る本を探していてたどり着いた。
タイムトラベルを題材としたファンタジーだが、恋愛小説としての要素の方も強いかも。ロンドンが舞台だがドイツの作品で、本国ではミリオンセラーだそうだ。
登場人物も多く、タイムトラベルにまつわる設定が複雑なので、何度か読み返すこともあったものの、基本的には女子高生らしい軽快な一人称の文章に乗ってテンポよくストーリーが進んでいくので、どんどん読み進めてしまった。
脳内で映像化されるような描写も多く、普段本を読まない子でも、いつのまにか世界に入リこめてしまうのではないだろうか(実際に映画化もされているようなので、いずれ観てみたい)。
なお、本書は3作(3作目は上下巻)あるシリーズの1作目だが、すべて読まなければ物語は完結しない。 -
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ネタバレ【アニメにはない宗教的なメッセージ】
多くの方に親しまれているアニメ版のハイジは素晴らしい作品です。しかしながら、原作から削られてしまった部分にも、素晴らしい要素が盛り込まれています。それが宗教的な教えの部分です。
原作では、アニメ版以上にクララのおばあさんが重要な役割を果たしています。アルムへ帰りたいハイジに対し、クララのおばあさんが「神さまに何もかもお話しすること」を教えます。
それ以後、神さまに家へ帰れるようにお祈りするハイジですが、祈りはかなわず、お祈りすることをやめてしまいます。そんなハイジに、おばあさんは再び語りかけます。
神さまは、わたしたちが願ったことでも、ためにならないことであれば叶えてくださらない。どんなときでも祈り続ければ、やがてわたしたちにとって一番良いようにしてくださる。
このおばあさんのメッセージを受けたハイジは、再び祈るようになります。そして、ハイジの思想に大きな影響を与えることになります。
後にクララがアルプスを訪れ、歩けるようになった際、自分が長い間アルプスへ帰れなかったからこそ、クララがアルプスを訪れ、歩けるようになったことのだと考えます。つまり、ハイジの「家へ帰りたい」という願いを神さまがすぐに叶えてくださらなかったからこそ、一番良いようになったと悟ったのです。
ハイジやクララだけでなく、ペーターや、おじいさん、お医者さんたちもこの思想によって救われていきます。
この削られてしまった部分こそ、原作の最大のメッセージのように思います。 -
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ネタバレ時間旅行者の系譜第三作・下巻
最後の最後まで読んで、ええーっ、と声を出してしまった。あの人がグウェンドリンの弟なの? それってあり? ……ありなんでしょうね。ただ、ある人物を救えたのなら、おじいちゃんも救えるのでは……? と思ってしまったけど、それを言ったらキリがないよね。なにより、おじいちゃんがそれを望まないか。
ということで、久々にハマった海外ファンタジーでした。作者のケルスティン・ギアさんが素晴らしいのはもちろんだけど、遠山明子さんの訳もまた素晴らしく良かった! 遠山さんの訳なら次の『夢の書』三部作も読んでみたいなあ。絶対面白そう。 -
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過去の未解決事件の中でも18世紀フランスで起きたジェヴォーダンの獣事件は好きなモチーフだ。狼のような未知の獣に100人以上の女、子供が惨殺された。この事件に博物学者の卵トマが挑む、スロヴェニアが生んだ歴史ミステリ&ロマンスの傑作。犯人は本当に狼か未知の生物か、それとも狼男なのか。トマはジェヴォーダンの領主の城で獣に襲われたが生き延びた貴族の娘イザベルに出会う。立場が違うからこそ焦れったいまでに静かに燃え上がる2人のロマンスは鉄板。犯人(獣)の正体も恋の行方もどうなるのか、ページをめくる手が止まらない。どんな結末を用意してるのかと思ったら裏の裏をかく予想外の結末。読後も興奮して眠れず今朝は内臓が気持ち悪い(≧∀≦)
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終わってしまった~
物語はここまでだけどワールドは続いていく感じが大好きです♪♪
わりとさらっともろもろの設定を回収して、でも人間関係とかはちょっと放ってある感じが若干物足りないけどそれはそれでありかなと。その辺りがワールド感を出しているのでしょうか。
でも、おいらちゃんにはでっかくなって暴れてほしかったなー☆
このシリーズでいいな!と思ったのはレスリーの扱い。不思議な能力を持つタイムトラベラーがヒロイン&ヒーローなんだけど、知恵袋は別の子がちゃんと担ってて、きちんと生きてて恋までしているのが、やっぱりいい!脇が生き生きしてるのは重要なことだなぁと、改めて。 -
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18世紀末ヨーロッパのロマン主義運動の中でも中心となったドイツロマン派。ホフマンをはじめとする怪奇幻想小説は好物なので読んでみた。
9つの短編が収録されているが、やはりホフマンの「砂男」が傑出している。それ以外で面白かったもののひとつはルートヴィヒ・ティーク「金髪のエックベルト」。エックベルトと妻との幸福な生活が、友人に話してしまった秘密をきっかけに、不安が生まれ恐怖に変わり、幸福が崩れていく。恐るべき真実が明らかになる。お伽話のような体で気が狂わんばかりの戦慄のラスト。いや、ラストで彼は実際に発狂する。
もうひとつ挙げるならフケー「絞首台の小男」。絞首台の小男とは絞首台の下に生えるマンドレイクの一種で所持する者に富をもたらすといわれるものだそうだ。ベネツィアを舞台に瓶に封印された不気味なものを売り買いするドイツの若者の物語。話が進むにつれて彼は取り憑かれたかのような恐怖に支配される。
どの作品も正気か妄想か狂気かという感覚が心地よい。 -
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ホフマンが友人のコンテッサとフケーを誘い、クリスマスに合わせて出版した二巻の物語集をまとめて文庫化した本。クリスマスに合わせて出版されたといっても、クリスマスが題材になっている物語はホフマンの「クルミ割り人形とネズミの王さま」(pp85-206)だけであり、私がこの文庫本を読んだ時期がたまたまクリスマスシーズンだったからなのか、ホフマンがすごいのか、サンリオが一九七九年に人形劇映画にしたものを観ていて馴染みがあったからなのかわからないけれど、やっぱり一番「クルミ割り人形とネズミの王さま」がすごい。残りの五篇は騎士道物語(あるいはその影響を受けているメルヘン)であり、出版当時でも、時代とずれていたんではなかろうか。